第104話 草村さんの計画は完璧なのだ

「じゃ、桃子さん。行ってきまーす!」

「(๑•̀ㅂ•́)و✧おお!旅の安全を祈願しておりまする。行ってらっしゃいませ、お嬢様!」


 真央と晴の痴話喧嘩が解決して数日後、二人は高校を卒業する前に青春思い出旅行に出かけることにした。


「ねぇ、晴。私たち、こうやって新しい世界を一緒に見て回る必要があったのかもね。」

「うん。いつも同じ生活だから喧嘩になっちゃうのかもね。」


 しっかりと手を繋いで旅立っていく二人。桃子は真央のメイド長として、我が子を見守るような微笑みで見送った。

(永遠の推し、真央たん。幸せでいてほしいであります。)


「あら、あの二人もう出かけたんだ?」

「あ、夕たん。うん、車を出してあげようとしたんだけど、青春旅行だからって、二人だけで行ったよ。こうやって精神的にも大人になっていくのを見ると、嬉しいような寂しいようなって感じだよね!」

「そっか。ところで、、桃子はバイクに乗れるんだよね?私は知らなかったけど。それで、真央ちゃんは後ろに乗せて海に行ったんだよね?私は乗ったことないけど。」

「(๑•̀ㅂ•́)و✧うん!広い世界、たくさんの人との交流、、口で言うより体感してほしかったんだ!新世界を目指して欲しくってね!!」


 この・・・・鈍ちんがっ!!!!!少し離れた物陰で、家政婦の草村さんはしかめっ面をして会話を聞いていた。


「全く。鈍すぎるのです、桃子様は。この流れ、、私もバイクに乗せてどこかに連れて行って!という夕様の察してほしい合図でしかないでしょうが。。いっそのこと、夕様はうちの姪と付き合った方が良いのでは・・・。」


 そうなのだ。桃子は恋愛に関しては鈍ちんだ。知能は高いが純粋すぎるが故に、察してかまっての空気が読めない。ほらみろ。夕がすんっとした顔をしている。こういう時は、草村さんがサポートしてあげなければならない。ボーナス確定の草村さんは躊躇いなく自分のハーレーのアクセルをガムテープで固定して、躊躇いなく桃子達に向けて暴走させた。ヴォンヴォンヴォン〜!!


「ん、え?・・・わぁぁぁぁぁ!!!Σ( ºωº )」

「え、なに?って、えっ!!!???きゃーっ!!Σ( ºωº )」


 ぶつかりそうになった桃子がかろうじてハーレーを受け止めてブレーキをかけると、今度は空からヘルメットが二つ飛んできた。ヒューーーーン!!


「ギャァぁぁ!!Σ( ºωº )」

「あっぶなっ!!Σ( ºωº )」


 桃子と夕がヘルメットを受け止めると、桃子のヘルメットには海辺のロメェンティーックなホテルの宿泊券が。


「ん、、?これは、、草の者が経営しているホテルの、、2人分チケット、、。」


 桃子はやっと察した。そして、あたりを見渡すと、木陰に隠れた草の者が、見つけられるだけでも7、8人。一斉に桃子に向けてカンペが向けられていた。


『さぁ、夕。今すぐ出かけよう。二人きりで。』


 カンペをただ読み上げた桃子。


「桃子っ!うん!行くっ♡」


 やっと思いが通じて、嬉しそうに目を輝かせた夕は、身支度をしなければと部屋に戻ろうと考えたが、いつの間にか足元には旅行カバンが準備されていた。草の者がいればどんな問題も解決してしまう。


(えっと、マチルダに言ってないし、締め切り近いけど、、草村さんが行けと言ってるなら、まぁいいか。)*ポジティブ桃子。


「じゃあ、後ろに乗って。しっかりと私の腰に手を回していてね?」

「うん!一生離れないわ♡」


 こうして、二人は急遽、旅行に出かけたのだった。草村さんは二人を見送ると、どうせならマチルダとロクサーヌも休ませてあげようと考えた。さすが隠密。わずかな不満の種も先回りして排除する労働組合のマザー、草村さん。


「メジェド様、どこにいらっしゃいますか?メジェド様〜?」


 草村さんが庭や屋敷の中を探し回ると、最終的になんとなく開けてみた冷凍庫にメジェ君はいた。


「・・・ここでなにをしてらっしゃるのですか、メジェド様、、」

「エ?アイス食ベナガラ寝テタ。」

「それ、アイスじゃありませんよ。冷凍ブロッコリーでございますが。それよりちょいと、マチルドとロクサーヌをフランスに飛ばして下さいまし。休暇です。」

「俺モ行ッテイイ?」

「あの子達が良いって言ったらついていっても良いですよ。」

「ワカッタ!フランス美女ト豪遊シテクル!!軍資金チョーダイ!」

*お小遣いを無心する神。


 というわけで、マチルド、ロクサーヌ、そしてメジェ君はフランスへと旅だった。それならそれで、草村さんは久しぶりに、草の者を集めて集会をしようと企んだ。草の者の集会が開かれたあとは、日本の経済が大きく流れを変えるという。。その集会のリーダ、草村さん。なぜ家政婦をしているのだろう。


 こうして、珍しく梅沢屋敷はもぬけの殻になったのだった。

 そして場所は変わり、地下室では、、


「ふっふーん。ついにできたぞ!ブラウン監修コンビニ限定の食べれば食べるほどフェロモンがでる緑茶が!!さっそく桃子にでも飲ませてみよう!」


 1週間、徹夜で研究をしていたブラウンさん。やっと完成した魔法のお茶を試したくてウキウキしていた。そしてヨロヨロもしていた。


「うう、、寝ていないからフラフラする。。か、階段が、辛い。。や、やっぱりちょっと寝てからにしようかな、、ぜぇぜぇ。。」


 足がおぼつかないブラウンさん。またしても、恋の神様がいたずらをするんだ。


「だ、ダメだ。。そういえば何も食べてなかった。。くっ、仕方ない、ちょっとだけこのお茶を飲んでしまおう、、。あ、グルグルする。。だれか、、誰か、、ベッドまで連れてって、、」


 階段でめまいがしたブラウンさん。ついに膝が崩れ、バランスを失った。やばい、、落ちるっ!なんでこういう時に限ってスフィンクスが現れないんだ!!と覚悟を決めたときだ。


「危ないっ!」


 そう叫んで、ブラウンを片手をがしっと掴むと、ブラウンの華奢な身体を引き寄せて抱き留めたのは、、友美だった。


「ちょっと、大丈夫ですか??」

「え、、あ、友美。。ごめん、ムリ。。」がくっ。。

「え、ブラウンさん??って、もしかして寝てる??」


 さぁ、ついにこの2人の進展がっ!!!


 続く。


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