第2話

おぉ一番乗り。

な訳無かった。

後ろの出やすいとこに陣を構える。


あぁ…

そこ…

「俺の特等席なんですけど」

「決まってないわ。」

えーそーなんすけどー。

「ちょっと抜ける用があって!

そこ!

丁度いいんですよー。」

「私が先に来て座ってた。」

「知ってますけど。

あんた、か」

「か?」

稼いでるんでしょって言いそうになった。

本当かどうか分からない話を鵜吞みにして。

稼いでるから、どうって言うんだ。

こいつが稼いでても稼いでなくとも、

俺がどかして座る理由になんない。


長椅子の中途半端な所に座ると出らんなくなるから、

あいつと反対側の通路側に座る。

ドアは、まぁそこそこ遠い。

しゃーない。

「かっ何?」

「ちょっ寄ってくんな。」

「か?何なの?」

「あっち座っとけって。

誰か座っちゃうから。

俺断ったんなら最後まで死守せーよ。」

「気になるでしょ。」

言えないの!

「何言うか忘れた。」

「嘘」

「まじ」

「嘘」

「本当だからっ

あっち俺が座るからなっ

…って!

ほら見ろよ!!」

あーあ。

「俺今日仕事で…

この間も時間合わせらんなくて…

今日こそはなのに。」

「なんだ、それ言ってくれたら良かったのに。」

初対面で…

そんな内っ側晒せないでしょ。

「近くで見ると綺麗な顔立ちしてるね。

顔で勝ち取った気分はどう?」

「え?」

何で、こいつにいきなり、こんな事言われんきゃなんねーの?

「顔も才能の一つだと思ってるよ。

貴女の口の悪さは才能なのか?」

綺麗な顔立ちは、そっちもそうだろ。

でも、それを言えなくさせたのは、お前だ。

うふふと笑った。

今まで嫌味を言ってた人と同じ人なのかと思う位だった。

「口にアテレコしてるみたいだね。

褒めてる。」

補足したけど。

ふと視線を外した。

「あぁ出たいの?

悪いけど、これ以上動けないから。

背もたれ越えて行けよ。

もしくは、ここ通って行く?」

机と膝の間を指し示す。

冗談。

冗談のつもりだった。

躊躇は一切なく膝に座った。

「面白くないよ。」

そう一言残した。

むにゅっとして、髪が頬に当たる。

何だか動けなくて、動いた髪だけを視線で追った。

そのまま、香りが線を描いて、

通路挟んだ長椅子に続いた。


教授が点呼を始めて、

惑わしたあいつは一番に仕事がありますと宣言して室を出てった。

ヒールの音がして、俺あれで踏まれなくて良かったなんて

ただ思うだけだった。

俺は今か今かと点呼の順番じとっと待って、

こっそり教室を後にする。

なんなんだ全くもうなんなんだ。





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