第12話

 私は光属性魔法が使えることがわかったので、とても愉快な気持ちで本を熟読しています。


 光属性の魔法は想像していた以上に便利魔法です。


 その中でも、対象者に見えない結界を展開し魔法の影響を無効化させる『シールド』


 異世界はモンスターがいますし、前世の国と比べても街中の治安が非常に悪いため、この魔法さえあれば私も一緒にいる人たちも安全になりそうです。


「ヴィレーナ様は魔力が規格外のようですからね。どんな魔法も使える気がしてしまいますね」

「私自身、どれくらい魔力があるのかもわからないからなぁ」


「王宮直属一番の魔導士でも、上級魔法を一発放てば全魔力量の半分は失うと聞いたことがあります」

「そうなんだぁ。そういえばその魔導士さんにはまだ挨拶してないや」

「いえ、しないほうが良いです」

「へ?」


「あの魔導士はロレレと言いまして、私たちよりも六つ年上の女性なのですが、陛下も手を焼くほどの身勝手ぶりでして……。私の恋人も奪おうとしているようで、しつこく彼に迫っているみたいです」

「うわぁ……。はちあわせないようにしたほうが良いんだね」

「はい。関わらないのが一番です」


 どこの国の王宮も大変なのだなぁと思いつつ、引き続き魔法関連の本をかたっぱしから読んでいき、魔法の種類に関しては全て読み終えました。

 残りは魔法の仕組みや属性の詳細など、魔力量に関してはまた明日読もうかなと思います。


「間違いなくヴィレーナ様は王宮直属魔導士よりも魔力量は上ですね。でも、王宮直属の魔導士になるためには最低でも三属性の適性が必要なのです……」

「いやいや、私は魔法に憧れていただけだし、魔導士にはならないからね?」

「もったいないっ!」


 元気になったチュリップはハキハキとしていて私に対しても積極的に話しかけてくれるようになりました。

 チュリップは私と同じ十六歳で、なんだか近しい友達ができたような気分になれていて嬉しいです。

 少しづつですが、私も前世の高校時代くらいまでの感覚に戻りつつあるような気がします。


「そうだ! せっかくですから、明日も外へ出かけてみませんか?」

「良いの?」

「王都の外まで行きましょうか。ヴィレーナ様のおかげで騎士団のころの力も戻りましたので、護衛も兼ねて出かけられます。出れば平原ですから、ヴィレーナ様の魔法適性も判別できますよ」

「行きたい!!」


 私はどうしていきなり光属性が使えるようになったのかは不明ですが、こうなってしまったら全属性試したい気持ちがいっぱいでした。

 この提案はものすごく嬉しかったのです。


 ♢


『炎よ放て、ファイアボール』

 ――ドガァァァァァァン!!

「ひぇぇぇ……」


 王都の外、平原にて。

 試しに自分の身体の二倍くらいの大きさはある岩に向かって炎属性魔法を試してみました。

 炎が岩に命中して大きな音が響いてから、溶けて消えてしまったのです。

 よし、炎属性も使える!

 チュリップが驚いています。


『水よ放て、ウォーターボール』

 ――ドガァァァァァァン!!

「ふぇぇぇ……」


 同じくらいの岩に向かって水属性魔法を試します。

 水の塊が岩に命中して、またも大きな音を立てながら岩が水圧で砕けました。

 よし、水魔法も使えた!


『土よ放て、アースボール』

 ――ドガァァァァァァン!!

「…………」

『空気よ我に従え、サイクロンナイフ』

 ――スパァァァァァァン!!

「……全属性!?」


 炎、水に続いて土属性魔法、空属性(くうぞくせい)魔法も使えるようです。

 すでにチュリップは口を大きく開けたまま放心状態でした。

 カイン騎士団長から聞いた話では、騎士団時代のチュリップは魔法面では国の中でも五本の指に入るほどの実力だったそうです。

 だからこそどうしてそんなに驚いているのかよくわかりませんでした。


「基礎魔法でそこまでの威力、全属性持ち、魔力量も規格外、そして聖女様……。間違いなく国、いえ、世界で一番の魔導士になれますよ」

「いやいや、ならないからね?」

「そうですか……」


「どうしてそんなに私を魔導士になってほしいって思うの?」

「いえ、申しわけございません。ヴィレーナ様の力であれば今の国の情勢も……おっと、これは機密情報ですのでお答えはできません。それにしてもヴィレーナ様にはひれ伏すしかありませんね」

「跪かなくて良いのに。私は偉い人じゃないからね」

「はぁ……。それだけのお力をお持ちでも謙虚で威張らない。あのお方も見習って欲しいものです……」


 チュリップはボソッと小声で呟いていたので、よく聞こえませんでした。


「まだ日暮れまで時間があります。残りの時間は昨日できなかった買い物にでも行きましょうか?」

「うん! 行きたいっ!」


 馬車に乗り、再び王都内へ戻りまして、色々な店に向かいます。

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