第7話 マージョリー視点 わたくしの女神様
ダテさんが降臨したとき、女神様が現れたと思いました。
いえ、彼女は間違いなく女神様です。ジンデル伯爵家に代々伝わる【魔神の盾】に、宿ったそうですが、どうでもいいですわ。少なくとも、ダテさんはわたくしにとって女神である。この事実はゆらぎません。
わたくしの置かれていた状況は、まさしく絶望でした。
しかし、ダテさんはわたくしを厳しい状況から救ってくださったのです。
わたくしの盾は、近未来を想像させる実に未来形なフォルムになっていました。
ダテさんいわく、「巨大ロボット」なるものを想定してご自身を形成なさったとかで。
わたくしには、未知なるワードでしかありませんでしたわ。
「マージョリー・ジンデルを殺そうと襲いかかるクソッタレな未来を、変えに来た」
ダテさんはそうおっしゃいました。
どうもわたくしは、この世界の創造主から忌み嫌われているらしいのです。そのため、命を狙われているのだとか。
実際、ダテさんはわたくしをかばってくださいました。傷ついて、ボロボロになっても。
ワイバーンのブレスを受け止めてさえ、ダテさんは平気な顔をなさっておいででした。
ですが、わたくしにはわかります。
ダテさんについた、おびただしい傷の数々を。当然です。ワイバーンですよ? すぐ近くにいた兵隊の盾は、真っ二つになっていました。それだけでも、あの恐ろしい魔物の強さは伺えます。ブレスを受けた建物なんて、マグマのように溶けていました。
わたくしは、ダテさんの傷を目に焼き付けておきます。
また、イーデンさんとの出会いもありました。彼女も、この世界から嫌われているとか。わたくしが死んだ世界線では、遺品の魔神の盾に認められて戦うのだそうです。しかし、仲間からは歓迎されないのだとか。
幼いながらも勇敢な彼女は、孤児たちを自らの細腕で守っています。
あんなに頼りないのに。わたくしに任せてくださればいいものを。
ダテさんはそんな彼女に、戦う力を授けました。ご自身の分身ともいえる【魔神の盾】を、複製なさったのです。ゼットさんという名前までつけなさって。
そんな盾を身につけたからには、イーデンさんをウチに呼ばないわけには参りません。ご自身はおうちも焼けてしまったそうですし。
オフロに入って気が付きましたが、彼女は腕だけではなく鎖骨も浮き出ておいででした。栄養が足りてらっしゃらない証拠です。
急いで執事を呼び寄せ、栄養のあるものを作らせました。といっても戦場下なので、ろくなものがありません。
とはいえ、イーデンさんはお腹いっぱいになられて幸せそうでしたわ。それがなによりです。
両親には、ダテさんを『魔神の盾に宿っている女神様』とご説明しました。わたくしは死地を乗り越えて、女神と会話できる力を得たのだと。
父であるジンデル伯爵には、「どうして民間人がジンデル家の家宝を所持しているのか」と問いただされました。まあ、驚くのは当然でしょう。
「そんなの、女神のお導きに決まっているではありませんか!」
わたくしがそう説明すると、「お導きなら仕方ない」と引き下がります。
ダテさまの国の言葉で、父のことは「チョロい」とおっしゃるそうですが。
母も、イーデンさんのインテリジェンスアイテム所持を、許してくださいました。
食事やお風呂に至るまで、イーデンさんは驚いてばかりです。
慣れていただかなければ、困るのですが。つい最近まで孤児だったことを考えると、仕方ないのかもしれませんわね。
母は、まるでわたくしに妹ができたみたいだと、新しい家族を快く迎え入れてくださいました。実際イーデンさんに添い寝しようと、自分の寝室まで引っ張っていこうとしたくらいです。
わたくしが全力で止めましたが。
だって、わたくしの側で眠っていただきたいですもの。
イーデンさんはどうかわかりませんが、わたくしにとっては新しくできた妹ですもの。
この子は、全力でお守りします。
そのために力を貸してくださいませ、ダテさん。
わたくしの、女神様。
(第一章 完)
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