第12話 『取り憑かれたヒーロー』

霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?




著者:ピラフドリア




第12話

『取り憑かれたヒーロー』






「うおおおおおおおおお!!」




 私はパイプ椅子に座り、コントロールをテーブルに置くと、両手でボタンを連打する。




「甘いですね。その程度の攻撃、こうやれば楽勝ですよ」




 ソファーに寝っ転がったリエが、ボタンを一つ押すと、画面の中で白髪の少女が赤い閃光を放ち、私の操作していた赤い髪の青年のキャラを倒した。




「また負けたーーー!!!!」




 私はテーブルに突っ伏す。そんな私にリエは自慢げな表情で、




「これで24勝7敗ですね」




「あなたゲーム初心者でしょ!! なんでそんなに強いのよ!!」




 私はソファーに寝っ転がるリエに向かって、文句を言う。

 リエは寝返りをすると、私の方に身体を向けた。




「というか、レイさんが弱すぎるんですよ」




「私が弱い……!?」




「そうですよ。いつもワンパターン。同じ技ばっかりじゃないですか。使うキャラも固定ですし」




「好きなキャラ使ってるだけよ! 良いじゃない!」




「その好きなキャラ達が、上級者向けなんですよ。必殺技を全然使いこなせてないじゃないですか!!」




 私達がテレビの前でそんな会話をしていると、玄関の扉が開かれて誰かが入ってきた。




「おはよーございまーす!! 朝練してきましたよー!!」




 部活を終えた楓ちゃんがやってきた。




「楓さん、おはようございます!」




「リエちゃん、おはよー!」




 楓ちゃんとリエは手を上げて挨拶をしあう。楓ちゃんがやってきたタイミングでゲームが開始されて、コントローラーから手を離したリエを倒すには、今がチャンスだと、私はボタンを押しまくる。




