幼馴染と乱闘

リアン

幼馴染との乱闘

「お母さんなんて大嫌い!!!」


そう言って私は家を出て行った。喧嘩の理由は些細なことだった。私はスマホを片手にそこら辺をぶらぶら歩く。


カッとなって家を出て来たけど……………これからどうしよう。今持ってるのはスマホだけ、財布とかは全部自分の部屋にある。かと言って取りに戻るのも馬鹿らしい。


私は取り敢えず近くにある公園に向かった。時刻は5時前、公園には小学生くらいの子がサッカーをして楽しそうに遊んでいた。


「あれ…………葵?」


公園のベンチでぼーっとしていると後ろから声をかけられた。

後ろを見ると


「どうしたの、そんな呆けた顔しちゃって」


「りーちゃん……………」


後ろに立っていたのは私の大親友の高崎莉緒たかさきりお。服装を見るに部活の帰りだろうか、高校のジャージ姿に背中にはテニスラケットのケースが見えていた。


「まぁ〜たお母さんと喧嘩でもしたの?」


「……………うん」


りーちゃんは私の顔を見るなりすぐに私が悩んでたことを言い当てて来た。


「まったくも〜、今度はどんなことで喧嘩したの?言ってごらん?」


りーちゃんは私の隣に座るとそんな事を言って来た。

これもいつも通り。私は喧嘩をするといつもここに来てベンチに座っている。そしてりーちゃんに見つけてもらうまでがテンプレだ。


「そんなしょーもない事で喧嘩したの!?相変わらずねぇ〜葵もお母さんも」


喧嘩した理由を話すと『またか』と言わんばかりのりーちゃんの顔に少しムッとする。


「そんな事って………!」


「まあ葵の気持ちもわかるし、お母さんの気持ちもわかる。そりゃあ大事に育てて来た一人娘が東京で一人暮らしをしたいなんて言ったらそりゃあ怒るよ」


「そうだけどさ!!少しは聞く耳を持ってくれてもいいじゃん!!!何も言わずに『ダメ!』って言うんだよ!?」


「それは葵の説明が足りなかったからでしょ?どうせまた『〜〜〜の仕事したいから東京行く!』なんて言ったんでしょ?」


「うっ……………」


「図星なのね……………」


しーちゃんの言う通りだった。私はいつも説明の言葉が足りない、そして喧嘩してりーちゃんに助けてもらう。自分でいくら直そうと思っても全然直らないから自分でも嫌になる。


「まあいいわ、どうする?今日もウチに泊まってく?」


「……………うん」


「じゃあお母さんには連絡は私がしとくから、葵はなんて謝るか考えておきなよ」


そう言うとりりーちゃんはスマホを取り出して電話をし始めた。



◇ ◇ ◇



「お邪魔します」


「あら、久しぶりね〜。元気だった?」


りーちゃんの家に入るとりーちゃんのお母さんが出迎えてくれた。りーちゃんとは幼馴染で小さい頃はよくお泊りをしてたな〜。


「おかーさーん、今日あおちゃん泊まってくってー!」


「そうなの?じゃあご馳走にしなくちゃね」


「すみません……………」


「いいのよ!ゆっくりしていってね」


軽くりーちゃんママと話してりーちゃんの部屋に入る。

相変わらずりーちゃんの部屋には大会で手に入れたトロフィーが飾られている。そしてトロフィーが入ったガラスケースの隣の本棚には大量の漫画が入っている。


「りーちゃん、今日一緒にお風呂入らない?」


「……………珍しいね葵から誘ってくれるなんて。も、もしかして……………そういう気分ってこと!?」


「うっさい……………」


なんで一緒にお風呂に入るのか………………それはりーちゃんが生粋の百合好き同性愛者だからだ。それを証明するかのように本棚には大量の百合漫画、百合小説が並んでいる。


「いやぁ〜流石にお母さんの裸じゃもう興奮しなくなってきてさ〜やっぱり若いのがいいよねぇ〜」


「……………そこだけ聞いたらオッサンだよ」


「ふっへっへ…………いいコがいるのぉ〜」


「はぁ………………それよりお母さんになんて言おう」


ふざけるりーちゃんを見ていても頭の中はお母さんの事でいっぱいだった。


私はお母さんとの2人暮らし。お父さんは私が赤ちゃんの頃に他の女と消えたらしい。けど、お母さんはそんな中でも私に一切不自由無く育ててくれた、私がピアノの習い事をしたいって言ったら嬉しそうに行かせてもらえたし、学校だって私は学費とかが安い公立の高校行くって言っても『私立の方が進学先がいっぱいあるから!』と言って私立高校に進学させてくれた。


