第2話 過去への旅立ちと出会い、魔法学校と星空の回廊
アリスが過去への旅路に足を踏み出すとき、彼女の周りには輝かしい閃光が広がり、時間と空間が歪み、すべてが静止したかのように感じた。心地良い風が彼女を包み込み、彼女の体が浮き上がる感覚に襲われました。
「これが、時空を超える旅なのね...」
そして、一瞬のうちに彼女は新しい世界に足を踏み入れました。ここは過去の世界、まだ邪悪な存在が彼女の街を蝕む前の世界でした。空は青く澄み切っており、人々の笑顔が溢れ、街は生活の賑わいで満ちていました。
「こんなに平和だったのね、私たちの街が...」アリスは周囲を見渡し、目を細めて微笑みました。
過去に戻ったアリスは、初めて見る町の賑わいに心が沸き立つような気持になりました。そして、それは思い出せないくらい本当に久しぶりのことでした。
ですが、町を当てもなく歩くうちに、徐々に彼女に与えられた使命の重さを実感し始め、全く知り合いのいないこの世界でどうやっていけばいいのか不安になってきました。
あてもなく歩くうちに突如として彼女の視界に現れたのは、巨大な石造りの建物でした。周囲の景色に映える高くそびえる塔、それはまるで古代の城のようにも見えました。
「おかしいわ。遠くから見たときはこんな建物なかったはずなのに・・・」
アリスはそう訝しく思いました。
不思議に思った、アリスは門をくぐり、建物へと足をすすめようとしました。
ですが門を潜り抜けようとしたその瞬間、恐怖に彼女の心が凍りつきました。校舎へと続く道の両側に立つ、武器を持った石像が突如として動き出したのです。彼らの視線は彼女に向けられ、攻撃する準備をしていることが一目瞭然でした。驚いたアリスはその場で立ちすくんでしまいました。
その時、ある一人の男性の声が聞こえました。
「ここで何をしている。」
アリスに対する敵意を隠しもしないで、その男性はアリスを叱責し始めました。
「ここには特別な資格のあるものしか入れない。君はそうではないだろう。」
「申し訳ありません。」
アリスはすぐに謝って外に出ようとしましたが、男性はそれを許しませんでした。
「待て。この建物は資格のない人間にはたどり着けないようになっているはずだ。お前がたどり着けるのはおかしい。一緒に来てもらおう。」
男性が懐から取り出したを木の棒を一振りし、何事かをつぶやくと、石像はアリスに対する攻撃の姿勢を緩めました。アリスは息を飲んで石像の動きを見守りました。石像は彼女をじっと見つめた後、道を塞いでいた石像はじりじりと彼女から距離を取り始めたのです。そして、男性とアリスを招き入れるように、建物へと向かう道をあけました。
男性はアリスの腕をつかみ、建物の中へと入っていきました。
男性の歩みは速く、追いつくので精一杯でした。
内部は想像以上に壮大で、まるで星空を思わせる天井には輝くクリスタルがちりばめられており、その光は大理石の床に映り込んで幻想的な雰囲気を作り出していました。壁には無数の絵画がかかっており、その一つ一つが異なる歴史的瞬間を描いているようでした。
右手には長いカーブを描く階段があり、それぞれの段が異なる石で造られていました。左手には大きな窓から昼光が差し込み、彼女の視線を引きつける広大な庭園が見えました。草木が青々と茂り、色とりどりの花々が咲き乱れていました。
アリスは思わず自分の立場を忘れ、目の前の光景に感嘆しました。
「ここは一体何のための場所なのですか?」
そう男性に思わず問いかけると、彼は驚いたようにアリスを見つめました。彼は深く赤い瞳を持っていることにアリスはその時初めて気づきました。
「それすら知らずにここに来たのか?…ここは学生たちが自由に魔術を学び、創造する場所だ。まあ、君には一生縁のない場所だ。」
すぐに前を向きなおすと、そっけなく言い捨てました。
彼はアリスを半ば引きずりながら、学校の中心に向かう回廊を歩き始めました。その回廊は古代の聖堂を思わせる高い天井と、濃淡の大理石で装飾された床を持ち、優雅さと力強さを同時に感じさせました。巨大なステンドグラスの窓からは柔らかな光が差し込み、色とりどりの光は大理石の床にまるで絵のように美しい文様を織りなしていました。
回廊は徐々に狭く、曲がりくねり始めました。無数のドアが両側に並び、それぞれが別の世界への入口かのような不思議な感覚を呼び起こしました。そしてそのドアの一つ一つは、太陽や月、星々といった神秘的なシンボルで飾られていました。
迷路のように入り組んたその道を男性は迷うことなく進んでいきました。
そしていつの間にかまるで新月の夜の闇のように真っ黒な大理石の床の回廊にたどり着きました。そこは薄暗く、それまでに通ってきた道とは異質な空気を漂わせていました。壁には老齢の黒い服をまとった人物たちの肖像画が並んでおり、彼らの眼差しはまるで深淵を覗き込んでいるように神秘的で、思索的な輝きを放っていました。
ついに男性はある巨大な木製のドアの前に立ちどまりました。アリスの息はすでに上がっていて、もう歩かなくてよいことに安堵しました。そのドアには金のインレイが施され、中央には龍とフェニックスが描かれていました。その象徴的な図案は永遠の復活と再生を表しているかのようでした。
ノックをすると、低い男性の声で招き入れる声がしました。
「失礼いたします。」
「マクシミリアン君。ご苦労だったね。」
その時初めてアリスは隣の男性の名前がマクシミリアンであることを知りました。
微笑みをたたえてこちらに話しかけている人物は、先ほど見た肖像画の人物と同じように黒い服をまとっており、その瞳を神秘的な光と影を宿していました。唯一違うのは彼が肖像画の人物よりもいくらか若く、瞳が瑞々しい生命力もたたえていることでした。
「大体の様子は見守らせてもらったよ。彼女が招かれざるお客様かな。」
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