 しかし、挨拶を終えたリエは素早くコントローラーを握り直すと、私の操るゲームのキャラを瞬殺した。




「なんでまた負けるのよ!! 油断してたじゃない!!」




「油断してましたけど、レイさんの攻撃全て当たってないんですよ。手前で攻撃してただけじゃないですか」




「まだよ、まだ終わってない!! 今度こそ油断させて勝ってやるんだから!!」




「正々堂々と戦う気はもうないんですか!?」




 私達がゲームを始める中、楓ちゃんはキッチンマットの上で寝っ転がっている黒猫を発見した。

 楓ちゃんは黒猫に近づくと、黒猫の頭を撫で始める。




「師匠はゲームやらないんですか?」




「俺がやるゲームは、猫の関係するゲームだけだ。あーいうゲームはやらん…………というか、ミーちゃんを撫でてる時に俺を呼び出すな」




「良いじゃないですか〜、師匠〜。師匠も撫でられましょうよ〜」




「ちょ、どこ触ってるんだ。くすぐったい……!!」




 楓ちゃんがタカヒロさんと戯れていると、玄関の方から声がしてインターホンが鳴らされた。




「すみません、依頼をしたいのですが、今やってますか?」




 男性の声が事務所に響く。




「依頼人来たみたいだけど、私今手が離せないの、楓ちゃん行って」




 リエと対戦中の私は楓ちゃんに頼む。しかし、楓ちゃんが返答する前に、リエが私に伝える。




「大丈夫です。すぐ倒すのでレイさんが行きます」




「何言ってるのよ、この状態で負けるわけ…………負けた」




 リエに負けた私はコントローラーをテーブルに置き、玄関へと向かった。




「はーい、大丈夫ですよ。今開けますね」




 私がそう言って玄関の扉を開けると、そこには赤いヒーローマスクに赤い全身タイツの男がいた。




 男は扉が開かれると、決めポーズを取る。




「初めまして、ゴーゴー戦隊のレッドです」




「……ヒーローぉぉおおおぉぉぉお!?」









 レッドを事務所に向かい入れて、パイプ椅子に座らせる。私はレッドの向かい側にゲームをしていた時に移動させていた椅子を持ってきて座った。




「えっと、ヒーローなんですよね」




 私は目の前にいるヒーローに尋ねる。ヒーローはマスクを脱ぐこともなく、そのままのヒーロースーツの状態で頷いた。




「いかにも私はヒーローだ。世界の平和を守るため、日々悪と戦っている!!」




 その悪がなんなのか気になるが、それより先に本題に入ろう。




「その、ヒーローさんがなぜ、ここに?」




「ああ、それが困ったことになってな」




 ヒーローはそう言うと、一枚の写真を取り出した。そこに写っているのは、サソリのような見た目をした人間なのか、人外なのかよく分からない生物だ。




「先日、このスコーピオンという怪人と戦ったのだが、この怪人を地獄に落としてから肩が重くて困っているのだ。仲間には顔色も悪いと言われる。しかし、身体は健康なのだ。そこで霊感のある知り合いに見てもらったところ、取り憑かれていると言われたのだ」




「怪人を倒したらその怪人に取り憑かれたと……」




「そういうことだ。頼む、どうにかしてくれ! このままでは安心して悪を倒せない!!」




 ヒーローとか、怪人とか、初めて聞いた。が、困っているようだ。




 レッドから話を聞いていると、お盆にオレンジジュースを乗せた楓ちゃんがやってきた。




 楓ちゃんは私達の真ん中にあるテーブルの上にジュースを置いた。




「どうぞ」




「どうも」




 レッドはマスクを取らずに、マスクの上からストローに口を突っ込むと、オレンジジュースを吸い始めた。




 ジュースを飲み終えたレッドの口元はベトベトである。しかし、レッドは話を続けた。




「どうだろうか、本当に私は取り憑かれてるんだろうか?」




 質問をしてくるレッド。私は私の後ろで私のオレンジジュースをこっそりと飲んでいるリエに小声で聞く。




「どうなの、リエ……このヒーローは?」




「そうですね〜。確かに霊力を感じるので取り憑かれてますね」




「リエ、あなたが説得してどうにかすることはできないの?」




 私の問いにリエは首を振った。




「無理ですね。このヒーローさんに取り憑いてる幽霊、私より遥かに力が強いです。話し合う気がある相手ならまだしも、引き摺り出すことができなければ、話し合いもできません」




