京都あやかし花嫁語り
菰野るり
プロローグ
出逢い
その年は春の訪れが早く、まだ4月にならないのに祇園甲部歌舞練場の庭では遅咲きの
幽玄の滝を通り抜け、茶室も書院もすり抜ける。枝垂れ桜に導かれるように進んでいく。
小高い丘の先。不思議な高さに菊の紋が入っている扉が見える。塔子は誰にも見つからない場所で泣くために来たのに、もう涙は出そうになかった。
「珍しいね、迷子かな」
ふわりと
今までみたどんな男の人とも違う。長い髪は白銀色で、陽の光に煌めいている。
手を伸ばせば触れる距離に来た時、長いまつ毛の奥の瞳はギラリと光り、塔子は
一瞬が永遠に感じた。
「大丈夫?顔色が悪いよ」
白い肌がほんのり色付いただけの薄桃色の唇の端をあげると綺麗に並んだ白い歯の間から、生々しくも赤い舌をのぞかせる。
チラつく口腔内の鮮やかな赤に目を奪われた。生きてると感じた。それがなければ、幽霊だと言われてもきっと信じただろう。生き物にしては美しすぎる。きっと人間じゃない。
それが塔子と
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