転生なんてしたくなかった。
餅尻
プロローグ 〜生前〜
都内某所 7月29日気温31度
『いやーまさか!?あの曲回収出来るとは思わ無かったわ〜今日死んでも悔いないわ〜』
そんな軽口を言いつつ、ライブの感想を語る
1人の男がいた。
彼の名前は
32歳会社員、趣味はアニメ鑑賞とゲーム、
好きなアニメのライブイベントへ行った帰り道のようだ。
そんな彼らの目の前を、ふらついた足取りで歩く1人の女性がいた。
女性は、赤信号にも関わらず、そのまま突っ切ろうとしていたのだ。
『危ないっ!!』
幾ら願望者だろうと、自分の目の前で逝かれるのは、受けいれることが出来なかったのだろう、彼は咄嗟に助けに入ってしまったのだ。
案の定、其処へトラックが進行していた、もう駄目だ、と目をギュッと引き締め覚悟したのだが、彼らを襲った衝撃は、力士に張り手される程の威力ですんだ。
運転手が怪我の有無を確認しに、すぐに降りて来て、声をかけられた。
そこでようやく我にかえった洋平。
『助かったぁ』
安堵の声が漏れる洋平だったが、彼にとって、この事故は不幸の序章に過ぎなかったのだ。
帰宅後、洋平はベットの上で、先程起きた事故を思い出していた。目を閉じれば今でも心臓の鼓動が耳に響いてくるような気がする。
先程まで目の前にあった、死の魔力に魅入られてしまったのだろう。
喉の渇きに気付くことが出来ない程に、人の死因は、交通事故だけではないというのに。
都内某所 7月30日気温32度
洋平が、めを覚ますことは無かった。
都内某所 8月4日気温28度
異臭騒動が起きた。
近所の人間によって発見された遺体は、連日続く猛暑によって、酷く傷んでおり、原型を留めることが出来ずドロドロに溶けてしまっていた。まるで、スライムのように。そんな悲惨な最期を迎えた洋平だったが、人生に後悔はしていなかったのだ。
例えば、神さまが現れて、悲惨な最期だったから転生してあげると言われても、NOとはっきり言えてしまうくらいに、人生に満足していたのだ。好きなものと出会い、それを語り合える同志がいて、理解のある親が居てくれた。大金持ちや、超絶イケメンでは、無かったし、会社は辛かったけど、充実した幸せな人生だったと、胸を張っていえるから。
もし、本当に神様がいるなら、それはきっと、どこまでもひとに関心なんてないやつだろう。
『ねぇ、神様、俺は…』
『転生なんてしたくなかった。』
洋平のめがさめていく。
転生なんてしたくなかった。 餅尻 @motijiri
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