第2話 取締局と女
ジョンはスティーブンと夜まで遊んで帰宅。
次の日、ジョンは目覚ましが鳴る前に目覚めると身支度を整える。
今日は仕事だ。
彼は大手出版社に勤めている会社員。
昨日一緒に過ごしたスティーブンも同じ会社に勤めている。
会社では誰もがヤル気に満ち溢れていて、互いに助け合いながら仕事を行っていた。
「おはよ」
「おはよう」
ジョンは一足先に出社していたスティーブンと昨日のことを話しながら、自分のデスクに腰を掛ける。
デスクはとても綺麗に整頓されていて、仕事のタスクもわかりやすくまとめられていた。
今日やるべき仕事に取り掛かろうとPCの電源を入れると後ろから声を掛けられる。
「この前の記事なかなか良かったぞ」
編集長のマーティンだ。
彼はいつも上等なスーツを身にまとい、口ひげをたくわえ、どこか気取った性格をしている。
点数は90点を超えていて、波長はいつも良い。
「次も良い記事を書けば人事部に昇給を推薦してやる」
「ありがとうございます」
「次のボーナスも期待しておけ」
そういうとマーティンは各デスクを回り、ひとりひとりに声をかける。
みんなのヤル気を引き出して仕事の効率高め、最高の結果を得る。
点数や波長が高い従業員が多いと会社はそれだけで対外的な評価と信用が上がる。
そうすれば取引先からの信頼も上がり、より有能な人材も集まるのだ。
ジョンは自分の仕事を終えると、他の従業員の仕事も積極的に手伝う。
そうすることで彼の点数は上がり、周囲からの信頼も高くなる。
手伝ってあげた従業員は喜んでくれ、それを見たジョンも喜ぶ。
そうなると互いに波長は良い状態になり、「良い調子」をキープできるわけだ。
一通り仕事を終えると昼食のためにジョンは食堂へと向かう。
そこでは豊富なメニューから様々な食事を楽しむことができる。
ジョンはシーフードパスタとサラダを頼み、窓際のテーブルに腰を掛けた。
「お疲れ!」
スティーブンだ。
「お疲れぇ」
「午前中はなかなか忙しかったよ」
「俺もだ。でも編集長から昇給について話があったんだ」
「マジか!よかったな!そのときはまた何かおごってくれよ」
ジョンとスティーブンがそんな他愛もない会話をしていると「ガシャン!」と大きい物音が聞こえる。
2人が音の方へと向くと、ひとりの従業員が苦しそうに倒れているのが見えた。
その場にいる全員が倒れた従業員の元へ駆け寄る。
倒れた従業員の手首に巻かれたバンドは赤く点滅して異常を知らせ、食堂にあるAIロボット・ライトが救急車を要請。
すぐに救急隊が駆けつけるとそのまま病院へと搬送された。
「何かの病気だったのかな?」
「ここの仕事はハードだからな。疲れが溜まってたのかも」
「俺たちも気を付けなきゃな」
「だからこそ昨日みたいにリフレッシュに行くんだろ?」
「あぁ、そうだ。でも波長が乱れていたり、低くなってる時は無理せず声をかけろよ」
「お互いにな」
ジョンとスティーブンは助け合いの意思を確認し合う。
再びテーブルに戻った2人が食事しようとすると、見慣れないサングラスをかけた黒スーツの男性3人が近づいてきた。
「ちょっとよろしいですか?」
「はい?」
「ジョンさんですね。昨日のリゾート施設の件で聞きたいことがあるので一緒に来てもらえますか?」
ジョンとスティーブンはこの言葉に顔を見合わせると互いに不思議そうな表情をする。
「ジョン、一体何したんだよ」
「何もしてないよ」
「だったらコイツらは何なんだ?どう見ても取締局のヤツらだ」
「何なのかよくわかんないけど、とりあえず話せばわかるだろ」
そう言うとジョンは席を立ち、黒スーツの男たちに一緒に行く意向を示す。
「また、終わったら連絡するよ」
ジョンはスティーブンに手を上げ、黒スーツの男たちについていく。
取締局とは「悪い行い」を取り締まる警察のようなもの。
個人や組織の点数を下げるような悪い行いはどんなことでも取締局が目を光らせているのだ。
会社を出ると黒塗りの高級車が3台並んでいて、ジョンは真ん中にある車に乗せられる。
車の中には険しい顔をした中年の女性が座っていた。
「どうも、私は取締局のオードリーです」
「こんちは」
「早速ですけど、あなた昨日リゾート施設で女性と話していましたよね?」
ジョンはリゾート施設のバーで会話をした女性のことを思い出す。
「バーで女性と話しましたけど・・・、それが何か?」
「一体何の話をしていたんですか?」
「何って、ただ『美人だな』と思って声をかけただけですけど」
「話の内容は?」
「不機嫌そうな顔をしてたから聞いてみたんだ『彼氏にでもフラれたの?』って」
「で、そこからはなんでリゾート施設に来たのか聞かれたから『日頃の疲れを癒しに来ただけだよ』って答えた」
女性はジョンの言葉に納得したのかひとり頷く。
「よろしい。仕事に戻っていいですよ」
「わかりました」
そう言うとジョンは車のドアを開けて降りようとする。
「最後にもうひとつ」
「次また同じ女性に会ったら取締局のオードリーまで連絡ください」
「・・・わかりました」
ジョンが車を降りると3台の高級車はその場をあとにする。
「一体何だったんだ」
そう思って振り返るとすぐ目の前に昨日リゾート施設で声をかけた女性が立っていた。
顔がぶつかりそうな距離だったため、ジョンは驚いて一歩さがる。
「わっ!」
「こんにちは」
「ちょっ、・・・へっ!?」
驚くジョンをよそにその女性は彼の手を取り、その場から離れた。
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