第18話 ゴーマ三姉妹

「OKOK。敵はサクラダ軍に圧倒されているわね。あたしたちは、後ろをいただいちゃいましょ」


 ヴィル姫は、乗り気だ。


「水着も持って行っちゃいましょ」


「観光ではありませんよ、姫様」


「そうだけど。一応サクラダは、貿易相手でもあるわよね? 手土産もないと失礼じゃないの」


 戦闘参加だけではなく、資金援助も頼もうという腹だ。

 実際、船を使ってサクラダに売る商品を運んでいる最中らしい。

 エースチーム『雷鳴』には、王都及び港を守ってもらう。


「気をつけてくれ。敵側には恐ろしく強いネームドエネミーがいる」


「そうだぜ。あいつら、自分たちを『ゴーマ三姉妹』って呼んでいた」


 ゴーマ三姉妹とか。もうそんな奴らが。


「ダテとやら、なにやら、ブツブツ言っているが?」


 考え事をしていたら、ゴドウィンに突っ込まれる。

 

『ああ、ゴーマ三姉妹が出てきたんですね?』


「知っているのか、ダテ?」


 なんでも知っているワケではない。しかし、彼女たちはトラウマクラスの強敵だ。


『魔王の娘たちです』


 召喚を得意として、魔物を強化して送り込んでくる。最初に戦ったワイバーンも、彼女たちが強化したモンスターだ。


「かーっ! どおりで!」


 ビリーが、額に手を当てた。


「アイツら強すぎ。ダメージを与えても、すぐ逃げてしまう」


『それで構いません。むしろ、深追いしないでください。みなさんが全滅したら、元も子もないので』


『雷鳴』は、王都リシュパンのヒーローだ。それが壊滅したとあっては、民の士気にかかわる。


『姫の護衛をしたいお気持はわかります。ですが、王都にくだんの三姉妹の一人が襲ってきます。ゴドウィンさん、どうか油断せぬよう』


「わかった。王都の護衛は任せろ」


 先の戦闘で、ゴドウィンはもうヴィル王女を止められないとあきらめたらしい。


 それに、遠征任務には城攻め組より強いモンスターは出ないと教えてある。


 とはいえ、油断はできない。私のカンが、ビンビンに危険信号を放っている。


 たしか遠征側は、モンスターの数が多いだけだった。敵の種類が変わっていなければ、大丈夫なはず。


 ひとまず、行ってみなければわからない。



 船で、サクラダまで移動をする。



 しかし、案の定、イレギュラーに見舞われた。


「ヒャッハハー! 楽しーいっ!」


 ピンクのベリーショートヘアの少女が、自分の背丈より大きな鉄塊を両手に持って振り回す。上半身はビキニの上に貼らまでのブラウスを着て、下はデニムのショートパンツだ。全体的に肉感的な女性であるが、性的な感じはしない。狂気じみた目が、性欲を掻き立てないのである。


「ムダです。我が領海から出ていきなさい。今なら痛い目に遭わずに済みます」


 対抗するのは、大きな機械仕掛けの鳥に乗った女性だ。鳥の背に立ち、弓で攻撃を続けている。


「なんですか、あれ?」


「あの鳥は『テンラ』。アマネ姫の、インテリジェンス・アイテムですわ!」


 アマネ姫の武器は、召喚獣なのだ。


「しゃらくさい。このゴーマ三姉妹の一人、メキラ・ゴーマにケンカを売るなんてさ! 【ウインドカッター】!」


 メキラというピンク髪の少女が、魔法を放った。初歩の風魔法なのに、威力は台風のようなである。


 ダブルの竜巻が、姫を守る船をコナゴナに沈めた。


「もういっちょ!」


 再び、メキラが竜巻を発生させる。


「まだです。【風斬り】」


 天候を操作して、アマネ様がメキラの風魔法をシャットアウトした。

 この鳥型召喚獣、あなどれない。


「こざかしいね。剣は届かないし。じゃ、これで!」


 メキラが、大量のモンスターを呼び出す。


「物量で木っ端微塵なんて性に合わないんだけど、やむを得ないよね?」


「くっ」


 アマネ様でも、この数はさばききれないか。

 ならばそっちは、こちらがいただきますね。


『マージョリーたん、今です!』


「はい。【ウイング・ブラスター】!」


 私は、光の翼を展開する。

 マージョリーたんの身体が、船から浮き上がった。


「あなたは、マージョリー様?」


 アマネ様が、こちらの存在に気づく。


『この距離なら届く。突撃するよマージョリーたん!』


「承知! お覚悟を!」


 マージョリーたんが、敵陣に突っ込んでいった。


『カリス、姫様! こぼれた敵はお願いします』


「心得た」と、カリスはいつでもマキビシが撃てるようにスタンバイを。


「わかったわ」と、ヴィル王女はメキラ狙撃の体勢に。


 ある程度のザコは、蹴散らした。

 しかし、中ボスクラスの巨大カニが一匹残る。


「あはは! 派手に登場した割に、たいして威力がなくないか?」


 勝ち誇ったように、メキラが高笑いをした。

 だが、ここからが本番である。


『イーデンちゃん、技が届くよ。行って!』


「はい。参りますゼットさん」


 船の上で、イーデンちゃんが身構えた。


『【グランドクロス】を、お受けください』


 ゼットさんの声とともに、イーデンちゃんがカニ型中ボスに突撃する。


 盾から、十字状の光線が発射された。

 カニのバケモノが、光の十文字によって両断される。

 

――イーデンのレベルが上がりました。レベル四〇に到達したため、マップ兵器【アルカナ・フラッシュ】が実装されました。

 

 出たよ。ブッ壊れ兵器【アルカナ・フラッシュ】が。

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