20話 修行5日目・夜 心の試練
「すみません、まさかこんなことになるなんて思わなくて……」
「いやいや大丈夫、ちゃんと直せるから」
クルスさん達の家の庭の木を倒してしまった私は、オパールさんに平謝り。
「でもこれ、メルっちょがやったんでしょ?なに、新技?」
「は、はい、自分で考えてみたんですけど、思ったより威力が出て……」
「うん、これならクルるんの試験も何とかなりそうだね!……なりそうかな?」
「ううん……どうなんでしょう……」
木を倒せるくらい威力があるならクルスさんにも通用する……いや、これ食らったらクルスさん死んじゃうんじゃ……いや、どうだろう……。
「ま、今日はこのくらいにしておかない?晩御飯にしようよ」
自主練に集中しているうちに、日は暮れかけていた。どうも私は時間を忘れる癖があるようだ。
木の件は後で直しておく、との事だったので、今日は切り上げて晩御飯という事になった。
「あ、そういえばゴメン、メルっちょのローブ、洗濯しちゃった。明日の朝まで我慢できる?」
「あ、大丈夫です。裸の姿も慣れちゃってるので。というか、むしろすみません……」
あの水鳥のローブは水をはじくので、普通の水洗いでは洗濯できない。洗浄魔法が必要だ。
自分では洗浄魔法は使えないので、普段は街の洗浄魔法屋さんに頼むことになる。
でもこの家なら、オパールさんが作った装置で綺麗に出来るので、ここにいる間は洗ってくれる、との事だった。私は今後もお願いすることにした。
今日の晩御飯はやっぱり2人。
魔物は午前中のうちに討伐に成功したと聞いた。なのに、クルスさんはまだ帰らない。
何かあったんじゃないかな、と思ってしまう。
「ま、事後処理と言っても、だいたい飲み会みたいなもんだしね。だから心配するようなことじゃないよ。きっと今頃楽しく飲んでるよ」
「そ、そうなんですね……」
本当にそうならいいんだけど……。
「ね、ね、それよりもメルっちょさ、ここに来た頃よりもだいぶ色々できるようになったね」
「え、そうですか……?」
「ほらだって、初日に来た時はさ、ステーキもナイフで切れなかったじゃん」
今日も初日と同じステーキだ。簡単に済ませちゃった、との事だが、簡単な料理でステーキが出てくるのは驚かされる。
「そういえば、確かに、そうでした。クルスさんに切ってもらってたっけ……」
「ゼリーの手でもちゃんと力を入れてナイフを使えるようになったんだね」
「そう、ですね……力が強くなったというより、この体での動かし方を理解してきた、っていう感じですが……」
「すごい進化だよ。最初は正直、スライム娘で冒険者をするなんてとても信じられなかったもの」
「ほんと、そうですよね。私もです。ここまで出来るようになるだなんて……」
【冒険者の修行】の戦闘訓練、だいぶ板についてきた気がする。
まだ自分でもレベル1相当には到達していないとは思うけど、それなりに上手く動けている。
【日常生活の修行】のほうも、まさかあんなに人間っぽくなれるとは思っていなかった。
これなら、冒険者としてやっていけるのかもしれない。そんな希望が出てきている。
でも……それも、試験に合格できたらの話で……。
「……メルっちょ、どした?」
「……え?」
「手が震えてる……」
「……本当だ……」
ナイフがお皿に当たって、かちゃかちゃ音を出している。フォークを持つ手もぷるぷる震えている。
スライムの体なのに、こういう所だけ人間の頃みたいな反応が出る。
「なにか、心配ごと?」
「……はい……そう、だと思います……」
理由を考えてみて、気が付いた。
結局私の一番の課題は、精神面の弱さ。それはまだ解決してはいない。
どうやら不意にその不安が蘇ってきてしまったらしい。
1度は覚悟を決め、それなりに前向きに頑張れる覚悟が出来ていたとは思っていた。
しかし、急に……本当に急に、その不安を思いだしてしまった。
「スライム娘になったばかりの頃は、本当に何もわからなくて、毎日精いっぱいで……。
でもだんだん、スライム娘としての戦い方に自信が付いてきて……
スライム娘で日常生活を送れる可能性が高くなってきて……だんだんこの先の生活に実感が出てきて……。
そしたら、私、本当に二人の試験をクリアできるのかなって……
クリアしたとしても、この体で、本当にやっていけるのかなって……
自信が出ると同時に、不安のほうも急に大きくなって……」
……これ以上は、言葉にできなかった。
「……そっか……」
うつむいていると、オパールさんが突然話題を変えた。
「そういえばメルっちょってさ、すごく頭いいよね」
「……へっ?」
突然褒められて、ぽかんとする。
「だってさ、僕の授業にしっかりついてきてたじゃん。
コロイドとかケイ素化合物とか、明らかに難しい用語を出してもちゃんとついてきてた。クルるんなんか全然だったのにさ。
今日の技だって、自分で考えて編み出したんでしょ?誰にでも出来る事じゃないよ」
「そ、そうでしょうか……」
「……ね、もしさ、もし冒険者になれなかったら……もっとちゃんと錬金術、習ってみない?」
「えっ……?」
錬金術?
