第8話 反撃
あちらもこちらも王子の発言にクラクラしていて限界そうだ。私も正直ここまで馬鹿で愚かだと思わなかった。
「わざわざ戦争をしないのはそのとおりですね」
「はは! 哀れな姫だな!」
「基本的に戦争になる前に相手が降伏するので。こちらの国もそうでしょう」
王が少し震えながらゆっくりと頷いた。大人と生まれたての赤ちゃんくらい戦力に差があるのだ。祖国が本気を出すだけ無駄だし、相手も挑んでどうにかなるとは思っていない。
「国力に差がありすぎるんですよ。この国、うちの国のいち領地と同じくらいですもの」
まあ大き目の領地ではあるけど。だが、とても美しい国だ。海も山もあり、食べ物も美味しく、四季の移ろいも美しい。そんなことを昔教えてくれた人がいた。
「それから、うちの国のメリットなんてそんなにないんですよ。強いていうならメリットがないことがメリットというか」
こちらにメリット、というか弱味がなければ私が嫁ぎ先のこの国でデカい顔出来るからだ。そもそもの立場は圧倒的にこちらが強いのだから。この小国はそれでも私にきて欲しがったのは、今の世の中、大国の後ろ盾がないと国して生き残れるか不安が残るからだった。
この国の王は私のことをよく調べていて、しっかりと両親に愛されていることがわかっていた。だからこそ私と縁を結びたがった。
「何を言っている! 貴様の国が我が国の隣国から多くの鉱石を輸入していることを知らないとでも!? この国を通れなくしてやろうか!?」
戦争の話が不発で焦ったのか、唾を撒き散らして怒鳴りつけてきた。
「まあこの国を通るルートが今のところ1番いいのは確かですけど、ダメなら他にいくらでもあります」
最短ルートがこの国を通る方法なだけだ。通せんぼされたくらいでうちの国が困ってアタフタすると思わないで欲しい。
「そんなこともわからないなんて……しっかり勉学には励まれたと聞いていましたが」
「そんなもの! 家臣たちがわかっていればいいじゃないか! 判断は俺がくだすのだから同じだ!」
あれ~勉強は頑張ってたって聞いてたのにな。なんか……中途半端だな……。
「その判断を適切に、よりよくする為に勉強するのですよ」
「うるさい! 貴様に言われることではない!」
いよいよこの愚か者と会話するのも馬鹿らしくなってきた。
私は大きくため息をつく。
「殿下、私実家に帰らせていただきますわ」
「なんだ! これだけの騒ぎを起こしておいて結局逃げるのか!」
(騒ぎを起こしたのはテメェらだろうが!)
なぜか勝ち誇った顔のレオンを見て、呆れすぎてせっかく治っていたイライラが復活してきた。
「陛下、では離婚ということで。4日間もの長い間お世話になりました」
「まっ! 待ってくれ! いや、お待ちください! 今しばらく!」
王は今にも泣き出さんばかりに縋り付いてくる。王妃も他の家臣達も同じだ。
そんなことされたら、私が悪いことしてるみたいじゃないか。
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