エピローグ


 僕は騎士を辞めた。王都で手に入れたものは全て捨てて、村に戻ってきた。村人たちは突然帰省した僕に不思議そうな表情で僕を見る。牧師さんが僕を見つけて、「休暇でもとったのかい?」と話しかけるが、僕は答えなかった。

 家に戻ると、じいさんと妹と奴隷がいた。じいさんは何も言わずに僕をじっと見る。

「王都の生活は少し疲れたよ。お金は沢山稼いだから、しばらくここで野菜を育てる」

 僕の口が勝手に動いた。その言葉が心の底から僕が話したかったことかわからない。

 庭に出てじいさんの仕事を手伝っているうちに、陽が沈んだ。家に戻ると、奴隷が晩飯を用意して待っていた。僕は今までかまってこなかった妹を世話してやろうと思い、ご飯を妹に食べさせようとした。妹の口にスプーンを差し出し、優しく微笑む。妹は僕を拒絶するように奇声を上げて、机の上にある晩飯の盛り付けられたプレートをひっくり返して、中身を床にぶちまけた。僕はその様子を目の前に微笑み続けた。


 やがて半月がたった頃、王都の騎士連中が僕の家にやってきた。かつて僕がきていた鎧と全く同じものを着ていたが、誰一人見たことのない顔が並んでいた。

「君が前の国王に仕えていたアルクかね?」

「そうですけど……前の国王ということは代替わりされたのですか?」

「前の国王は汚職で投獄された。今は弟君が王位についている。君は前の国王と手を組んで汚職を共謀した嫌疑がかけられている。私たちについてきなさい」

 冷たい金属音と共に、手錠がかけられる。手首が圧迫されて、手が青黒くなった。逃げられないように胴の部分を縄で縛られ、騎士どもに小突かれて歩き始める。


空を見上げると、太陽がちょうど真上に昇り、眩しくて目を閉じた。


完。

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禁じられた聖杯 乱狂 麩羅怒(ランクル プラド) @Saitoh_nagisa

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