第21話



そしてカイは式場を飛び出し走りだします。



今までのことが走馬灯のように頭の中を駆け巡り、自分を責め続けながらカイは無我夢中で走りました。



タクシーを捕まえようと道路脇に出てもタクシーは止まりません。



カイは蝶ネクタイを緩め革靴の紐を締め直してテリの元へ走りだしました。



ハァハァハァ…



汗だくになりながら肩で息をするカイはあまりの苦しさから胸を押さえ、また走ります。



テリを忘れてしまったこと、そしてテリを傷つけてしまったことへの後悔を繰り返しながら、まるで自分への罰だと言わんばかりにカイは足を走らせるのでした。



病院に着く頃にはカイのシャツは汗で張り付き、フラフラと足がフラつき膝がガクガクとしながら病院内に入って行きます。



受付に向かったカイをみた周りの人達は驚いた目や特殊な目を向けてコソコソと後ろ指を指します。



今のカイにはそんな人達のことなんて見えません。



カイは息が止まりそうになるのを必死で呼吸しながらテリの病室に向かいました。



そして、テリの病室の扉の前に立つカイがドアノブに手を掛けた瞬間…



中から慌ただしい声がカイの耳に入りカイは目の色を変えて勢いよく扉を開けました。



すると、そこには…



カイが絶望する光景が広がっていたのです。



沢山の人に囲まれている中、テリは真っ白なベッドの上で横たわっています。



K「テリ…」


「早くしろ!!離れて!!」



バチン!!



大きな機械音が病室内に響くとテリの体は波打つように跳ね上がります。



ピーーーーーーーーーー



残酷に鳴り響く音がカイの脳内に響き渡りカイはただ、呆然と立ち尽くすのです。



「1!2!3!4!5!」


「先生準備できました!!」


「離れて!!」


バチンッ!!


ピーーーーーーーーーーーーー



カイの目の前にいるテリはまるで人形になってしまったかのように動きません。



すると、処置をしていた医者がテリの目に光を左右に揺らしながら当て何かを確認します。



そして、チラッと腕時計を見て言いました。



「12時45分……ご………」


K「うるせぇ!!!!」



カイは医者の言葉を遮るように叫び周りの人達を押し除け、ベッドの上で横たわるテリの元に駆け寄りました。



カイがテリの頭を撫でようとしますが病室にいたユキがカイの腕を止めようとします。



K「テリ!!テリ!!俺…来たよ…全部思い出したよ…」


Y「カイ…」



すると、カイはユキのその手を払い除け…



目を閉じたままのテリの顔に近づき頬を何度も何度も撫でるのです。



K「テリ頼むよ…俺が悪かった…頼むから…目…開けてくれよ…」



カイは声を震わせテリに頬を寄せながら涙します。



ぽろぽろと流れ落ちる涙はカイの頬を伝いテリのまぶたにポトっ…ポトっ…と落ちました。



K「テリ!頼むから…!目…開けろって!!」



カイがそう泣き叫びテリを激しく揺さぶるとカイは何を思ったのかテリの胸に思いっきり拳を振り下ろしたのです。


 


ドスッ…!!という鈍い音が病室に響き渡りカイはテリを抱きしめるように声をあげて涙を流します。



Y「カイ……」



ユキはカイにかける言葉が見つからずただ見つめる事しか出来ませんでした。



と…その時…!!



ピッ……ピッ……ピッ…ピッ…ピッ…



ユキはその音に気づき心電図を見ると真っ直ぐだった光が山を作るようにして動いていました。



Y「カイ!!見て!!」



カイはそれに気づかずテリを抱きしめながら嘆き悲しみます。



Y「カイ!!!!」



ユキはカイの腕を掴みそう叫ぶとカイはピタッと固まり動き出した心電図を見つめました。



医者がその隙にテリの目にライトを当てて確認し聴診器を胸に当てて言います。



「…これは…奇跡ですね…」



すると、テリはゆっくりとまぶたを開き少し虚な目をしてカイを見つめるのです。



T「カイ…?ここはもう……天国…なの…?」


K「なに言ってんだよ…俺を置いていくなんて…許さない。」


T「カイ…?私…」


K「俺たち今世で結ばれるんだろ…!?来世まで待てるわけないだろ!?」



カイがそういうとテリはぽろぽろと涙を流し声を上げて泣きました。



T「カイ…ごめん……会いたかったよ…カイ…」


K「一人で逝くなんて絶対に許さないから…離れ離れは前世だけで十分なんだよ……。」



カイはテリを優しく抱きしめるとテリは声を上げて涙を流しました。



つづく

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