第26話白と黒




帝国の街のアポローネ。

何度も潜入して街から出る乗り物の後を追うのが日課となっている。


これで何度目の追跡をしただろう。

アポローネの周辺には、小さな村があって何度も空振りをしている。


今度こそはと思い追いかける。

あれ、長いこと走り続けてるぞ。もしかして当たりなのか・・・


地面スレスレに浮いた状態で走り続ける乗り物は、不思議な乗り物だよな。




あ、見えてきたぞ。

あれは、お目当ての街なのか・・・


街に到着したぞ。


隠蔽の指輪をしてるから、そのまま入った。

あ、ばれてないぞ。


何度も瞬間移動したから、俺も瞬間移動も習得済みだ。

コボが話せるのと違って通訳も習得したから、今は単独行動だよ。



人が居ない場所で指輪を外して、幻魔法で住民に化ける。

鏡で確認すると金髪の優男に変身してたよ。

これなら大丈夫だろう。




あの女性に話してみよう。


「すいません。ここの街の名を教えてください」


「いい男なのに、おつむは空っぽのようね。貿易を生業にしている貿易都市にポロよ。ちゃんと頭に叩き込むのね」


なんて女なんだよ。

見掛けによらないキツイ女でビックリしたぞ。



今度は、あの男性に聞くか・・・


「すいません。異世界から来た奴隷って見ませんでしたか」


「ああ、例の奴隷ならここには居ないぜ。だいぶ前の夜だったな・・・港から船に乗せられるのを見たな・・・あれってワケありだな」


「どこに行ったか分かりませんか」


「分からないな。秘密みたいで兵士らに追いやられたからな・・・」


「ありがとう御座います」


「いいってことよ」


あの様子なら誰に聞いても分からないな・・・折角、ここまで来たのに・・・



あれ!何か騒がしいぞ。

兵士がやって来たぞ。俺はとっさに隠れる。


「おい!優男を見かけなかったか・・・不審者通報で来たのだが・・・怪しい奴を見かけたら通報しろ」


俺は、急いで幻魔法で姿を変える。

今度は太った男だ。

腕も太いし腹も出ているぞ。


「そこの君!君だよ。優男を見なかったか」


「いえ、見てません」


それだけ聞いて、あっちに駆け出したぞ。

やばかったなーー。



あ、新手の兵士だ。

ここに居てはヤバイぞ。逃げるしかない。


瞬間移動発動。

あ!何かに邪魔されてるぞ。

瞬間移動が出来ないなんて初めての経験だ。



「とうとう見つけたぞ」


なに!

見上げる空に白いローブをまとった女が居るぞ。

手には、3メートルもある魔法の杖が握られている。


あ、見た事がある杖だと思ったが、あの木人の枝を使った物に間違いないぞ。

そんな物が奴らの魔法の杖なのかよ。


それをクルクルと回しだしたぞ。


「魔法解除!」


なんだと・・・幻魔法が解除されたぞ。


「やはり日本人であったか・・・今までの仕業はお前だったのか・・・これでも食らえ」


見えない刃物が向かって来たぞ。

魔眼でしか見えない魔法だ。


とっさに右に避ける。


「なんだと・・・この魔法が見えるのか・・・小癪こしゃくな奴だな」


無限収納のから隠蔽の指輪を出してはめる。


これでどうだ。

探してるぞ。必死に探してるから見えないようだ。

やっぱ隠蔽の指輪はレアなアイテムだったようだな。


これで逃げれるぞ。


え!なんとメテオを発動してるぞ。

こんな街中で、メテオなんか発動して被害が半端ないぞ。

それでも発動するのか・・・それ程に俺が憎いのか・・・



こっちは生命吸引を発動。


瞬時に相手の生命を吸引。その効果でメテオの発動が強制解除。


【魔法操作習得】



魔法操作か・・・魔法を解除された理由が分かったぞ。

魔法操作で俺の魔法をバラバラにして解除したのか・・・



あ、白いローブの女が、ふらつきながら落下。


とっさに受止めてしまったぞ。

生命力が少なく魔力も少ない状態だ。

当分は目覚めないだろう。



「姉に何をしたーー!!」


なんと、空には黒いローブをまとった女が居たぞ。


素早く無限収納から結晶刀を出して首筋に当てる。


「ここから1キロまで離れろ。この女の命がどうなってもいいのか!」


「分かったから姉を助けて」


「早く離れろ!」


女は、俺を見ながら浮かんだ状態で後ろへ下がる。

ギンギンと目線を感じつつ、俺は瞬間移動を発動。






我が家の俺の部屋で女を抱いた状態で立っていた。


そして、急にドアが開いた。


「ユウ!これは一体!・・・これから何をしようとしてるの・・・もしかしてレイプする積もりなの・・・」


「違うって・・・貿易都市のポアで、この女と戦ったんだ」


「詳しく話してーー!!」


「なになに・・・」


「なんかあったの・・・」



「大きな声を出してキッチンまで聞こえたよ、何かあったの・・・」



もう、彼女らの説明に2時間もついやしたぞ。

ああ、戦いより疲れた。


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