第21話
カレーは辛口。トッピング用の素揚げのピーマン、ナス、かぼちゃは
唐揚げは昨日から鶏肉を生姜、にんにく、塩コショウ、醤油、余ってるジャムに漬けておいて味付けしておいた。衣は小麦粉と片栗粉を混ぜる。
油の中でジュワジュワと泡を出しながら、香ばしい匂いと共に揚がっていく。二度揚げも忘れない。
「大丈夫かな……ちょっと味見してみよう」
私はちゃんと出来ているか心配で、1つつまんで、口に入れる。サクッとした衣にジュワッとしみだす肉汁。プリッとした身が美味しい。
普段、一人分の食事は作ることがめんどくさくて、簡単に済ませてたので、いつになく、真剣に料理をしてしまった。
そしてカレーなら失敗ないだろうと思ったんだけど、やっぱり緊張してしまった。両親に作った時は、そんなに緊張しなかったのに……。
玄関のチャイムが鳴った。私はハイ!と言って、時間通りの来客を出迎えた。
「お招きありがとう……なんで
「うるせーな。いいだろ」
扉を開けると、栗栖さんと栗栖先輩、そしてムーちゃんがいた。
「ちょうどカレー、食べたかった」
「環は母さんの食ってろよ!」
「家のもうまいけど、人の家のカレーもどんなやつなのか興味あるだろ。カレーだぞ?」
弟の栗栖先輩にそうカレーを熱く語られて、黙り込む栗栖さん。そんなにカレーって魅力的なのかな?
でも確かに、他の家がどこのメーカーのカレールー使っているかとか辛さはどの程度なのかとかは気になるかもしれないと、私もなんとなく変に納得してしまったのだった。
「いっぱい作ったから大丈夫です!どうぞ」
私がリビングに案内するより早く、家の勝手を覚えていたムーちゃんが一番にダッシュして入っていった。
「ムー!遠慮しろよ!おまえの家かよーっ!」
栗栖さんが慌てるが、ムーちゃんはすでにリビングのソファにポンッと座り、我が物顔なのであった。フフフと私はムーちゃんが可愛すぎて笑ってしまう。
先日の台風の時のお礼に何かできないかなと思っていて、夕飯を作ってごちそうすることにした。なぜ先輩がいるのかと言うと……栗栖さんが電話をかけながら、長靴を洗って、庭に干しているところに偶然帰ってきて、納屋に自転車を片付けていて、聞こえてしまったらしい。
「ムーちゃんにはサツマイモ茹でておいたからね」
私が持ってくると、くるくると回って喜ぶムーちゃん。ムーのもあるの!?と栗栖さんが驚く。
「こないだ、ムーちゃんも来てくれましたから」
「えー!よかったな。……なんにもしてないけど」
栗栖さんは苦笑するが、私はいてくれただけで良いんですと笑った。部屋の中はお米が炊けた良い匂いとカレーの匂いがした。私は久しぶりに三人で座っていたテーブルに三人分のお皿を並べた。
「好きな野菜とか温泉卵とか唐揚げをトッピングして食べてください」
大きなお皿に大盛りに盛り付ける栗栖先輩。さすが野球しているだけあるなぁという食べっぷりだった。いっぱい作ってよかった!気持ちのいいほど、スルスルと食べていく。栗栖さんもパクパクと食べていく。
「カレーもすごく美味しいんだけど、この唐揚げの味付けいいね!美味しい。もしかして漬けてあった?」
「わかりますか!?」
「うん。味がしっかりとついてるし……後、衣にも工夫されていると見た!」
「正解です!」
栗栖先輩がカレーを食べる手を止めて、おいおいと言う。
「主婦みたいな話して楽しいのか?オレにはさっぱりわからない。でもカレーも唐揚げも美味い」
「栗栖先輩、ありがとうございます……でも栗栖さんの方が私より料理上手だし……後、栗栖さんの家の野菜も美味しいです」
私がそう言うと栗栖先輩は麦茶をごくごく飲んでから言った。
「家は昔から農業してて、親は忙しい時、遅くなることがあった。そんな時、兄貴が簡単な料理をして作ってくれて、兄弟の中では一番、
「おまえらが腹減ったってうるさいからだろ!?」
弟たちの面倒見も良いらしい。困っていた私に思わず声をかけてしまったのも、自然と出てしまった行動なんだろうなと思った。
美味しい!と言ってくれて、スルスルッと食べていく男子二人の食べる量には驚いたけど、後に残る空っぽの鍋と炊飯器にはなぜか嬉しくなった。
そして誰かと一緒に食べるご飯は久しぶりで、夕食の時間に響く声に私はいつもと同じメーカーのカレーなのに、とても美味しく特別に感じたのだった。
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