第11.01話・Halloween Clush!!
「エクストラステージが残っている。それは、私を倒すことだ!」
そう言って、物部天獄は自前で作ったのかは分からないが、なぜかあった玉座から立ち上がり、両手を広げてみせた。
その隙を見逃すものはいなかった。全員、前々から準備していたかのように、一斉に攻撃を開始した。
「妬ましいわ―――!『
「エクストラステージなんて、ただのステージの延長線上に過ぎないの。『
「あああ!麗しき私の初めての大技の披露!瞬き禁止、見逃し厳禁だ!とくと見よ!『
「くらいなさい!『
「ねんねんころり。おころりよ―――『
「燃え上がれ、私の怒りよ!大地を揺らし、雷鳴を轟かせよ!『
「―――喰らい尽くせ、情のまにまに。無すらも喰らえ。冠する大罪の名のもとに!『
順に解説しよう。最初の技はこころの技で、その技が冠する神の名前―――ヘラが意味する通り、時空をも切り裂く神に等しき力を方向のみを制限して、あとの威力やスピードなどは制御しない、嫉妬の感情のなすままに暴れる人の意志を加えられた災害。
次は千明の技。第五代ローマ皇帝―――通称『暴君』・ネロの名を冠したあらゆる人間の思考回路を破壊し、欲のままに行動するようになる精神汚染。
その次は有可の技。傲慢な性格が仇となり、中世ヨーロッパに革命を起こされ地位が底に落ちた貴族を模した即座に発動する運命改変能力。
その次の次は白香の技。あらゆる性魔術を伝授された魔術結社の創設者カール・ケルナーの名を冠した強制発情。たまたま重なった『
その次の次の次は智香の技。実にシンプルな技で、強制的に昏睡状態に陥らせ、そのまま永遠の眠りにつく。
その次の次の次の次は姫様の技。辺り一帯―――と言ってもこの施設内―――に超圧縮した雨雲を発生させ、雷を落とし、地球のマントルから溶岩を引っ張り出して擬似的な噴火を起こす能力。単純な攻撃力だけならば、この中の誰よりも強い。
最後は私の技。今まで食べたものの中の数パーセントを『
そんな恐らく軍隊の絨毯攻撃にも引けを取らない程の威力を持った現象に当てられると、ひとたまりもないだろうと思っていた。そう。この感想から何が起こったか察しが付くと思う。
「そう!この痛み!この感触!私が求めているのはこれだ……だが、まだ足りぬ!」
まさかの無傷である。しかも、この人、どこからか新しい武器を出している。
「何だあの武器!?」
「これか?これは、私の“想像力”の権能の一部―――
そう言うと、物部天獄は刀を分離させ始めた。
「フハハハハ!これこそが私―――いや、私
刀が二つに分離した。そればかりか、物部天獄の体にさえ変化が生じてきた。それは……
「よう、兄者。久々だな」
「おう、弟よ。無事に再会できて私は嬉しいぞ!」
「うっぜぇなぁ……用もなく呼び出したわけじゃねえだろうな」
首からもう一つの首が出て、腕が二本肩甲骨辺りから生えてきた。そして、刀が従来の刃の位置の刀と従来の刃の位置とは逆の刀―――いわゆる逆刃刀というもので、この前プロデューサーに連れて行かれた事務所の倉庫の中にあった“表裏剣”
「どうだ、すごいだろう。これが私達の本来の姿だ!さぁ、行くぞ弟よ!」
「了解。兄者」
その次の瞬間、物部天獄―――というのも怪しいため、彼らと呼ぶことにする―――が消えた。いや、違う。彼らは人間離れした肉体構造を駆使してスポーツカーと同等かそれ以上のスピードを出して私達の背後に回っただけだ。
そうして、全員が地に伏したとき、足が動かなくなってきているのがわかった。これは……
「毒?」
「正解だ。この剣の逆刃の方は、古代中国の呪術『蠱毒』で使用された虫たちの毒の中に数十年間浸けておいたものだ。故に、この剣にはじっくりと毒を回す呪いが組み込まれている」
最後の方は、もう聞き取れなかった。耳鳴りがして、吐き気もする。そうして、もう意識が失いかけたとき、最後に見た光景は……
「……『
そう言って有可が最後に“想像力”を発動し、彼らに不幸の連続を与えた瞬間だった。