「で、でも、私には錬金術師のジョブの資質は無かったんですが……」
「それはさ、冒険者のジョブとしての『錬金術師』の話でしょ?
僕の世界には関係ないよ。僕だってこっちの世界のジョブは何ひとつ鍛えてないけど、こうして超天才錬金技師を名乗ってるよ。
つまり僕が言ってるのはさ、僕の世界の錬金術の事だよ。
一緒に僕の世界に行って、僕の世界の錬金術の学校で勉強して錬金術師になる。僕だって全力で教えるよ。
ね、ね、どう?やってみない?」
「………………」
私は考え込んでしまう。
確かに、オパールさんの授業は面白かった。私の体の事の授業だった事を抜きにしても。
分からない部分もあったが、興味はある。
それに、ここまで私の事を買ってくれるオパールさんの言葉はとても嬉しい。
でも……。
「なんてね。まあメルっちょが冒険者になりたいって思う気持ちは分かってるから」
「……あ……」
言わずとも、オパールさんは分かってくれている。私の気持ちを。
「ま、悩んじゃうのはしょうがないよ。でもさ、ウジウジ考えるのは後にしようよ。
悩んでいる暇なんて無いよ。修行は後たったの2日で終わりだよ」
オパールさんの言葉はお説教のようだったが、とてもやさしい声だった。
「もうさ、余計なことは考えずに、試験に向けてがむしゃらに頑張るしか無いよ。やりたい事が出来るまであと1歩なんでしょ?」
そうだった。
私が諦めていた、なりたかった冒険者まで、本当にあと1歩のところまで来ているんだ。
「もし駄目でも再試験だって可能なんだし、冒険者が無理だと思っても別の生き方もある。
それもきっと楽しいよ。錬金術師の道を選ぶならいつでも歓迎する。
だからさ、とにかく、今は明後日の試験に向けて頑張ろう。
いろいろ悩むのはその後からでも遅くないよ。ね?」
「……はい」
まだ不安は尽きない。でも、おかげで手の震えは治まった。
私は確かに、冒険者にしがみ付き過ぎていたのかもしれない。
オパールさんは別の選択肢を示してくれた。私の望む未来とは違う道とはいえ、少し気が楽になった気がする。
「ま、修行はあと2日だけど、逆に言えばあと2日もあるんだ。
すぐに気持ちの整理は付けられないかもしれないけど、焦らずゆっくりがんばろ?」
「そう、ですね……オパールさん、ありがとうございます」
今は、目の前の課題に向けて頑張ろう。
「……ん。頑張ろうね、メルっちょ」
嬉しそうなちょっとだけ寂しそうな、オパールさんの笑顔だった。
ごはんの後は、お風呂の時間。
ビビアンさんが帰って温泉はもう使えないので、ユニットバスのほうに入る。一人で大きいお風呂は寂しそうだし。
私はお風呂のお湯をたっぷり飲んで、水分をたくさん補給した。
この入り方は間違っていると気が付いてはいるが、自主練のおかげでだいぶ水分が減ってしまったので、つい飲んでしまった。
入り方はともかく、お風呂は気持ちいい。
でも、いろんなことを考えちゃうな……。
お風呂の後は庭の散歩。
昨日とおとといは散歩しなかったけど、散歩中はいろいろ自分の事を考えられるので、ここにいる間は続けていこうと思って外に出た。
でも、今日ばかりは失敗だったかもしれない。余計な事も考えてしまうのだ。
試験に臨む覚悟は、オパールさんの言葉のおかげで出来てきたと思う。
でもまだ、不安に思う事がある。
