僕の机はスマートフォン

月簡

僕の机はスマートフォン

 授業中……。机に肘を置き、頬杖をついていた僕は〈あれ〉を感じた。

 そう、スマホのバイブレーションである!

 え、え、なんで机から?うちの学校はスマホ禁止なんだけど。

 見つかったら最悪の場合……鬼教師基底きていに……真っ二つにされる!

 机を視てみると、そこには大々的にホーム画面が表示されていた。

 おいおい、しかもインスツとかテゥイッターまでインストールされてるし!あ、カクヨムのビューワーも入ってんのか。

 あ、テゥイッター僕の垢でログインされてんじゃん。じゃあ……「机からバイブ音聞こえたなう」と……。

 って、そんな事している場合じゃない!


 しばらく……と言っても丸一日その状態で過ごしてわかったのは、これは他の人にはただの机に見えるということだ。つまり、どれだけ使ってもバレない。でもこれは全然フォンじゃないな。

 放課後。帰りの用意をしていた僕は、足音を感じた。廊下を見ると、そこには、イケメンで人気の国語教師がいた。ドアのところから、こちらを凝視している。

「先生、なんか用ですか」

「なんとなく……変な予感がしたからね」

 そう言うとニタリと笑って続けた。

「学生時代、私もそれを使っていたよ。だが、教師である今は、取り締まらなくてはならない」

 こちらに歩いてきた。

「さあ、それをを渡しなさい」

「嫌です」

「じゃあ、強制的に奪うぞ。私はそれを手にしなくてはいけないんだ」

 教師は僕めがけて走ってきた。殴りでもするつもりか?!

 右ストレートか!

 僕は左手で教師の肘の部分を掴み、右手で腹パンをした。

「ぐッ」

「仕方ない……迷宮ラビリンス!こいつごと落とせ!」

 何だそのダサいネーミングは。だが、落とす?どういうことだ?

 その時、床が開いた。エレベーターの扉のように。

「ここでお前をにしてやるよ」

 後ろから、悪寒を感じた。

 背後には、銃があった。それもたくさんの。数え切れないような。

「撃て」

 これは、終わったな……。

 目を開けると、あの、机があった。

 頭の中に声が流れてくるような感覚があった。

「これはだ。私はデスク。物に宿る心であり、力」

 口が無意識に動く。

「机。机上の空論だ」

 机上の空論。想像上で実現不可能な考え。今ならできる。それが実感としてある。

「今、この星は!地球じゃない!迷宮によって飛ばされた別の星!だから、重力なんて

「な、そんな暴論を!」

「机上の空論だと言いたいんでしょう。先生。でも、机がある」

 僕たちの体が空中に少しずつ浮いていく。無重力と言うより、上に引っ張られる感覚。

「でも、先生。あんたは駄目だ」

「はあ?」

 僕の体だけ上昇して、入ってきた穴を抜けていく。

 そして、迷宮によって開いた床が閉じた。

「で……、この机は結局何なんだ?」

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僕の机はスマートフォン 月簡 @nanasi_1

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