シャーベット探偵

忽那 和音

資産・三十億円令嬢殺人事件

 ビルが立ち並ぶ街。そんな街中にある古びた三階建ての建物がある。三階建てのビルの二階にシャーロット事務所という探偵事務所が入っていた。

「ねぇ。ワトミクちゃん」ソファに座りながら少女に見える女性が言った。

 彼女はこの事務所の所長。シャーロット・小林である。

 ちなみにワトミクちゃんというのは、シャーロット事務所の副所長(仮)カッコカリのワトミクちゃんだ。

 ワトミクちゃんという名前と聞いて、どこかで聞いたことあるような……。ということもあると思うが、今はおいておこう。

 あくまで、副所長である。

 たとえ、(仮)がついていたとしても……。


 そして、現在。ソファに座り、シャーベットを食べているシャーロットの膝の上にワトミクちゃんが新聞を呼んでいるような画だ。

 新聞を捲るのはシャーロットの仕事だ。

 同じことをもう一度言うが、ワトミクちゃんはあくまで、副所長(仮)は、副所長(仮)だ。

 決して、ぬいぐるみなんかではない。

「トントントン!!」

 事務所の出入り口の方からドアをノックする音がした。

「はーい!」

 ノックの音に対して、シャーロットが返事をした。

 彼女はワトミクちゃんを抱きかかえ、事務所のドアの方へ向かった。

 そして、ドアノブが手に届く距離まで近づき、ドアノブを捻ってドアを開けた。

「こんにちは。シャーロットさん」

「おー!少年君。こんにちは~」

 シャーロットは笑みを浮かべた。

 彼は、四代続く、この地域では有名なシャーベット屋の後継ぎの子だ。

 シャーロットはいつも、彼の事を「少年君」と呼んでいる。

「今日もシャーベットを届けてくれてありがとー♪」

「いえいえ。こちらこそ、いつもお買い上げ、ありがとうございます」

 シャーロットは彼の可愛さに・・・。いや、これはもう、尊いというべき笑みに萌え♡と彼女の心身の疲れ。そして、彼女の黒い心を浄化させていくものであった。

「あ。あと、これがポストに入っていましたよ」

 少年はシャーロット事務所のポストの中に入っていたという封筒をシャーロットに渡した。

 その封筒は封を開けていなくても、ただの内容ではなさそうなものだということが解るような漆黒ものであった。

「ほー、そうか……。ありがとう。少年君」

 封筒を渡してくれたシャーベット屋さんの少年に対して、にっこりと感謝を言った。

 そして、少年は帰って行った。


 シャーロットは少年から渡された真っ黒の封筒の封を開けた。

「こっ……、これは……。ワトミクちゃん、現場に行こう!」

 シャーロットとワトミクちゃんは身支度を整え、事務所を後にした。

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