第98話 使者
102
軍に調理兵はつきものだ。
軍を存続させるためには戦争中であれ訓練中であれ百人の軍ならば百人に、千人の軍なら千人に、一万人の軍なら一万人に毎日の食事を食べさせる必要がある。満足な食事の有無は兵士たちの士気に関わる。満足な食事が提供されなくなった戦は負け戦だ。
アルティア神聖国の国都を囲んでいる一万人を超える『
次の日の朝、王国に向かう斥候が乗るために預けていた馬の内一頭を引き取りに、ぼくと二人の斥候が西門前の馬房に着くとヘルダが既に待っていた。馬房を待ち合わせ場所としていたためだ。
ヘルダと一緒に斥候と王国に行くという三人の使者もいる。
二人は知らない顔だけれども一人は、ぼくも見知った人だった。
あの
あわせてヘルダから調理兵の再編を終えたという報告がある。
『
現状はアルティア神聖国軍との戦闘が行われる可能性が少なくなっているため正規の調理兵に加えて各部隊から抽出する形で臨時の調理兵を増員したらしい。
単純な皮剥きであったり皿洗いなど料理の素人にもできる仕事は沢山ある。
あえて流民たちの見ている前で夜中も料理をしたり皿を洗ったりして、『
ヘルダと『
単純計算で炊き出し一日につき『
もちろん煮炊きのための燃料も必要だった。
斥候による王国説得の結果がどうなろうとも一日当たりそれだけの食材や燃料を王国への貸しとして『
王国の斥候としては王国に戻り次第、大至急、目先の食料と燃料を送らなければならなかった。『
斥候が顔を引き締めたのは、もし王国の説得ができず速やかに食材と燃料を『
もちろん、ぼくと一緒に『
収穫期までの炊き出し費用といった大問題はともかく、当面の炊き出し費用くらいであれば斥候に与えられた権限の範囲内であるから心配はないはずだ。
だとしても現実を前にして顔が引き締まってしまう斥候の気持ちはよくわかる。
「ご心配なく。もし王国からの食料が遅延して我々が窮する事態になりそうな時は食事を食べて少しは元気になった流民たちに一斉に王国に向かってもらうだけですから」
ヘルダはそう言って豪快に笑った。
王国の斥候は、ますます顔をひきつらせた。
「そうなる前にこの三人は姿を消しますが、それまではこき使ってやってください。ちなみにあたしの旦那です」
ヘルダは
隊長は、ぼくに少し照れたような顔を見せた。
今まで何も言わなかったじゃない。知らなかった。
ヘルダが、わざわざ自分の旦那だと使者の素性を口にしたのは、それだけ信頼できる重要な人材を使者として王国に送るのだという圧力だろう。ヘルダは『
とはいえ、ヘルダもジョシカも旦那さんが尻に敷かれている気がするのは何故だろう?
やっぱり総隊長のマリアが女だから『
それともどこの家もそんなもの?
ニャイもそうなるかな?
ぼくはニャイにばしりと背中を叩かれる自分を想像した。
その後、ぼくたちは炊き出しに対する今後の方針を少し打ち合わせた。
王国の斥候一人と三人の『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます