第23話


ユウに怯えながら私は謝る。


*「……ごめんなさい。」


M「で?ジュイはねぇさんとキスしたらどうなったんだよ?」


もうこんなの公開処刑すぎる。


マネージャーとタレトンが体の関係を持ってしまうだなんてタブーで、私はその返答に困り下を向くとジュイがおもむろに口を開いた。


J「ヤりたくなって性欲が我慢出来ない。」


ジュイの直接的な言葉にメンバー達は呆れ返り頭を抱えるが、その中でも私が1番、ジュイのその表現に頭を抱え天を仰いでいたのかもしれない。


Y「それってお前がただ単にヤりたいだけじゃねぇのかよ?」


確かにジュイはまだ、20代半ばで真っ盛りな年齢だろう。


おまけに今や世界を代表するアーティストであの輝く瞳で世界中のみんなを虜にする。


この世界にはジュイに相手をして欲しくてたまらない女が山ほどいる。


また、私の頭の中で女が沢山いるウチの1人という言葉が思い浮かびまた私の心がグサッと抉れた。


J「俺はミラ以外の女には興味はないし。」


確か散々、私の身体だけ弄んで私を捨てた元カレもよくそんな事を言っていた。


過去の嫌な記憶が鮮明に蘇り胸が痛くなるのを認めたくない私は少し強気にジュイに言った。


*「よく言うよ。昨日、他の女で発散してきたくせに。」


私がそう言うとジュイはすぐさま私の顔を見て反応する。


J「はぁ!?誰が!?」


*「ジュイが!!」


J「はぁ?俺がんな事すわけないじゃん!?昨日は1人でジムに行って発散してきたんだよ!?トレーニングジム!!」


ジュイの口から出たトレーニングジムというまさかの言葉に私は戸惑い、慌ててトウジを見るとトウジは笑いながら目を逸らした。


*「え…ジム?ちょっとトウジ!!どういう事よ!!」


T「俺は別に女となんてひと言も言ってねぇし〜ジュイは発散しに行ったよって言っただけだし。」


トウジは悪びれる様子もなく口笛を吹く真似をして私を揶揄い楽しんでいた。


すると、目の前にいるメンバーは大きなため息と一緒に呆れた顔をした。


N「それで?その惚れ薬の解毒剤はないの?」


リーダーでもあるナオが話を戻し落ち着いた声でそう私に問いかけた。


*「ない。」


N「そもそもなんでそんな薬もらったの?」


*「だって結婚…したかったんだもん。みんなが揶揄うし…」


N「揶揄ったのは俺たちが悪かった。でも、そんな物で人の気持ちを手に入れたってなんの意味もないじゃん?なんでそれに気づかないんだよ。」


自分よりも年下のナオにそう言われて情けない気持ちになるが、正直BARで貰ったあの時は自分にも友達がしてるようなキラキラとした恋愛ができるのかなと心のどこかで期待してる自分もいた。


*「もらっただけで使うつもりなんて無かったもん…でも…迷惑かけてごめんなさい。」


N「はぁ…。とりあえず、この話は他のスタッフには伝えず俺たちの中だけでなんとかしよう。ねぇさんのジュイへの気持ちが本当なら尚更…あとさ?ソラに聞いたけどトウジ?お前いつの間に彼女…できたんだよ?本当なのか?」


いつの間にかナオにまでトウジの小さな嘘が回っていて、そうナオに問いかけられているトウジの顔をチラッとみるとトウジの目は少し辛そうな目をしていた。


T「…今はその話したくない。」


トウジはそう言うと切ない顔をして下を向く。


N「なんだそれ…。じゃ、とりあえずジュイとイチさんはねぇさんに接近禁止ね。ジュイももう、ねぇさんと付き合ってるとか嘘つかなくていいし、惚れ薬云々関係なく2人が本気ならこれからの事、ちゃんと考えよう。とりあえず、2人はその惚れ薬効果がなくなるまでは大人しくしておくこと!」


*「ナオ…ほんとごめん…」


私は面倒ばかりをかけてしまっているナオに再度謝ると、ナオはニコッと笑ったかと思ったら一瞬で真顔になり私に言った。


N「2人が元に戻らなかったら…ねぇさんマジで許さないからね?」


物凄い威圧感のあるナオの表情を見て震えがあった私は慌てて首を縦に振り立ち上がる。


*「ほ…本当にご迷惑をおかけしてごめんなさい…そろそろ私は帰ります…」


そう言葉を残しキッチンに置いてある荷物を慌てて取り、私はみんなに頭を下げて逃げるように玄関に向かうと私の後をイチが追うようにしてやって来た。


i「ねぇさん…送るよ。」


*「いやいやいや、担当タレントに送ってもらうマネジャーがどこにいるの?」


i「話がある…だからエレベーターまで…送らせて?」


イチのその声色は明らかにいつもとは違って私はそれ以上断ることが出来なかった。


*「…わかった。ありがとう…」


玄関に向かい私が靴を履いてるいると、一緒にいる私たちに気づいたナオが難しい顔をして私たちを睨んでいる。


N「ついさっき接近禁止って言ったばかりなのに……」


i「すぐ戻るから…」


そう言ってイチはナオの視線から逃れるように少し私の背中を押して玄関から廊下にでた。


つづく

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