第31話 兵士SIDE 後悔
「しかし、儲かったな」
「ああっ、あのガキ盗賊のおかげで良い小遣い稼ぎになったな」
「俺は腹をやられたんだ、トコトン搾り取らなくちゃ割はあわねーよ…まさか明後日1回で終わりじゃねーよな」
俺達は良い金蔓を見つけたので酒場で祝杯をあげていた。
「当たり前だろう? 良い金蔓が出来たんだ、引っ張れるだけ金を引っ張ってやらねーとな」
「そうそう、金が無くなったら因縁つけて殺しちまえば良いんだ…そうしたら『主人が居なくなった状態』になるから、どうとでもなる! 地獄を見せてから殺せば良い」
「俺は彼奴のせいで、死にかけたんだ、それ位じゃないとな…いっそうの事手足へし折ってゴブリンの巣にでも放り込むか?」
「サルダ―ト…それが妻子ある男の考える事か?」
「そういうカバルやミレスだって、家族持ちじゃねーか?」
「まぁな、だが所詮は他人のガキだぜ」
「薄汚い盗賊のメスガキ…俺達は兵士なんだから殺したって良いだろう…おいどうした?」
「うがぅげほっごぶっ…うわぁ口から水がうごわぁぁぁぁ」
「うごっうげごぶっ…水が…うごわぁぁぁぁ」
なんだ…急にカバルとミレスが口から水を吐きだし始めた…
「どうしたんだよ…おい…うごっぱ…」
何だ、何で口から鼻から水が出てくるんだ…まるで水で溺れているみたいに苦しい。
それに…なんで俺達は歩こうとしているんだ。
何処に行く気だ…
体が自分達の意思に逆らい動き始めた。
「お客さん、勘定!」
俺の意思とは関係なく…財布を丸ごと差し出した。
「なんだ、食い逃げじゃ無かったんだな…なら良いや」
お釣り…そう思ったが口には出せなかった。
地上なのに俺達三人は明らかに溺れかかっている。
誰かに助けを求めようにも…体は言う事をきかない。
そのまま、俺はカバルとミレスを追うように酒場を後にした。
「「「うごばっごぶっは…ごぶ」」」
まるで水責めにあったみたいに口から鼻から水が出てくる。
息をするのもままならない。
それなのに体は勝手に歩いて行く。
暫く歩き続け…どぶ川の橋の所迄たどり着いた。
嘘だろう…目の前でカバルとミレスが橋から飛び込んだ。
嫌だ…死にたくない….なんでだ…こんな魔法を俺は知らない。
何故…幾ら逆らっても体は動かず….結果的に俺は橋から飛び降りた。
ごぼごぼごぼっ…
俺もカバルもミレスもこのまま水死するのだろう…
なんでこんな事になったんだ…
そうか、あのクソガキ、緑髪だった。
こんな事人間に出来るとは思えない。
あのガキは本物の魔族だったのかも知れない。
あのまま放置しておけば見逃して貰えていたのかも知れない。
なのに…俺達は…藪をつついて蛇を出してしまった。
関わらなければ…
ごぼごぼごぼ…
沈んで死んでいく俺達にはもう考える時間も無い。
ただ、死んでいくだけだ。
◆◆◆
翌日、水死した兵士3人の死体が見つかった。
目撃者の話から酔って落ちたのは確実だが…こんな場所で1人なら兎も角3人も溺れるのは可笑しい。
だが、幾ら調べても原因は解らなかった。
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