第37話 フィゼとシノさん
ゴットフリート王子が、アイアンサイド将軍と剣を交える。
私たちは、深追いしない。
「ダテさん、わたしの【アルカナ・フラッシュ】なら、兵隊を気絶くらいはできるのではないですか？」
「できるけど、今は保留でお願い」
今はまだ、敵が多すぎる。的確なタイミングでマップ兵器を放たなければ、回復に時間がかかってしまう。まだイーデンちゃんは、大技を連発できる魔力を持っていない。今は、小技を連発してもらう。
マージョリーたんに至っては、もう少し温存がしたい。嫌な予感がする。
「将軍、魔物に与するあなたではないはずだ。兵を引け」
「それはなりませぬ」
王子が説得を試みたが、将軍は首を横に振った。
「なぜだ？ あなたがもっとも、国王に慕われていたではないか？」
「それで、ギルガム侯爵に疎まれたのです。彼は最初から魔物に取り入っておりました。今のグレーデンはギルガムの言いなりです。城も彼の手のもの以外は追放されておりますぞ」
「やはりギルガムか……将軍、伏せろ！」
ゴットフリートが、将軍の頭を下げさせる。
炎魔法のヤリが、地面に突き刺さった。ゴットフリートがかばわなければ、心臓に突き刺さっていただろう。
「アイアンサイド、ギルガムはドサクサに紛れて、あなたまで殺すつもりだ。ギルガムの顔を立てる必要はない」
「ですが、ギルガムに家族をさらわれております」
「なんとかしよう」
話し合いは、どうにか決着がついたみたい。
それにしても、今の魔法はどこからだ？
「ダテさん、上です！」
マージョリーたんが、上空を指差す。
そこには、アークデーモン級が浮遊していた。
『わかった。くらえ、【
「投げますわよ！」
ゼット状に変形した私は、光の刃を周囲にまとってマージョリーたんの手で投げ飛ばされる。
アークデーモンを両断して、私はマージョリーたんの元に戻った。
マージョリーたんが、私をキックで受け止める。大胆なスリットの入った【ヴァルキリー】の衣装も、今は堪能している場合じゃない。
「シノ様！」と、マージョリーたんが指示をシノさんに飛ばす。
「わかってる。【テレポート】！」
シノさんが、マージョリーたんにテレポートの魔法をかけた。フィゼと接近するために。
いよいよフィゼと直接対決を……。
「え!?」
『ちょっと!?』
テレポート、していない！ どうして？
瞬間移動したのは、シノさんだ！
シノさんとフィゼが、戦っている。互いの殺人級大型魔法が、炸裂した。
フィゼが、乗り物代わりにしているイカ型に、指示を送る。
魔物が触腕を尖らせ、氷のヤリを放った。
シノさんが周囲を凍りつかせて、ツララのヤリを吹っ飛ばす。
「まだ、人間の側についているの？」
「あなたは、魔法に騙されている」
シノさんが、フィゼを説得していた。
この二人に、いったい何が？
私はゴーマ三姉妹については、『ダウンロードコンテンツに登場する、強敵』としか情報を持っていない。そのため、彼女たちの出自については詳しくないのだ。
フィゼを守るように、魔物たちが押し寄せてきた。
『イーデンちゃんお願い！』
待ってましたとばかりに、イーデンちゃんが私の指示に動く。
「今度こそいきます、【アルカナ・フラッシュ】！」
ゼットさんを掲げて、イーデンちゃんが魔力を一気に放出する。
「やらせない。【テレポート】」
フィゼが、イーデンちゃんに接敵した。乗っているイカ型モンスターの触腕が、怪しく光る。だが、その照準は上空に向けられていた。
彼女の視線の先には、ゲミュートがいる。彼は指に、黒い稲妻を収束させた。一気に、雷を解き放つ。
「いけない。【テレポート】」
アルカナ・フラッシュの発動している中心に、シノさんは瞬間移動で飛び込んでいった。
フィゼをどかせたのである。
「な!?」
驚きの顔を見せるフィゼの眼前で、シノさんがゲミュートの黒雷に肩を貫かれた。
「ど、どうして？」
「実の母なら、当然のこと」
シノさんは、フィゼのお母さんだったのか。
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