このスライム娘という生き物を、皆に受け入れてもらえるかどうかだ。
人間に完璧に変装出来たとしても、中身はモンスターのスライムなのだ。
この姿の事を怖がる人はいるかもしれない。
ここにいる皆は怖がらずに受け入れてくれた。クルスさん、オパールさん、ビビアンさん、この家の住人じゃないけどマリナさんも。
一応本当は元人間だって事は知っている人ばかりだけど、それでも、スライム娘としてのありのままの自分を受け入れてもらえる人達だ。
でも、これから出会う人もそうだとは限らない。
この先、どんな出会いが待っているかは分からない。受け入れてくれるかもしれないし、受け入れてくれないかもしれない……。それが不安だ……。
がさっ。どすん。
物音がした。人の気配がする。
そうだ。物音で思い出した。
私の事を……スライム娘の事を知っている人間が、もう一人いた。
あの『野良猫』くんだ。
私を見て怖がっていた少年。きっとあの子だ。
どうしよう、また怖がられちゃう……。
……いや、駄目だ。それじゃきっと駄目だ。
受け入れてもらえるかどうか以前に、こんな弱気じゃだめだ。
私は元々引っ込み思案だったんだ。スライム娘になって、それが加速しちゃったらもっと駄目だ。
……話さないと、いけない気がする。
あの少年はもっと怖がっちゃうかもしれないけど、私はあの少年と話さなくちゃいけない気がする。
「……よし」
私はその物音のほうに向かっていった。
怖い。
前に進むスピードが出ない。
小さな人間の男の子がものすごく怖く感じる。
もし大声を出されて憲兵を呼ばれたらと、どうしても考えてしまう。
今日はクルスさんはいない。オパールさんの研究室は、ここからは音が聞こえないくらい離れている。
でも、話さなきゃ……今日はあの少年と、話さなきゃ……。じゃないと、私は変われない気がする……。
少年は、また木から落ちていた。
「イテテテテテ……」
そういえば、少年がこの間登っていた木は、さっき私が倒してしまった。ひょっとして、そのせいで落ちちゃったのかな。
「……こんばんは」
私は、勇気を出して声をかけた。
少年は私を見た。前と比べて、そこまで怖がってはいなかった。
私は少年に近づいた。少年は少しだけ後ずさりはしたものの、逃げようとはしなかった。
私も逃げちゃだめだと思って、ゆっくりと近づいた。
近づくと、少年の体あちこちに傷が出来ていた。多分落ちた時だ。木を倒した私の責任のような気がした。
私は少年の傷に手を当て、体内マジックパックから『薬草パウダー』の成分を自分の手に含ませた。
少年の傷は無事回復した。
「これで、もう、いたくないよ」
ゆっくり優しい声を意識して私は喋る。私の怖さを隠すように、相手を怖がらせないように。
「え……ありが、とう……」
少年は驚いていたが、お礼を言ってくれた。
「ね、座っていい?」
私は少年の隣に腰掛けることにした。まだ私の事が怖いはずなのに、少年は、静かに頷いてくれた。
「今日は、どうして来たの?今日はパンのお姉さんはいないよ」
前はパンをくすねにここへ忍び込み、クルスさんにパンを貰った少年。またそうなのかと思ったが……。
「いや……今日はパンを盗みに来たんじゃないんだ……あの時のお礼が言いたくて……」
そのためにまた忍び込んできたの?
