第33話 ミウSIDE 幸せ


「あのミウは本当に何もしないで良いの?」


「うん…傍に居てくれるだけで幸せだから」


そう言って理人は狩りに出かけていった。


最初、ミウも行く…そう言ったんだけど…


「ミウに危ない事なんてさせられないから…」とか「ミウが怪我したら困るから」って真顔で言うんだもん。


『ついて行く』って言えなくなっちゃったよ。


それだけでも嬉しいのに…


「はい、これ」


いきなり銀貨5枚(約5万円)を渡されたんだよ…


「これなにかな?」


「なにってお小遣いだけど? 美味しい物を食べたり、好きな物を買うと良いよ! あとは女の子の必要な物とか良く解らないから、必要な物も此処から買って」


「あの…ミウは奴隷じゃ無いの?」


「指輪あげたじゃない?」


「あっ…うん、そうだね」


婚約者…将来はお嫁さんなのかも知れないけど…それにしても凄く優しいよね。


普通、余程仲良く無ければ結婚したって、こんな風にしてくれない。


偶に街で凄く優しい旦那さんと仲良くしている奥さんを見て羨ましいと思っていたけど…いざミウがそうなるとどうして良いか困る。


「それじゃ行ってきます」


「行ってらっしゃい…あの…」


「うん?!どうした?」


「あの…やっぱりミウも…行く」


「大丈夫だから、ミウはゆっくりしていて良いんだよ! 家で迎えて貰えるだけで凄く嬉しいから」


「そう…解った」


う~ん困った。


『ミウは働かないで良いよ』


そう言われていたけど…いざこうなると驚いちゃうよ。


何でも専業主婦とか言って、理人の世界ではこういう夫婦も多いんだって。


働かないでただ『旦那に尽くす』だけで養って貰える。


そんな夢みたいな生活があるって言っていたけど…


まさか、ミウにそんな日が来るなんて思わなかった。


「それじゃ行ってくるね」


「行ってらっしゃい」


笑顔で理人を送り出してミウはそっと懐にナイフを忍ばせた。


◆◆◆


この幸せを守るためにはあの3人を殺さないといけない。


ミウは盗賊だったらから知っている。


ああいう人間は金蔓を絶対に逃がさないのを知っている。


盗賊の親方みたいな目していたもん。


ミウは死んでも構わない…だけど、理人を金蔓にはさせない。


ミウは死んじゃうかも知れない…だけど、あの三人は…必ず。


殺さないと。



そう決意して、兵舎に様子を見に行ったの…そうしたら凄く慌ただしかったよ。


「くそう、何であんな場所で水死しているんだよ」


「いきなり3人は痛い…今日の勤務はどうするんだよ」


「だけど、此奴らだってちゃんとした兵士だぞ、全員が泳げるのに水死は可笑しいだろう」


「沢山の目撃者がいるんだ…酔っぱらっていたからだろう」


凄く慌ただしかったから暫く見ていたら…死体が3つ毛布を掛けられていた。


3人、まさか?


そう思い、暫く見ていたんだけど…死んでいたのは昨日の兵士達だった。


理人…


多分、理人が殺してくれたんだ…


そうとしか考えられないよ。


お金を用意している間に『こんなに都合よく死ぬ』なんて他には考えられないよね。


きっと理人が殺したんだ。


凄いなぁ~


普通は、殺人なんてそう思うかも知れないけど、ミウは元盗賊だから...


『自分の為に』そう考えると嬉しくて仕方なくなる...


なんでミウ、こんなに愛されているんだろう…


ミウの人生でこんなにミウを好きになってくれた人なんて居なかったよ…


理人のする事は全部ミウの為…本当にミウはどうしたら良いのかな?


いっそ、押し倒してくれれば良いのに…


それなのに、ミウから言っても避けられるし…


大体、あれで好きにならない訳ない...愛さないわけないよね。


とは言え…これでミウと理人の邪魔な存在は居なくなったよ。


本当に自由になった。


どうしよう…なにか理人が喜ぶ事ないかな…


買い物っと…


折角だから、お揃いのカップやスプーンを買って…うん、全部お揃いにしちゃおう。


あとは…どうしようかな?


何か理人が喜んでくれそうな物が買えるお店ないかな?


『大人の下着屋』


何かな?


凄くピンクな建物があるし…


「いらっしゃいませ…なんだガキじゃない?3年早いわよ」


なに此処、スケスケのエッチな下着ばかりあるよ。


「ここ、なんですか?」


「子供にはまだ早いわ…此処は殿方を悩殺したい女性が来る店、ランジェリーショップよ」


「悩殺…」


これだよ! こう言うのを着たら理人もきっと、その気になるかも知れない!


「そうよ、悩殺よ、解ったら…」


「お姉さん、悩殺出来る下着があるなら下さい!」


「あら、嫌だお客さんだったの…そうね紫、黒、赤も捨てがたいけど、貴方ならピンクのスケスケ穴あきが良いわ…こんなのどうかな?」


どうかなって…なにかな…これスケスケで見えているだけじゃ無くて穴が開いていて…下着の意味ないよね。


「だけど、穴があいていて」


「それがいいんじゃない? これなら脱がないでも出来るから」


「出来る?」


「そう出来るわ」


そういう穴なんだ…凄いな…これ。


それじゃ、一式下さい。


「ありがとうございます」


これならきっと理人も…更にメロメロになるよね。






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