第92話 相談相手
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「『
「アルティア神聖国の内政に関与するつもりはない。この戦争で焼け出された人がいるならばともかく、私たちがここを囲む以前からの流民は与えられるのを待つのではなく自分で戦って勝ちとるべきだ。部隊にはアルティア国民との接触は最低限にするよう通達を出している」
マリアはストイックだ。でも、それだけじゃいけないと思う。戦いたくても戦えない人だって存在するだろう。
「知り合いになった流民の人から聞きました。アルティア神聖国内に食料がないのは『
「どうせデマだ。言いたい奴には言わせておけばいい」
「だとしても、真実を知らないまま冬を乗り切れずに死んでいく本人とその家族は『
天幕内が、しんと静まりかえった。
今まであった友好的な空気が霧散していた。
「
マリアは声を荒げたりはしなかったが言葉には怒気が籠っていた。
言い過ぎたかな?
ぼくは怒気の籠ったマリアの視線を受けとめて見つめ返した。
内心はドキドキだ。百年以上を生き延びた大傭兵を怒らせたら無事に済むとは思えない。
「馬鹿! おまえ謝れ」
慌てた様子で、ルンが割って入って来た。
ルンは立ち上がると、椅子に座るぼくの頭を手で上から押してマリアに対して頭を下げさせようとした。
ヘルダとジョシカは冷めたような目で、ぼくを見ていた。
ぼくは意地でも頭を下げずに、マリアの目を見続けた。
「与えられるまで生きて耐えるしか戦いの方法がない人だっているでしょう」
マリアが目を逸らした。
「もともとアルティアとは借地契約が更新されなかったら武力で切り取るという約束ができていたんだ」
マリアは、もごもごと呟いた。
「知らない人間からすると『
マリアは不貞腐れたような顔をして、ぷっくらと頬を膨らませ口を尖らせた。
百年以上を生き延びた大傭兵の威厳が台無しだ。
「どうしろっていうんだ?」
「『
「半年以上も何万人もの流民を食わせていく力は私たちにはないぞ」
「せっかく共闘の可能性を探りに王国が来ているんです。そこは王国に相談しましょう」
ぼくは、ぼくをアルティア神聖国へ送りだした王国の士官を思い出した。少しは苦労してもらわないと。
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