「あのパンのおかげで、俺も妹も助かったんだ。
孤児院で貰える食べ物だけじゃ、全然足りないから……妹は誕生日だったのに、可愛そうだったから……
すっごく美味しいって、妹は喜んでた。そっか、あのお姉さん、いないのか……」
その話が本当かどうかは分からない。
でも、なんとなくだけど嘘はついていない気がする。
きっと本当はいい子なんだな、と思った。
「それにさ、それだけじゃなくて……その、お前が何なのか気になって……」
え、私の事?と思った。……いや、そうだよね。そりゃそうだ。
「なあ、お前……何なんだ?本当にスライムなのか……?」
「うん、私はスライム娘だよ」
「スライム……むすめ……なんで喋れるんだ?なんで人間みたいなんだ?」
「それは……」
矢継ぎ早に質問されて、答えに窮する。
ジョブでスライム娘になった、という事を、そのまま伝えていいものなのか。
そもそも子供って冒険者のジョブ制度の事をどこまで理解しているのか。
「……えっとね、私は、ホントは人間なんだよ」
あれこれ言っても難しいだろう。なので簡単に、真実をそのまま伝えた。
分かってもらえるかどうかは分からないけど……。
「……にんげん……スライムが……人間に……そっか……」
ちゃんと理解してもらえたかどうかは分からない。ただ、少年は何か納得できるものがあったようだ。
会話が途切れたので、今度は私が話しかける。
もしまた会うことがあったら言っておかなきゃと思っていたことだ。
「……パンのお姉さんには、君がお礼言ってたって伝えておくよ。
だから、君はもう、ここに来ちゃだめだよ?」
「え、なんで……?」
少年が驚いたようにこっちを見る。
「パンのお姉さんも、もう一人のおねえ……さんも、もうすぐ別のところに行くの。
私ももうすぐ1週間になるから、いなくなるんだ。
だから、ここは誰もいなくなっちゃうんだよ」
クルスさんもオパールさんも、私の修行が終わったらここを発つ、という予定だった。
私ももちろんここを出て、元の安宿暮らしに戻る。そうするとここは無人になる。
「誰もいないお家に忍び込むと、憲兵さんに逮捕されちゃうんだよ。
パンのお姉さんは見逃してくれたけど、憲兵さんは許してくれないよ。
だから、もう来ちゃダメ。ね?」
少年は、そんな……と言いたそうだったが、顔を膝にうずめ、
「分かった……もう来ない……」
と言った。
そのまましばらくうずくまっていたが、顔を上げ、私に話しかけてくれた。
「傷、治してくれてありがとう。
俺、お前の事、忘れない。だからお前も……元気……で……」
「……うん……君も元気でね……」
少年は別の木から塀に登り、外に出ていった。
まるで今生の別れのようだったな……と思った。
だがよく考えるとそうなのだろう。
ここじゃない場所で出会う私は、おそらく人間の姿に変装しているときの私だ。気が付いてくれないだろう。
少年はもう来ないと約束してくれた。だから『スライム娘』と会うのは、これが最後になるんだ。
そう思うと、なんだかちょっと寂しいな……。
でもあの少年、よくぞまたここに来てくれたな、と思う。すごい勇気だ。
あの子は私が元人間の女性だとは知らなかっただろう。
本当に得体の知れない生き物でしかなかったはずだ。
なのにこうしてまた来るなんて、相当に勇気がいる事のはず。
あの子は、パンのお礼にここへ来たと言っていた。でもそれならお昼でも良かったはずだ。
だからあの子、本当は私に会いに来たんじゃないか……そんな気さえする。
だから、話が出来て本当に嬉しかった。
あの子を見て思った。
あの子は勇気のある子だ。分からないものを分からないままではなく、知ろうとする勇気。
受け入れようと頑張る勇気。それを持った子だ。
だから、多分……私も見習わなくちゃいけないと思う。大事なのは頑張る勇気。スライム娘だと受け入れてもらえるよう努力する勇気。きっとそうなんだ。
まあ、私が勝手にあの子の事をそう思っているだけかもしれないけどね。
それでも、こうやって話せてよかったな、と思った……。
結局その日はなかなか寝付けなかった。
視覚も聴覚もオフにしても、思考まではオフにはできない。
