第40話 関わらないで逃げる...
「あれ、緑川先生!」
「おおっ黒木か?! 急にお城から居なくなってどうしたんだ、心配したんだぞ」
まぁ、緑川先生なら一応は心配してくれるな。
「能力が低いからまぁ、やんわりと出て行って欲しい。そう言われたから出て行った…それだけだよ」
「そうか?生活は出来ているのか?」
「どうにか、冒険者で食えてますよ。他の皆はどうしていますか?」
「殆どの者は、後ろ盾に貴族がついて、それぞれの領地に引き取られて行ったよ! あの分だとぞんざいに扱われる感じはしなかったから放置した。流石に元担任でもこれ位が限界だな!」
確かに魔族が居る世界じゃ、王都だけじゃ無くて地方だって守る必要があるよな。
そう考えたら当たりまえか。
「それじゃ、王都に残っているのは?」
「俺と大樹達勇者パーティだけだな。ちなみに、途中で平城に大河が手を出そうとして揉めて平城は公爵家にお世話になる事になった…残りの勇者パーティは後1か月訓練を延長して、その後は此処王都を中心に力をつけ活動するらしい」
大樹達は性格が悪いから逃げた方が無難だな。
特に大河は凄く女癖が悪い。
「そうですか?それで先生は何故一人なんですか?」
「仲の良い生徒達2~3人でパーティを組んでいったんだ、担任と組みたい奴がいると思うか?」
「確かにそうですね」
「まあな」
「それで、先生はどうするんですか?」
「異世界人は全員、それなりに能力は高いが…俺は黒木程じゃないがその中では能力は低い方だ…だから、此処で暫くは冒険者暮らしだ、中年おじさんは貴族受けも悪く後ろ盾も出来なかったからな…それじゃ…今度は飯でも食おう」
「そうですね…」
担任の緑川先生は良い先生ではあった。
だが、それはあくまで『先生』としてだ。
優しい先生だったが、生活に困った俺に金を貸してくれた事も、飯を奢ってくれた事もない。
ただ、虐めなどが無いように配慮してくれたし、学校の中の事は良くしてくれた。
先生としては完璧だが…それ以下でもそれ以上でも無い。
本当に人として俺を心配していたなら、もっと早く俺を探していた筈だからな。
此処で別れてもう会う事は無いだろう。
「それじゃぁな」
「はい」
それを態々言う事は無い。
もし、会ったら食事位は構わないが…俺はこの王都を出るつもりだ。
大樹達勇者パーティが王都で暮らす前に俺は逃げる。
そして、その後は『知らない』
大樹達は碌な者じゃない。
大樹は…正直言えばそこそこ良い奴だ。
だが、騙されやすい。
大河は女癖が悪い。
聖人は、性格が暗く陰湿だ。
塔子はお嬢様だが、性格は悪く、悪役令嬢みたいな奴だ。
大樹は良い奴だが、この三人と幼馴染で仲が良く、この三人が絡むと人が変わり公平な判断が出来なくなる。
関わらないに越した事はない。
まさに朱に交われば赤くなる。
警察も居ないし、兵士も相手が勇者じゃきっと手を出せない気がする。
だから…逃げる。
そして、もう同級生の事は気にしない。
ただ、同じ国で同じ高校に通っていただけの顔見知りがどうなろうと構わない。
俺が守る相手はミウだけ…後は知らない。
自分を助けなかった人間等…死のうが生きようが関係ない。
此処は異世界…そして魔族が居る。
全員が死なないとは言えない。
甘い考えでは生きていけない。
それは、ミウの生き方を見て知った事だ。
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