第14話 話を聞くおじさん。
「まず、貴方が経験したout of Battle ARENAは単なるゲームの世界ではありません。もちろん、貴方がよくスマートフォンで遊んでくれているゲーム版のout of Battle ARENAもちゃんと存在しています。そして貴方が経験したout of BattleARENAもスマートフォンで遊んでいたout of BattleARENAも私が開発したものです。」
カテジナは少し誇らしげに胸を反らしながら語る。
「貴方から見ると、私は異世界人ということになります。」
変な事を言い出したカテジナの顔を失礼な事だとは思いながら徳島はじっと見つめる。
おじさんの徳島には、若い女性の容姿の事は良くわからないが、目の前の女性は綺麗や可愛らしいとは思うが、純日本人顔で異世界や宇宙人というような顔というわけではない。
「思っていることは大体想像つきます。私の見た目は純日本人的であり、貴方が任務で出港中のときに部下や後輩から聞かされていたゲームや小説の話から想像した登場人物達とは大きくかけ離れていることは認めます。言葉足らずで申し訳ありません。正確に言えば、私は異世界から日本人として転生してきた者ということになります。」
カテジナは落ち着いた様子で言葉をつなげる。
「いきなりで申し訳ありませんが私の身の上話をしたいと思います。でも、話ばかりではつまらないのでこれをどうぞ。」
カテジナが笑いながら手を横に振ると二人の間にあるテーブルの上には、徳島が一度だけ飲んだことのある少しお高いウイスキーが現れた。
「貴方が落ち着けるようにお酒を用意しました。どうぞ飲んて下さい。」
どうやら徳島が、内心焦っていることは読まれているようだ。
彼は普段からあまり感情を表に出さないが、いざ事が起こると表面上は冷静だが、内心では慌てて考えを巡らせるタイプだ。
大体の人間がいきなり殺し合いのゲームをしてようやく逃げ切れたかと思えば、怖い存在の上司の部屋にいて、目の前にいる若い女性から自分は異世界人だと告白されたら焦ると思うが。
「安心して下さい。今いるこの戦闘艦の指揮官の部屋も目の前にあるウイスキーも現実にある物ではありません。」
徳島はそう言われて周囲を見回したり、目の前のウイスキーを眺めて見るがどう見ても本物としか思えない。
目の前でキョロキョロする徳島を微笑ましそうに見ながら、カテジナはさらに言葉をつなげる。
「貴方の記憶にある指揮官の部屋を素材に欠損した所や足りない所は私の知識や感覚で補ったので良く見たら本物の部屋とは違うかもしれません。もちろん、ウイスキーの味も貴方の記憶から引き出したものなので、実際のウイスキーとは違いがあるかもしれません。でもコーヒーなら私も大好きで何回も飲んだ事があるので美味しい物が出せますよ。」
そう言って、カテジナが再度、手を振ると目の前からウイスキーは消えてカップに入ったコーヒーが2つ現れた。
「私も貴方と同じでブラックが好きなので砂糖とミルクは無しです。」
そう言ってカテジナはコーヒーを一口飲み、ため息をつく。
「心配をかけている本人が言うのも何ですが、大丈夫ですよ。私は貴方の記憶を覗き見ていますが、プライバシーに該当する所は極力見ていませんし、貴方を害する気もないので、他人に吹聴する気もありません。」
そう言ってカテジナは微笑む。
「だって私は貴方が気になってしょうがないんですもの。」
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