フィクション日記

@z2top

5/23 曇り

俺は30代の男。

仕事はIT系の会社役員。


最近仕事に行き詰ってしまって自分の能力を疑いだしてへこたれている。


これまで、「自分の力でのし上がってでっかい金を稼ぐんだ!」

と息巻いて仕事に没頭してきたが、最近どうやら自分は「人に合わせて仕事をする」ということがひどく苦手なことに気が付いた。


会社の役員というポジションまで貰ってなにを、と思われるかもしれないが自分でも驚くほど人に合わせられない。



「無頼伝 涯」という漫画をご存じだろうか。

カイジやアカギなどで有名な福本先生の描いた漫画であり、施設育ちの少年が無実の罪で投獄され自由を追い求める作品だ。

この中で、施設育ちの主人公の少年、涯はひょんなことから公園で生活をはじめ公園から高校に通っていたのだが、そんな様子に気が付いた同級生から当たり前のようにいじめを受ける。

そんな中、涯はそんな同級生らに、


彼らは親の金で暮らしており"マイナス"だ。

自分は貧乏ではあるが自分の力だけで生活しており"ゼロ"であり自由なのだ。

これから自分の力をつけていけば良い。


と、考えていた。

貧乏で兄弟も多かったため、親からの仕送りもなくアルバイトで生活費を稼ぐ日々を送っていた俺はこの場面に感銘を受け、「自分の力」を伸ばせばいいんだ、と考えた。


この仕事でどうやったら自分の力を伸ばすことに繋がるんだろうか。

今会社を辞めて一人で生きていけるのか。


そんなことばかり考えて20代を送ってきた結果、自分が中心の考え方になってしまったんだろう。

今になって人のために何かをする・人の役にたつことができなくなっていることに気が付いた。


このまま、自分の思うように自分のために仕事ができるよう環境を変えるべきなのか。今までの自分を捨て一般社会に溶け込むように生きていくべきなのか。


ずっと悩んでいる。


話は変わるが、俺は自己啓発本・ビジネス書・その他諸々先人たちが俺たちに書き残してくれた書物が(あるいは最近では動画なんかも)大嫌いだ。

ゲームの攻略本を読んでネタバレされている気分になる。

攻略本ならまだしも正解かどうかもわからないお前の回答を自慢気にひけらかし金を稼いで何様だとさえ思っていたこともある。


ただ最近、自分が変わり一般社会に溶け込むのなら大多数の人が正しいといっているそれらの攻略本を見てみるのも大事なのか?と思い真剣に見てみた。

するとなんでも、「30代はアウトプットが大切。」らしい。

また、「行動すること」もどうやら重要らしい。


それならば、と思い小説を書いたこともなければ禄に本を読んだこともない俺が日記にもならないこの文章を書き始めたというわけだ。


では、自分を変えるんだね?

わからない。

このまま自分の力を伸ばし、周りの人たちを幸せにする道だってあるように感じる。

その道を選んだとて、人に合わせることは必要だとも感じる。

自分一人の力を伸ばしたって限界がある。自分が天才や超人でないことも知っている。



今日、親父のようにも思っている社長からこんなことを言われた。

「判断と決断の違いを知っているか。判断は100%情報が出揃ってからすること。

決断は50%でも決めることだ。お前に必要なのは決断だ。」


即断即決がかっこいいと思いながら優柔不断な自分。

石橋を叩いて渡りたいのに面倒くさくなって紙の橋を走り抜ける自分。

かっこよく死にたいと思いながら長生きしたい自分。

人のために尽くすヒーローに憧れながら自分のために生きてきた自分。


色んな矛盾や葛藤の中で、決断までの頭の整理をこの場を借りてやっていけたらと思う。


まぁ全部フィクションなんですけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る