第25話 帰り道
「あの…本当に良いの?」
「何が?」
「ミウが奴隷で…」
「良いよ、寧ろこっちから望んで奴隷になって貰ったんだし、寧ろミウの方が良かったの? そう聞きたい位なんだけど?」
「命助けてくれたし…」
「うん、そうだね」
「その…火傷も治療してくれたし…」
「確かにそうだけど?!」
「そこ迄されて嬉しくない女の子は居ないと思う…よ」
「まぁ喜んで貰えたなら、それで良いや」
「あの…ミウは元盗賊で『腹切り』なんて字(あざな)があるんだよ…沢山人も殺した…それでも良いの? それに、可愛くないし…」
まだ引き摺っているんだな…
「ギルドでも話したけど、殺した中に友達や家族が居たら割り切れないかも知れない…だけど、赤の他人だから今更気にしても仕方がない。それにミウは話してみて悪い人間には思えない、過去は過去で良いんじゃないかな? 殺さなければ生きられない環境ならそれも仕方なかったんじゃないか? あとミウの外見はこの世界は兎も角、俺には凄い美少女にしか思えない…はっきり言うけど、ミウより可愛いと思った女の子は、前の世界も含んでいない…」
リアル魔法少女の3年後位に見えるんだよな。
2.5次元というのか。
コスプレじゃなく『本人』にしか見えない。
「えっ、それ本当? そんな事言われた事は無いからミウ照れちゃうな…」
「いや、本当にそう思うから、この世界は兎も角、俺にとっては凄い美少女に見える。正直言って初めて会った時に一目ぼれだよ」
「嘘…あの時のミウは火傷して…凄い状態だったと思うんだけど…」
火傷していない半分の顔を見て、凄い美少女だと思ったんだよな。
何故、そこ迄気に入ったのか自分でも解らないけど、もし治らなくても一緒に暮らしても良い。
そこ迄思えた…不思議だけど。
「正直に言えば治るかどうか半々だった。だけど、可笑しな話だけど治らなくても一緒に暮らしても良い!これは何故か解らないけど、ミウを見た瞬間から思えた。スラムには最初から奴隷を探しに行ったんだ…だけど、最初から決めていた事がある」
「何を決めていたの?」
「妥協はしない…『この人でも良いか?』じゃなくて『この人じゃなくちゃ駄目』そんな人を探していたんだ」
「それがミウなんだ…」
「恥ずかしいけど、そうだよ」
「ねぇ理人さま」
「理人で良いよ」
「それじゃ、理人…それ本気で言っているの?」
「勿論」
「うん、解ったよ!ミウの全てはもう全部理人の物で良いよ」
「え~と」
それって奴隷となにか違うのか?
「あははっ、心の問題…ミウは本当に理人が気に入って、心から…」
『グウッ』
「お腹が鳴ったみたいだね、体の調子が良いようなら何か食べていく? 好きな食べ物があるなら言って…好きな物奢ってあげるから」
「本当…ミウお肉が食べたい!」
「胃の調子は大丈夫?」
「多分、大丈夫…だと思う」
「解った、何処かお勧めの店ってあったりする?」
「う~んと、ミウ解んない…余り食べた事無いから」
解らない以上仕方がないな…
俺は視界に入った食堂っぽいお店に入った。
◆◆◆
「え~となんで床に座るの?」
「ミウは奴隷だから…床が当たり前だよ…それに椅子に座った事、ミウは無いもん…」
確かに周りを見るとそうみたいだけど…
「あの、この店ってちゃんと注文すれば奴隷でも椅子に座って大丈夫ですか?」
お店の人に聞いてみた。
「うちはお金を払ってくれる人が客だから…金さえ貰えれば奴隷でも問題無く座って良いぜ」
「ミウ、そういう事だから座って」
「ミウも座って良いの?」
「勿論、それで何が食べたい」
「貰えるなら何でも良いよ…ミウ2切れ位欲しいな」
「それどういう事」
想像はついていたが、ミウの話では碌に食事も貰えて無かったみたいだ。
人殺しまでしていたのに残飯みたいな物を食べて…
こう言う場所には基本は連れて来て貰えず、連れて来られても奴隷みたいに床に座らされて残り物を食べていたらしい…
「あのな、さっきの流れで何故そうなるんだ? 俺はミウが気に入ったとも言ったし、奢ると言っただろう? ほら、好きな物を食べよう」
「本当…うん、ありがとう…グスッ…」
「泣かないで良いから、好きな物食べよう」
「うん…だけど…ミウ文字が読めない…」
「解った…それじゃお勧めの肉料理2つお願いします」
「あいよ…それじゃ特上ミノタウルスのステーキ2つで良いか? 1人前銀貨1枚、結構するぞ」
「構わない」
「はいよ」
ミノタウルス? 牛みたいな味なのか…まぁ美味しそうだ。
ステーキが出てくるとミウは凄い勢いでステーキにフォークを刺すと噛り付いた。
今日は良いけど…マナーも教えた方が良いかも知れない…そう思ったが…
流石異世界だ…ミウと同じように食べている種族もいるから、このままでも良いのかも知れない。
後は…吐かないでくれると良いんだけど。
病み上がりだし大丈夫か?
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