「そっか……」




 私とリエが話している姿を見て、レッドは不思議に思ったのか、




「どうした、さっきから独り言を喋って」




「いえ、考え事をしてまして……。しかし、私が見たところ、あなたに取り憑いている幽霊はかなりの力を持っているようです」




 私がそうレッドに伝えると、レッドは腕を組んで答える。




「それはそうだろう。スコーピオンはエジプト支部からやって来た、呪術を得意とする怪人だ。スコーピオンと戦っていた時、奴はこう言っていた」




 すると、レッドはどこから取り出したのか、ノートを取り出すと、その1ページ目をめくった。




「スコーピオンは駅前のジオンショッピングセンターに現れた」




 ノートには迫力のある絵でデパートが描かれていた。




「なんか始まったんですけど」




「面白そうだから、聞いててみましょ」




 ポカーンとした顔のリエを隣に、レッドの紙芝居を鑑賞する。




「休日ということもありレジの列にイラついている中、俺の並んだ列の先にスコーピオンがいた」




 レッドがページを捲ると、そこにはレジ打ちをする怪人の姿が描かれていた。




「怪人がバイトしてるーーー!?」




「レジ打ちしてる怪人の背景が燃えてるんですけど、なんで強敵登場みたいになってるんですか…………」




 無駄に迫力のある絵に違和感を覚えながらも、レッドの解説は続く。




「隣の列は俺の並ぶ列の三倍のスピードで進んでいく。しかし、手がハサミのスコーピオンはなかなか商品を掴むことができず、会計が進まずにいた!!!!」




 ページが捲られると、そこには商品を真っ二つに切断している怪人の姿があった。




「レジのバイト向いてない!!」




「そこで俺の登場だ」




「ついに戦うんですか!?」




「いや違う。俺が手伝ってやった!!」




「そっち!?」




 レッドのノートにはレジ打ちを二人で連携して、高速で会計を終わらせるヒーローと怪人の夢のタッグが書かれていた。




「戦わないの!? ヒーローと怪人でしょ!!」




「バイト中に倒したら、バイト先に迷惑だろ。俺も昔はあそこで働いてたし、先輩風吹かせられるし」




「怪人に先輩風吹かせるヒーローってなに!?」




 レッドはページを捲る。そこには




「バイトを終えた俺達は、岩場で戦う……」




 向かい合う怪人とヒーローが




「そんな想像をしながら飲み屋で呑んでいた」




 戦う姿を想像して酔い潰れる絵があった。




「仲良くなってるーーー!!!!」




「それがスコーピオンとの出会いだった。そして、それから俺達は仕事終わりに集まる飲み仲間になり…………」




「待て待て待ってーー!!」




 ノートをめくろうとするレッドを私は止める。




「これいつまで続くんですか!?」




 私が聞くとレッドは顎に手を当てて少し考えた後、




「第九幕まで続くな……」




「いや、長い長い長ーい!! もう出会いとか馴れ合いとか良いので、戦いのところまで飛ばしてください、そこで呪いについて喋ったんですよね」




「えーー、ここからが面白いのに……」




 レッドは渋々ページを進める。そしてそこには公園で向かい合うレッドとスコーピオンの姿が描かれていた。




「見つけたぞ、スコーピオン!! と俺は言う。ふふふ、よくぞ、拡張機で蝉の鳴き声を大きくして住民を困らせていた俺に気づいたな、とスコーピオンが返す」




「どんな悪事!?」




「俺も夜勤明けなんだ!! そんなことをして許されると思うなよ!! と俺はスコーピオンに言って戦闘が始まる」




 レッドはページを捲る。すると、




「超合体をしたスコーピオンに俺がゴールデンダンダンダダンビームを放ち、スコーピオンを倒した」




「瞬殺したーー!!!! なんで、戦闘シーンが一番大事じゃないの?」




「本当にこんな感じだったんだ。スコーピオンが公園のセミと合体して、それを俺が倒したんだ」




「セミと合体だったの!?」




 と、ここまで話を聞いていたが、重要なことがまだだ。




「それで呪いがどうとかはどうなったんですか? 戦闘終わっちゃいましたよ」




「あ、それはこの後だな」




 レッドはページを捲った。そしてそこには握手をするレッドとスコーピオンの姿が描かれている。




「闘いの終わった俺たちには友情が芽生えていた」




「仲直りしたーー!!!!」




「終戦後、スコーピオンはあることを教えてくれた。それはスコーピオンやその眷属を殺すと呪われてしまうこと、俺の放った技はスコーピオンもその眷属も殺すことはなかったため、呪われることはなかったと。そんな話を聞きながら俺達は飲み屋へと向かう」




