第17話
またまた玉座の間に呼び出されました。
ただし、今回は公式の謁見ということで、高貴な服装を着こなした貴族の方々が大勢集まっています。
ブブルル王国にいたときにも、謁見で公開処刑のようなことをされていたので緊張はしていません。
「此度、余は王都にて襲撃にあって危うく死の寸前まで追い込まれてしまった。だが、その現場にいたヴィレーナ殿が回復魔法を発動してくれたおかげで余の命は助かったのだ」
ある意味で公開処刑です。
国王陛下が私のほうに視線を向けながら喋っていたものですから、私に視線が集まってきました。
「光属性を使えるとは……。いったい、なにものなのだ」
「国王陛下の命を救ってくださるとは、国の救世主ですわ」
「褒美もそうとうなものになるだろうな」
「ヴィレーナ殿よ、前に出たまえ」
これは逃げられるような状況ではないですね。
覚悟を決めて、みんなに注目されながら中央の通路に出ます。
中央の赤いカーペットを歩いて国王陛下の前で片膝を立てて頭を下げました。
「命の恩人であるヴィレーナには伯爵の爵位を授与し、王宮に迎え入れたいと思っている」
「はははははい!?」
私はうっかりと顔をあげて国王陛下に目線を向けてしまいました。
ラノベ知識で覚えた貴族階級と同じだとしたらですが、伯爵といったら貴族の中でも上位に該当するでしょう……。
しかも国に仕えるという名誉を受けるわけです。
メビルス王国は居心地が良く、早くもずっとここで暮らしたいと思っていたので、大変嬉しいことではあります。
しかし、いきなり伯爵位などを与えてしまって良いのでしょうか……。
玉座の間にいる貴族たちからもどよめきの声が聞こえてきます。
「なにを驚いている? 皆のものも静まれ!」
国王陛下のひと声で一瞬にしてシーンとしました。
さすが、威厳が違います。
「先日の赤い兆候を見た者もおるだろう? ヴィレーナ殿の力によって中級種族以上のモンスター誕生を未然に防いでくれたのだ。これは余の命だけではない。王都に住む全員の命を救ってくれたと言っても過言ではない」
ふたたび貴族たちからの声があがります。
今度はどよめきではなく、歓喜のような反応で。
「しかも、本来王金貨二千枚を支払ってでもモンスター出現を阻止するための結界を依頼する予定だった。だが、彼女はほぼ無償で継続してくれると言ってくれたのだ。これがどういうことかわかるか? よって、異例中の異例ではあるが、上位貴族の称号を与える」
一部不満そうな顔をしている貴族がいましたが、ほとんどの人たちからは歓喜の声が聞こえてきました。
それにしても本当に良いのでしょうか。
どちらにせよ断れるような感じではないため、頷くしか選択肢はないような……。
まぁ今後はメビルス王国で生活していきたいと思っていたのでいただけるのならいただいてしまいましょうか。
「ヴィレーナよ、受け入れてくれるか?」
「はい……。ありがたく国に仕えさせていただきます」
この日、私は貴族になってしまい、女伯爵にまで成り上がってしまいました。
貴族の名に恥じないような生活を心がけなければですね。
国王陛下に一礼して、元の場所へ戻りました。
「さて、諸君にはもうひとつ重大な知らせがある」
国王陛下がしばらく沈黙し、覚悟をしたかのような表情をしてから深呼吸をしました。
「余は国王の座を引退する」
「「「「「「「「「「な!?」」」」」」」」」」
誰もが信じられないといった顔をしながらどよめきが起こりました。
「キーファウスよ、おまえに国王の座についてもらいたいと思っている」
「ちち……いえ、国王陛下。まだ引退するには早いかと思いますが」
「むろん、年齢的に体力的には、まだ現役としてやっていけるだろう。だが余よりもキーファウスが国王をやったほうが、この国を豊かに、素晴らしき国にしていけると思えたから引退することにした」
「し……しかし私は父上のようにはなれていないかと」
さすがのキーファウス殿下も、公式の場で『父上』と言ってしまうほど焦っているようです。
国王陛下は、頬を掻きながら笑みを浮かべました。
「これから実績を作れば良い。それに、おまえには頼れる味方もいるだろう」
なぜか国王陛下の視線は、私に向いてきます。
いやいやいやいや、私はモンスターの誕生を阻止する結界を作ることくらいしかできない女ですよ?
貴族の一員になってしまい言葉遣いや礼儀作法などどうしたら良いのか困ってるくらいですから。
国のことで頼れる見方というのはいささか違う気が……。
「まぁまだ十八歳のキーファウスが国王というのも重荷があるのだろう。と、予想していたから余はひとつおまえに試練を与える。それをクリアできたら、堂々と国王になってもらいたい。それくらいに難しい試練だ」
「……承知しました。全力で挑む所存であります」
いったいどんな試練を言い渡されるのでしょう……。
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