見た目だけ美少女な異世界底辺弱者男性共の会話劇

四図○

第1話「寝取られ貢ぎマゾという恐怖」

夕方の酒屋、そこで二人の冒険者がジョッキになみなみと注がれた液体を豪快に飲み干す。


「かーっ! 仕事の後の一杯は最高だね!生きてるって感じがする!」

「ジンジャエールで『いかにも私飲んでます感』だすなよ」

「いいのいいのこういうのは雰囲気雰囲気」

「さよけ」


片方は赤髪ロングの剣士、もう片方は青髪ショートヘアの剣士でどちらも17歳くらいの見た目の女である。

二人は同じギルドに所属している同僚であり、こうして居酒屋や食堂などで一緒に飲むことも多い間柄であった。

コンビを組んでからは、クエストを終えた後この町のちょっと大きい酒場でまるでおっさんのように酒と飯をかっ食らいながらまるでおっさんのような会話をするのが日課になっていた


「そういやこないだ街歩いてたらさ、なんと俺寝取られの現場見ちまったのよ」


赤髪が唐突にそんなことを言い出す、青髪はふむ、と軽くうなずいてから言葉を続ける


「へえ……続けてみ?」

「おう、アレは夕方ぐらいだったかな……」



……あれは俺がいつも通り街でテキトーに本屋でブラついてた時でな

金髪でツーブロックで浅黒い……まぁ「いかにも」って感じの男と、これまた金髪でケバケバしい化粧した女がいたわけよ

まぁいつも通り「リア充爆発しろ」「頭悪そうなのに本屋っすかプっw」「財布持ってません近づかないで下さい僕は空気です」って思いながら横切ろうとしたらさ、会話が聞こえてきたの


「おめーの旦那次どうしてやろっか♡」


ってさ、ここで俺ピーンときちゃった訳よ、お、コレはひょっとするか?って、すると女の方が


「そうだね~、あいつ超大手の動画編集スタジオで就職先だけはいいからもっと毟り取れるよ」


とか嬉しそうに言ってたわけよ、この時点で俺はもう確信しててな あ~これはヤッてるわって、んでバレないように後ろからこっそり本選ぶフリして盗聴の魔法使って聞き耳立ててたのよ


「それにしてもバカな旦那だよな、おめーが俺と散々ヤリまくってる事知っててそれでも別れねーもんな」

「だよね~♡まぁあーしが可愛すぎるから仕方ないんだけど♥あんな冴えない男がこれから先あーしみたいないい女と結婚できる可能性なんて0っしょwww」

「ひっでぇ事言うなお前ぇw最初の頃はあーんなにまー君の方がいいって反抗してきてたのによwほらこれ昔のお前の写真w」

「ちょ、やめてよ昔の恥ずかしい思い出掘り起こすの!!」


写真が気になって視覚強化の魔法をそっと唱えてアイツのスマホ覗いてみたんよ

ほほう女の方は昔は髪が黒くて肌も白かったみてえだな既に快楽堕ち済み、と……。しかもまー君……旦那バレのイベントまで済ませてるとかすげえなリアルであるんだって思ったよ。

ん?「そのまー君とやらはそこまで言われてるのにどうして別れていないのか?」って?それがまた凄くてなぁ……。


「でもいいの?アンタ仕事の量減らしちゃって今日も仕事あったんじゃないの?」

「いいんだよ、あの旦那が……あー、『 寝 取 ら れ マ ゾ 』?っていうのに目覚めて俺らのヤリ動画見てシコって、しかも金まで貢いでくれるんだから仕事なんてバカバカしくてやってらんねーよw」

「言えてるwあーし達の為に頑張って働いてくれてると思うとほんと愛おしいよね~♪」

「まったくだ、さて、今日は何の写真送ってやろうかwアイツが喜びそうなえっぐい奴にしようぜw」

「ちょっとぉ♡そのえっぐい奴やられんのあーしなんだけどー♡」

「それが好きな癖によぉ♡ほんと飽きねぇよお前って女は♡」

「ふふ、終わったらまたショッピング行こ♡行きたい下着のお店あるんだ~、週末はそれ付けて動画にとってアイツに見せつけようよ♡」

「いいぜいいぜ、金ならたんまりあるからよ♡それにしてもメールで済ませりゃいいものをUSBに録って直接渡して欲しいって何考えてんだろうな」

「ネットもまともに扱えない奴なのよきっと」

「うけるw」



「とまぁそれでそのアベックは街の喧騒に消えて行った訳だ、いやー、怖い人間っているもんなんだな」


赤髪の女剣士は肉を頬張りながら話を終える。

青髪の女剣士はジョッキに残っていたエールを飲み干しながら口を開く


「街中でそんな会話大声で出来るってのも中々すげえなそいつら……でも確かに怖いな、一度は愛した夫だったろうに、本人の見えてない前とはいえそこまで口汚く罵れるもんかね」

