モンスター娘だって良いじゃない!!

紙巻 吸煙

プロローグ 多種族高等学校

 遠い昔の記憶。

 霧が掛かり曖昧なそんな記憶。

 花々が咲き緑豊でのどかな丘の上で、人間の男子と異種族の女子二人の幼子が対面に座っている。

「ねぇ、翔ちゃん。大人になったら結婚しよ」

「うん!僕〇〇ちゃんと結婚する」

「ほんとに? 嬉しい。──約束だよ」

 そう言うと、女の子はニコリと笑みを浮かべた。


 はぁ……、この夢か。

 最近は見なくなってたけど、胸糞悪い。

 何故に俺は異種族なんかとあんな約束をしてしまったんだ、幼き頃のありふれた話とはいえ。

 俺にとっては悪夢でしかない。

 悪夢で思い出したけど、今日から地獄が始まるんだった、はぁ……。

 ベッドから起き上がると身支度を済まし、叔母さんが仕事前に用意してくれていた朝食をたいらげ。

 家を出ると通学路を歩き出す。

 今日は大事な入学式、それも普通の高校とは違う。

 近年出来た法律である『異種族交流法いしゅぞくこうりゅほう』により、俺の住む『多族市たぞくし』には人間以外にもコボルト、アラクネなどと言ったt多数の他種族が暮らし。

 他種族が多く、人類史上初の人間と異種族の共同学校『多種族高等学校たぞくこうとうがっこう』が設立された。

 そこで理事長を務め運営しているのが俺の叔母さん『神崎奈緒』だ。

「おーい、翔太」

 呼ばれる声に振り向くと、制服を着崩した金髪の男子高生が走ってくる。

「明か。朝から騒がしいな」

「当たり前だろ!! 今日から異種族に囲まれた最高の学生ライフが過ごせるんだぜ?」

「俺にとっては地獄の学生ライフになりそうだよ」

「相変わらず異種族の事嫌いだよな」

「あぁ、嫌いだよ……、異種族なんて」

 何処か寂しげな表情を一瞬浮かべ、直ぐに元の表情へ戻すと目標の学校へと歩を進めて行く。


 ようやく辿り着いた『多種族高等学校』。

 門から続くレンガの道、それを挟む様にして両脇に桜の木々が生え桜の花びらが宙を舞う。

 通路の中央には噴水があり、煌びやかな作りとなっている。

「あちこち見渡す場所には異種族、異種族と天使達しかいねぇ! 天国は此処にあったのか」

「余りにも騒がしくするもんだから、変質者を見る目で見られてるぞ」

 そういうと、悪目立ちをする明を他所に校内に翔太は向かって行った。

 校内に入ると案内の表記を辿り、体育館に行き。

 ずらりと並べられたパイプ椅子の中から空いている席に着席する。

 今日入学する生徒達でパイプ椅子が埋まると、入学式が開始された。

 理事長の話も終わり、自分のクラスを知る為に出されたホワイトボードを見に近寄ると明が近寄って来て。

「翔太のクラスは何処だったよ。因みに俺はA組だったわ」

「あー、あったわ。明と同じA組だとよ」

「まじ? それなら一緒に行こうぜ」

 二人は体育館を後にすると自分達のクラスへと向かって行く。

 教室の扉を開けると何処を見ても人間は見当たらず、何処かしこも異種族しかいない。

 今にも鳥肌が……。

 黒板に書かれた番号順に従って自分の席に座ると担任の先生が来るのを待った。

 少し遅れて担任の先生と思しき人が教室内に。

「はーい、皆さん。席についてください」

 指示に従い生徒全員が席に着くと。

「今日よりA組の担任になりました『冬風ふゆかぜゆき』といいますぅ。私は亜人で『雪女ゆきおんな』ですぅ。これから皆さんには順番に自己紹介をしていったもらますぅ」

 ──えっ。

 何で俺が異種族共に名乗らないといけないんだ。

 そう思っている中、順番に自己紹介は始まっていった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

モンスター娘だって良いじゃない!! 紙巻 吸煙 @XrulerX28

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