言わずもがな私はお母さんの事が大好き。だからこそ東京の専門学校に行ってそこで就職していつかはお母さんに恩返しをしたいと思ってる。けど…………そんなの言うのは恥ずかしい。


「あ〜おちゃん、謝罪は寝る前に考えるとして…………宿題しよっか!」


「…………そうだね」


◇ ◇ ◇


「ご馳走様でした、美味しかったです!」


「良かったわ〜、じゃあお風呂入って来てね」


「はい!」


今日の夜ご飯はハンバーグだった。りーちゃんちのハンバーグは和風でポン酢をかけて食べる。うちはいつもデミグラスソースだから新鮮で美味しかった。


「あ〜おちゃん、早く行こ!」


「うん」


そう言って私達は脱衣所に入る、その瞬間だった


「隙あり!!」


目の前にいたはずのりーちゃんが急に視界から消えていつの間にか背後に立っていた。そして『プチっ』という音が聞こえて来た。


「ちょっと!!」


「いいじゃん〜どうせ脱ぐんだしさっ!」


後ろから聞こえて来た音はりーちゃんが私のブラホックを外す音だった。まったく、中学に入ってからはよくこういう事をされる事が増えて来たけど…………この年齢になってもまだやるとは………………。


「そんな事ばっかりするから大きくなんないんだよ」


「………………そんなわけない!!」


こんなイタズラばっかりしてちゃ〜大きくなるもんも大きくならないよね〜。私は後ろにある絶壁を見ながら言う。


「早く入るよ〜」


さっさと服を脱いで浴室に入る。

そして少し遅れて幼児体型のりーちゃんが入ってくる。


「む〜おんなじ環境で育って来たのに………………なんでこんなに違うの…………」


りーちゃんは自分の胸と私の胸を交互に見て落胆の声をあげる。まぁ…………普段の行いだよね。


「にしてもあおちゃんってよく夏でもお風呂入るよね〜。私は暑いからシャワーだけだわ〜」


「え〜だって気持ち悪くない?シャワーだけじゃ」


私は小さい頃から夏場でも湯船に入る。なんでか聞かれたらずっとそうだったとしか言いようがない。


「……………触ってもいい?」


「へっ………!?」


交代して私がシャワーを浴びていると急にりーちゃんがそんな事を言って来た。そしてりーちゃんの目は既に私の胸にロックオンされていて今にでも飛びかかって来そうな獣の目になっていた。


「ダメd」


ダメ、と言おうとした瞬間にはまたりーちゃんは瞬間移動をして私の胸に手を当てていた。


「ありがと!!!!いや〜やっぱり若い子のは柔らかいなぁ♡」


「ぅんっ!……………優しく………………」


「あ〜柔らか〜い♡ほんとお餅みたいだね♡」


う………………やばい……………りーちゃんスイッチ入ってる……………こうなったらりーちゃんが満足するか、対象わたしが果てるまでするまで止まらない。


「ふふっそんなに緊張しないで♡楽にしていいよ〜♡」


そう言いながらりーちゃんは顔を近づけて来て


「〜〜〜〜〜!!?ちょっ……………りーちゃ……………ダメぇ……………!」


「あれぇ♡もしかしてあーちゃん………………」


私には耳への耐性がほぼ無い。だから小さい頃にお母さんに耳掻きをしてもらうだけでくすぐったくてよく押さえつけられてた。そしてそれは成長するほどに弱くなっていって……………