―――「「ぐふっ!ぐあぁ!グォっ!ぎやあ!」」
彼らは、上から、左右から、前方から、後方から、はたまた下から―――この世のものとは思えない苦痛を受けた。しかし……
「そうそうそう!これだ!これで私は、次の次元へ登ることができる!」
歓喜していた。そう。彼らの“想像力”はあらゆる苦痛を耐えてこそ次の〈フェーズ〉に昇華できるのだ。そして、彼らの今至っている〈フェーズ〉は
「「これで私達が長年望んでいた夢が、今、〈ファイナルフェーズ〉の力をもって完成される!心象風景『厄災の
そう。〈ファイナルフェーズ〉の一歩手前、〈フェーズ3〉であった。彼らの“想像力”は、この世のあらゆる苦痛を体験し、理解することで進化する―――苦行を重ねなければならないものだった。この〈フェーズ3〉に達したのも、自らの身を使い、人間版「蠱毒」を行った結果である。
そして、今、恐らくこの世の中で上位に来る大きな苦痛を味わい〈ファイナルフェーズ〉へと到達したのだ。
「今こそ!私達の望みを叶えることができる!―――日本滅ブベシ」
彼らの心象風景は瞬く間に日本全土を覆い尽くし、彼らが立っている場所を中心として、二つに分割された。そして、それぞれ違う厄災が降りかかる。片方の面は「太古の昔、大和の地にて大いなる力を振るった退魔の鬼神」としての性質―――人々の闘争心を異常なほど駆り立て、内部崩壊を引き起こす能力を、もう片方は「カルト教団の非人道的儀式で誕生した日本を滅ぼすための大いなる呪い」としての性質―――あらゆる病やそれを運ぶ毒虫たちが地面一帯を覆っている空間を作り出す能力を。
彼らの心象風景の性質はとても強い。だが、しかし、それでも慢心はできないのだと、心象風景を顕界させたその数十秒後に思い知ることになる。
そして、運命の数十秒経過。そこにコツンコツンという足音を鳴らしてきたのは―――
「うわっ、これは酷い有様だ……全部君がやったのかい?だとしたらマズいねぇ。うちの新しいエースグループになるはずだったのに……どう責任を取ってくれるのか―――なッ!」
時空が歪む。それは、大きな引き付ける力―――重力の影響だった。それと同時にプロデューサー―――久猗の炎をまとった拳が彼らにめり込んだ。
「グホォッ!クッ、小娘、何者だ!」
「私?私はな、この子達の全監督責任者―――いわゆるプロデューサーというものだ。今回の件、私が迂闊にゴーサインを出してしまった事が原因で発生してしまった。ならば、私がけりを付けるというのは当然だろう?」
いまいち会話が噛み合っていないが、そんなのは気にできない。気にする暇もないのだ。彼らには。なぜならば、彼らは自分たちが焦がれていた力が、あっさりと破られたことに生存、戦闘に必要なリソース以外全てのリソースが行き、思考している最中だったからだ。
「何故だ!何故私達の心象風景が発動していない!何故貴様には効いていない!?」
「あぁ……これは、私の“想像力”の影響だ」
そう言って、彼女は語りだした。
「私の“想像力”『
頭上を指差し、人差し指で押すような動作をする。そして、話を続ける。
「そうして条件を達成すると、そのとき私を中心として半径八百メートル以内の範囲が私の心象風景となる。
そして、今も顕界できるんだよ!心象風景―――『
「馬鹿な!そんなことができるわけがない!そんなまやかしの心象風景に、私の心象風景が負けるものか!」
「それが勝ててしまうのだよ。私の“想像力”の効果は、何よりも優先されるのだよ。そして―――」
もうさっさと終わらせよう。死ね。
そう言って、彼女は彼らの首を焼き切った。
―――このような事件から数週間が経った。私達は、意識を失ったのを最後にその事件について見ていない。そして、プロデューサーの活躍は、プロデューサー自身から聞いたものだ。なので、本当かどうかはわからない。しかし、私達が知っていることは―――それはあのハロウィンは
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