第34話 クーデター勃発!
「な……」
『え!?』
まさかのケット・シーの攻撃に、私やマージョリーたんが舌を巻く。
飼い主のイーデンちゃんに至っては、命令すらしていない。なのに、勝手に動いて攻撃を仕掛けたのだ。
ケット・シーて、探索系だと思っていたから、攻撃するなんて知らなかった。
なにかめぼしいアイテムを見つけたのか?
「助かりましたわ、トシオさん。おりこうさんですわね」
マージョリーたんが、戻ってきたケット・シーの頭を撫でる。ああ、尊い。
いや、ふけっている場合じゃなかった。ケフェスはどうなった?
ケフェスの仮面が、脱げている。目の辺りが、少し欠けていた。
「痛ったいです。舌を噛んじゃいました」
顔を隠しながら、ケフェスが後ろへ下がる。吹っ飛んだマスクを回収し、装着し直す。
「サクラダは手中に収められませんでしたが、役目は果たしました。ここは撤退しましょう。仕切り直しです」
ジリジリと下がりながら、ケフェスは背後の闇に溶け込もうとしていた。
「役目? あなたの役目とは!?」
「ご自身の目でお確かめなさいよ。ごきげんよう」
ヴィル王女がまた狙撃したが、今度は般若面の盾に阻まれる。
般若面が、煙幕を吐き出す。
煙幕に覆われて、ケフェスは消えていった。
「ダテさん、ケフェスの役目とはなんでしょう?」
相変わらずトシオの頭を撫でながら、マージョリーたんが聞いてくる。
『もしかして、私たちの足止め?』
「だとしたら、魔族の狙いはリシュパンということに?」
『かもしれない。急いで帰ろう!』
私たちを乗せて、トシオがのっしのっしと走る。ようやく、移動してくれるまでに懐いたか。
マージョリーたんとイーデンちゃんはトシオに、アマネ姫とヴィル姫は、テンラに乗ってダンジョンを脱出した。
今のリシュパンは、ロクに壁役がいない状態だ。ゴットフリートなら防御役が務まるが、そもそも彼こそ護衛対象である。守護する相手が自分を守らなければならない状況になるとは。
「それに、今のリシュパンは孤児たちも集まっている。早く帰らないと危ないよ」
猛ダッシュで、リシュパンを目指そうとした。しかし、船で行っても数日はかかるだろう。
「もどかしいですわ」
「みなさん、ご無事か!?」
私たちが港でヤキモキしているところへ、空からゴットフリートの声が。
上空を見ると、飛空艇が飛んでいるではないか。飛空艇は私たちを見つけると降下を始める。
飛空艇から、ゴットフリートが私たちを迎えた。中へ入ると、国王まで乗っている。
「ご無事でしたか。ボクはグレンデルからきた飛空艇で、こちらまで参上しました」
「グレンデルは、どうなりましたの?」
「やはり、クーデターが発生しました」
ゴットフリートとリシュパンの会議が、軍事力拡大と解釈されてしまったらしい。それで、ゴットフリートを殺害する大義名分ができたと。
「自分たちは、魔物と繋がっていますのに?」
「戦争による利益を求める彼らからすれば、平和を求める我々こそ邪魔なのです。だから、魔物と結託することを選んだのでしょう」
ならば、今のグレンデルは敵だね。
『よく敵に見つかりませんでしたね?』
「グレンデル内のクーデター勃発に乗じて、発進させたそうです」
リシュパン防衛戦の前に、私たちを回収しに来たのだ。船より飛空艇のほうが、圧倒的に早いもんね。
「急ぎましょう。敵はもうそこまで来ています」
すぐに飛空艇を出撃させて、一行はリシュパンへ。
リシュパンは、大変なことになっていた。近隣の森から、煙が上がっている。
場内の騎士たちはともかく、かくまうことになった孤児たちは大丈夫なのだろうか。
『拠点まで急いでください』
「心得ている、ダテ殿。見えてきましたよ」
カリスが、仁王立ちをしてリシュパン城壁を守護している。
「無事ですか、カリス!」
「ええ。もちろん。ごらんなさい。この光景を」
そこには、敗走する魔物たちの姿が。
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