 レッドは最後のページに進めた。




「その途中、俺とスコーピオンは眷属のセミを踏みつけて殺してしまっていた」




「ここまで面倒なことして、セミ踏んづけただけーー!?」




「だが、しっかりと呪われた。スコーピオンは生み出した本人だから無事だったらしいが」




 なんでスコーピオンからセミの眷属が出てくるのか。結局今までの茶番はなんだったのか、疑問しかないが……。





「リエ、こういうことらしいけど、どうにかできない?」




 私はリエに耳打ちする。リエは困った顔で




「こういうことらしいって……。そう言われても困るんですけど…………。まぁでも、方法はありますよ」




 そして視線をテレビの方へと向けた。




「あれを使うんです」









 私はレッドに立ち上がってもらい、テレビの前へと来てもらう。




「これから除霊を始めるのでこちらへ」




 レッドはテレビの前に立ち、何も映っていない真っ暗な画面に反射で薄らとその姿が映し出される。




 私はソファーの上に立ってテレビを見つめているリエにひっそりと聞く。




「ここで良いのよね」




「はい。そこから大丈夫です」




 リエに教えてもらった除霊方法の一つ。リエの力でテレビに霊力を纏わせる。それで無理矢理、レッドに取り憑いている幽霊の姿を視認できるようにするというもの。




 存在を確認できてない状態では、何も対処することもできない存在だが、存在を確認すれば、画面越しであってもその存在を世界に固定することができる。




 それでもその幽霊に触ることができるのは、霊力の強い人物か、または関連性のある存在に分かれるが、ここには楓ちゃんがいるから問題ないだろう。




「じゃあ、行きますよ」




「ええ、やりなさい!!」




 リエはゲームのコントローラーを握り、そのコードからテレビに霊力を伝える。リエから流れ出る半透明なオーラがテレビにたどり着くと、テレビの電源がついた。




「うわ、ついた!?」




 テレビが突然ついたことにレッドが驚く。私も声を上げそうになったが、依頼人の前で情けない姿を見せないようにするため、どうにか声を抑えた。




 テレビの電源はついたが、番組が何度も切り替わり、その切り替わるスピードが上がっていき、やがて砂嵐になる。




 スーッと画面が暗くなり、薄らと画面の中にさっき反射した時よりもはっきりと私達の姿が映った。




「どうなってるんだ……」




「見えた……」




 そしてその画面の中に現実では見えていない人物が写っていた。レッドの背後にのしかかるようになっているセミの怪人の姿だ。




「これが俺に取り憑いてる幽霊か……」




 レッドは画面を見て取り憑いている本人の姿を確認した後、私の方を向く。




「お、お願いだ。どうにかしてくれ!!」




「お任せください!! しかし、今回は私ではなく、私の後輩に仕事を任せます」




 私はそう言って台所の方を向くと、




「楓ちゃーーんッ」




 楓ちゃんを呼んだ。しかし、さっきまでいたはずの楓ちゃんの姿が見えない。しかも、楓ちゃんだけではなく、黒猫の姿も見当たらない。




「楓ちゃんとタカヒロさんはどこに行ったの?」




 私はテレビに霊力を送り続けるリエに質問する。リエは首を横に振って答える。




「そういえば、さっきから見てませんね。どこに行った…………ちょちょちょ、レイさんヤバいです!!」




 リエは焦った様子でテレビ画面を見る。私がテレビ画面を見ると、そこではセミの怪人が背中から刀を取り出した。




 そしてセミの怪人が喋ると、テレビのスピーカーからその声が漏れてきた。




「このニンニンゼミ様を発見するとは、お主なかなかやるな。レッドとスコーピオン様を呪い殺すまで、俺は除霊されるわけにはいかんのだ。邪魔をするなら、我が忍法で始末してやる」




 画面の中では、ニンニンゼミがジリジリと私達の方へと近づいてきている。




「り、リエ!! どうにかできないの!?」




「無理です。私は幽霊を画面に映すので精一杯です。レイさんがどうにかしてくださいよ!!」




「無理よ!! 画面越しの幽霊なんてどうやったら除霊できるのよ!!」




 私とリエが言い合いをする中も、ニンニンゼミは近づいてくる。




 エジプト怪人の眷属がなぜ、蝉の忍者なのか。なんでヒーローが蝉の幽霊に取り憑かれているのか。さっきヒーローがやっていた紙芝居はなんだったのか。いろいろ気になることはある。

 だが、もうどうでもいい、そんなことはどうでもいいから助けてーー!!