「ん?」

「え?」


赤髪は少し不思議そうな顔をして「ああいやいや」と手をひらひらさせる


「俺が怖いつったのはその寝取られマゾのまー君の方だよ」

「…………え?」


青髪の方は怪訝な表情をしながら聞き返す


「考えてもみろよ、アベック達は気付いてないし、多分まー君本人もその気はないかもしれないけど、完全にこのアベックまー君に支配されてんだよ」

「……ああ?どういうこったよ」


赤髪はニヤリと笑うとポテトを一個拾い上げる


「そうだな……まずあいつ等好き合ってるカップルだったけど、話題の中心はずっと『まー君』だっただろ?」

「まぁ……そういえばそうだな」

「その上『まー君』の為に毎日メールに毎週セックスして金貰って……、本来好きな女との快楽を楽しむためのセックスが寝取られマゾの旦那の為の仕事にしちまってんだぜ?俺だったら嫌だね、童貞だけど」

「まぁでもそんな生活でも飽きたらそれこそまー君捨てて終わりじゃねーの?」

「チャラ男の方仕事辞めてんのに?」

「あ~……」

「女も働いてる様子は無い、しかし贅沢する程度の金は貰っている……分かるか?アイツら『まー君』に貢がせてるつもりで財布の紐握られちまってんだよ」

「いやいや、でも流石に本人達もそれじゃまずいって事にいつかは気付いて、必死に就活したら終わるだろ?」

「まぁ実際早い段階でそうしちまえば終わりの話だったんだろうけど、目先の金に目が眩んで仕事辞めちまうような奴だ、よほどの事がねえ限りその現実から目を逸らすと見たね」


赤髪はポテトをクルクル回しながらなおも続ける


「それに離婚してねえのと動画と写真を毎日のように送る、コレも悪手だわな、わざわざ不倫の証拠を残す行為だぜ?まー君がその気になったら速攻で慰謝料請求されるぜ?」

「でもまー君も同意の上だろ?裁判所が相手にするか?」

「それを証明するものが無きゃそれこそ裁判所は相手にしねーと思う、『あの男は寝取られマゾで毎日動画を取るよう要求してきたんです!』なーんて主張よほどエロに造士が深い裁判長でねーかぎり鼻で笑われて終わりだろ」

「なるほど……USBでってのもそれが理由か、メールとかだと例えば「今週の動画です」「納品しました」なんて文面がネット上に残っちまう、USBを直接ならそういうポカもない」

「ま、どこに他人の目があるか分からん、誰かの証言で簡単にひっくり返るし、あくまでもコレはまー君を悪魔化しただけのただの推理だよ」


気付けば目の前の料理は全て平らげてしまっていた、最後に残った枝豆をつまみながら赤髪は青髪を見る。


「以上が事の顛末だ、面白かったか?」

「まぁ中々面白かったよ、どこまで行っても推理なのが残念だが」

「まー君と直接話してみてえもんだな……さーて飯も酒も終わったしそろそろ帰るかな、面白い話したんだから勘定よろしくぅ」

「バカいってんじゃねえ手前も払え」

「ちっ」


赤髪と青髪は会計を済ませると酒場から出てきた、辺りはすっかり真っ暗だ


「そういやお前、明日休みだっけ?」

「そうだけど、なんかあんの?」

「いや、俺も明日は休みだから久々におめーの家でオールでビデオ鑑賞でもしねぇか?」

「まーた始まった、別にいいよ、じゃあビデオ屋行くか」


2人はまだアルコールが残って赤く染まった顔で裏路地のビデオ店にやってきた


「よーし、アニメにするかアメコミ映画にするかそれともマイナー映画にするか敢えてクソを覚悟でサメ映画でも……」

「ホラーだけは勘弁しろよ?」


何を借りていくか物色している最中、2人に声がかかった、スキンヘッドのいかつい男だった


「おーおめーら来たか♡」

「なんだ店長随分と機嫌よさそうじゃねえか、なんかいい裏ビデオでも入ったのか?」

「おう!」


「貞淑だった人妻がチャラ男と不倫して調教されてメス豚ギャル堕ちしたってのが入っててよ!!」


「……タイムリーだなおい」

「ほんと……今日は寝取らればっかだな」


2人は呆れるが今夜のビデオはコレに決定したようだ。外れだった時に備えて有名ロボットアニメ1クール分借りて行った


「じゃあ借りてくぜー」

「毎度ありぃ~♡」


帰り道、青髪がふと言葉を発する


「ああそうだ、『まー君』の狙いだがもう一つ考えられるな、てか今思いついたんだけど」

「ああ俺も思いついた……言ってみ?」

「『まー君』は大手の動画編集者……エロ動画を編集して動画に加工、ネットにアップして大儲け&リベンジポルノ……てこともあり得るよな」

「もしくは裏ビデオにして流通させる……とかな?」

「……」

「……」


赤髪と青髪は袋に入っている裏ビデオを一度見下ろし、それから互いに顔を見合わせた、そして……


「……っぷ」

「……ふふ」

「あーーはっはっはっはっは!」

「だーーはっはっはっはっは!!」


そして2人して大声で腹を抱えて笑った。しばらくそうしてひとしきり笑った後冷静な顔になり


「……ま、どこまで行っても推測だけどな」

「折角だ、今日はパソコンプロジェクタに繋いで5.1chでエロ動画見まくろう」

「賛成」

「恋愛なんてするもんじゃねーな……まぁそもそも出来ねーんだけど」

「同感、おめーといた方が楽だわ……まぁそもそも出来ねーんだけど」


「「あっはっは」」


2人のモテない男……ではなく女剣士達はそう言って夜の街を歩いて行った。

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