最後にもうひとつ、今日私がずっと気になっていた事があった。無事だったそうだが、それでも気になってしまうことが……。
しばらくすると、玄関のほうに気配を感じた。
聴覚をオンにしてみる。どうやらクルスさんが帰ってきたらしい。
「クルスさん、お帰りなさい」
私はリビングに行き、帰ってきたクルスさんに声をかける。
「あ、メルティ、ただいま。まだ起きてたの……」
ソファーに座るクルスさんはひどく酔っぱらっていた。
オパールさんはああ言ってたけど、なんというか……楽しい飲み会だった、と言う雰囲気ではない。
ここ数日を見る限り、クルスさんは楽しそうにお酒を飲む人だ。だから、こんな悲壮感があるクルスさんは初めてだった。
「あの、何かあったんですか……?」
「……うん、何でもないよ……」
一度はそう言ったクルスさんだったが、溜まっていたものがあったようで、ぽつりぽつりと語り始めてくれた。
「知ってると思うけど、緊急指名討伐が来たんだ。
『蒼の巨人』っていう魔物が出てね…………犠牲者が、出たんだ……」
「…………」
犠牲者……。私は何も言えず、クルスさんの言葉の続きを待つ。
「街道の商人を護衛してた冒険者達がピンチらしいから、救援に来てほしいっていう依頼だったんだけどさ……
俺が行った時にはもう、冒険者はみんな、もう……」
「…………」
「その冒険者達って、俺が隣の街にいるとき、よく一緒に飲んでた連中でさ……
アイツら、その商人を護るために、殿を引き受けて命がけで商人を逃がしたらしくてさ……
おかげで、商人は、全員じゃないけど、全滅はしなかったんだ……。
アイツら、Bクラスの割には弱っちいのに……
巨人になんて絶対勝てるわけないって自分でも分かってるはずなのに、それでも……アイツら……アイツらってきたら……」
クルスさんは、必死に上を向きながら言葉に出していたが、その先はもう、言えなかった。
私は、何も言えなった。クルスさんの悲しむ姿に。冒険者達の勇敢な最後に。
私は多分、クルスさんの出す試験の意味を、ちゃんと分かっていなかった。
意地悪や軽いノリで決めた試験では無いという事は分かっていた。
でも、何のためにこういう試験を考えたのか、本当の意味でまだきちんと理解してはいなかった。
私は今日1日、クルスさんがいないとどういう気持ちになるのか、とても理解した。
危険な依頼に出た冒険者を待つ事がどういう事なのか、身をもって思い知らされた。
そして、その心配が現実のものとなった時、残された人がどういう気持ちになるのか、それを今ここで目の当たりにしている。
そうか、そうなんだ、こういう事なんだ、と……。
……でも、だんだん、こみ上げてくるものがあった。
こういう思いがこみ上げてきたことに、どこか驚いている自分がいる。
「クルスさん……私、実は、迷ってたんです。
本当に強くなれるのかって……皆はスライム娘なんて受け入れてくれるのかなって……。
悩んでいるうちに、自信が無くなってきちゃって……
クルスさんがいなくて、心配で……心配させるという事がどういうことなのか分かって……
こんな思いをするくらいなら、こんな思いをさせるくらいなら、
冒険者なんか、スライム娘なんか辞めちゃったほうがいいのかなって……
でも……
でも……だから……」
私は、こみ上げてくる思いを思い切って、クルスさんにぶつけた。
「私、頑張ります……ぜったい冒険者になります!」
突然の大きな声と宣言に、クルスさんは目を丸くしてこちらを見ている。
それでも私は、こみ上げてきた思いを言い続けた。
「私、強くなります!
強くなって、生き抜いて、クルスさんをぜったい悲しませない、そんな強い冒険者になります!
もう、迷いません!
私、スライム娘になります!
とっても強いスライム娘になります!
絶対生き抜くスライム娘になります!
だから、クルスさん……あと2日、よろしくお願いします!!」
驚いていたクルスさんは、私の宣言の後笑顔を作って、
「分かった……じゃあ俺も、全力でやるよ。卒業試験も手加減はしない。
だから、頑張ってね、メルティ」
そう答えた。
「はい!」
私はそれに、力強く返事をした。
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