「そこまでだ。ニンニンゼミよ!!」




 私とニンニンゼミの間に赤いヒーロースーツの男が割って入る。




「レッド……。ふ、貴様とスコーピオン様を倒すのが我が目的。まずは貴様から倒してやるわ!!」




 ニンニンゼミは刀を振り上げて、レッドに襲いかかる。レッドは現実には見えていないが、テレビには映っているニンニンゼミの姿を頼りに、刀を躱した。





「避けたか。だが、これでどうだ!!」




 ニンニンゼミは刀を何度も振ってレッドを攻撃する。しかし、レッドは画面に映る怪人を完璧に躱している。




「す、凄い!!」




「流石ヒーローですね!!」




 私とリエはそんなレッドの姿に見惚れる。




 幽霊に取り憑かれるようなヒーローのため、期待感はなかったが、レッドの動きに逆にその期待を裏切られた感覚だ。




 本物のヒーローのように俊敏に動くレッド。しかし、レッドに攻撃が当たらないと分かったニンニンゼミはターゲットを変えてきた。




「クソ、ならば、そこの女から地獄に落としてやるわー!!」




「私ーー!?」




 ニンニンゼミは私に刀を下ろす。




「危ない!!」




 向かってくる刀。その刀をレッドが素手で受け止めた。




「ヒーローさん……」




 刀を鷲掴みにしたレッドだが、完全に止められたわけではなく。刃がレッドの手のひらに触れて血が流れる。




「ヒーローと怪人の対決に、一般人を巻き込むとは、貴様それでも怪人か!!」




 ニンニンゼミは刀に力を入れて押し込んでいく。




「それでこそ怪人だろぉー!! ニンニンニンニン!!」




 ふざけた笑い方をするニンニンゼミ。




 ジリジリと追い詰められるレッド。刀を抑えるので精一杯で反撃をすることができない。

 このままではやられてしまう。




「そこまでだーー!!」




 ニンニンゼミに飛び蹴りをして、そこに現れる一匹と一人。




「楓ちゃんとタカヒロさん!?」




「君達は……」




 楓ちゃんは隣の部屋のカーテンを被り、黒猫は黒いゴミ袋に穴を開けて頭につけていた。




「僕はヒーローホワイト!!」




「俺はヒーローブラック!!」




 楓ちゃんと黒猫はポーズを決める。




「二人ともどこにいるのかと思ったら、それを作ってたのかー!!」




 ヒーローの姿を見て、自分達もヒーローにみたいになりたかったのだろう。それで隣の部屋にいたのか。




 楓ちゃんに蹴り飛ばされたニンニンゼミは立ち上がり、刀を拾う。




「よくも蹴り飛ばしてくれたな。初めて見るヒーローだが、ここでやっつけてやる」




 ニンニンゼミは刀を持って楓ちゃんに向かっていく。

 それを見たレッドは




「本物のヒーローの力を……」




 二人の間に入って戦う体制を取ろうとする。しかし、




「やれ、楓」




「はい、師匠……あ、違う。ブラック」




 黒猫に指示を受けた楓ちゃんはレッドを華麗に避けると、レッドが拳を握るよりも早く。

 ニンニンゼミを瞬殺した。




「……つ、強い……」




 楓ちゃんにボコボコにされたニンニンゼミの身体は薄くなって消滅していく。




「はい、これで除霊完了……あ、悪を倒しましたね!」




 ニンニンゼミを除霊した楓ちゃんは私達の方に笑顔で振り向く。




 楓ちゃんの笑顔を見ながらレッドはポカンと口を開けていた。









「これで除霊は終わりましたけど、どうですか?」




 レッドに椅子に座ってもらい、私は向かいの席に座る。




「なんだか楽になった気がします。これでスコーピオンとまた飲みに行けます!」




「そ、そうですね」




 その怪人の眷属が原因だったはずだが……。





 除霊が終わり、レッドが帰宅した後私達に平和な時間が訪れる。




「レイさん、僕もゲームやりたいです!」




 私とリエがソファーで寝っ転がる中、元気な楓ちゃんが話しかけてくる。




「いいよ、そこにあるから勝手にやって」




「やらないんですか?」




「疲れたから無理……」




 ヒーローがやってきたと思ったら、ヒーローに取り憑いていた幽霊は怪人。今日は驚いてばかりな日だった。




 リエも疲れているようで、私の上で寝ている。




「二人ともだらしないですねー」




「あなたたちが来るのが遅いから、余計疲れたのよ……」




「しっかりヒーローって本当にいたんですね。しかも幽霊に取り憑かれてるなんて」




 ゲーム機の電源を入れて、楓ちゃんはコントローラーを持ちながら話を続ける。




「もしかしたら今度は取り憑かれた怪人が来たりして」




 楓ちゃんが笑顔でそんなことを言った時。インターホンが鳴らされた。




「あれ、また依頼ですかね」




 楓ちゃんがそう言ってコントローラーを置いて玄関に行こうとする。しかし、嫌な予感がした私は腹の上で寝ているリエを優しく退かして、楓ちゃんと共に玄関に向かった。




 そして扉を開けると、そこには、




「あの〜、すみません。ゴーゴーレンジャーのブルーを地獄に落としたら取り憑かれたみたいで……除霊できますか?」




 髭面の変な仮面をつけた男と、鳥の怪人がいた。







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