「いやぁ〜♡いいところ見つけちゃったなぁ〜♡」


目の前がチカチカする、頭の中は真っ白になっていって考えることすらできなくなって来て、りーちゃんの獣のような顔しか見えなくなっていた。


「んっ!………………もう…………もぅ……………やめてぇ……………きちゃう……………!」


「ふふっ♡イっちゃえ♡」


「〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!」


私は胸と耳を同時に責められて力がどんどん抜けていってしまった。



◇ ◇ ◇



「あっ起きた〜?」


「ぅん…………………ここは………………」


目を覚ますと私はネグリジェに着替えさせられていてベッドの上に寝転がっていた。ここで初めて私は気を失っていたことに気がついた。


「………………変なことしてないでしょうね」


「してないよ〜。最初はいれようかと思ったけど………………やっぱり反応が見れないとつまんないしね!」


う〜ん……………まだスイッチが入ってるような……………。今日は別の部屋で寝た方がいいかな。


「いやぁ〜鳴いてるあおちゃん可愛かったなぁ〜。あそこがお風呂場じゃなかったら録音して1人の時でも楽しめたんだけどなぁ〜」


「………………私はいつかりーちゃんが捕まりそうで心配だよ」


「ふっふっ〜ん、安心しなさいな。こういうのはあおちゃんにしかしないからさっ!」


「はぁ………………とりあえずどうやって謝るか考えないと」


どうやったらお母さんを説得できるか、仲直り出来るか、必死になって頭をフル回転させる………………………が、


「集中できない!!」


「んっ?手伝おうか〜?」


「……………りーちゃんのせいだよ!!!」


なぜかさっきから隣でオ◯◯ーをするりーちゃんのせいでまっっったく考えが思いつかない。ていうか人がいるのにオ◯◯ーが出来る精神が凄い。私だったら死んでも出来ない………………いやまずやらないけどね!?なんか怖いし。


「…………………あっ!一緒にシたかった?」


「うっさい!黙れこのエロオヤジ!!!ていうかアンタにはイジる場所ないでしょ!!」


「なっ…………!い、いい、言うじゃないか……………そんなこと言うなら、覚悟は出来てるんだろうなぁ………………」


あーもうこんな環境じゃ考えれることも考えらんない。だったら私だって………


「いいわよ!やってやるわよ!!りーちゃんこそ覚悟しなさいよね!!」


「へっ!脱水症状になっても知らないからね!!」


そして第2ラウンドが始まった。



◇ ◇ ◇


「クシュン!!」


次の日、私は風邪をひいた。なんでかって?そりゃあ約1時間ほど大人なレスリングをして汗だくになった後すぐに裸のまま寝たからだよ。


「いやぁ〜やっぱり夏だからって裸のままは不味かったかぁ〜」


「………………」


なんでりーちゃんは一緒の条件だったのにこんなケロッとしてるのよ…………。これがいつもシてる人との差?


「あっあおちゃんのお母さん着いたって」


「………………わかった」


結局私は何も考えられずに次の日を迎えてお母さんと対面する事になった。

そしてお母さんに抱き上げられてそのまま車に連れていかれた。


「……………」


車の中で気まずい空気が流れる。

喧嘩をして、家出をして、そして次の日になって風になって帰ってくる。最悪の空気だ。


けど…………ここで黙ってちゃダメだ!


「お、お母さん」


「……………なあに」


「ごめん…………なさい…………ひどいこと言っちゃって」


勇気を出して捻り出した言葉は最悪の空気を切り裂いた。


「……………お母さんもごめんね、葵の話も聞かないでひどいこと言っちゃって。葵にも考えがあったんだよね。あの後ね、あおいの部屋を見てね、わかったの」


「……………!」


お母さんが言ってるのは学校で使った自分の進路予定表だろう。


「葵はお母さんに恩返しがしたかったんでしょ?」


「…………うん」


「お母さんね、嬉しかったの。大切に育てて来たあおいが私のために頑張ろうとしてるのが。けどね………………」


お母さんは一拍置いて


「お母さんとしては自分の好きなことして欲しい。そりゃあ子供に恩返しをされたら嬉しい。けど、それ以上に自分の好きなことをして輝いてるのを見れる方がよっぽど親としては嬉しいの」


私はその言葉を聞いた瞬間涙が溢れ出てしまった。

お母さんはそんな私を片手で優しく頭を撫でてくれる。


「まあ、葵のやりたい事がそれならお母さんは応援するよ!」


「…………ありがどゔ………………お母さん」



どんな時もお母さんは私の味方



「お母さん」


「なあに?」


「大好きだよ!!」


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