第24話 終身奴隷
「冒険者ギルドから来ました! 落ち着いたら奴隷と一緒にギルドへ来て欲しいです!」
ギルドの使いの、子供冒険者が来た。
「あの…いま出ました」
「丁度良かった、体の方は大丈夫? なんだか、冒険者ギルドに来て欲しいんだって」
良く考えたら『あの人』は私が犯罪者なんて知らないのかも知れない。
いや…絶対知らないよね。
嫌われちゃうかな…だけど、私は『終身奴隷』だから行かない訳に行かないよね…
「うん…大丈夫だよ!」
「なんだか顔色がまだ悪いね…仕方ないな」
「えっ…」
嘘、おんぶされちゃった。
背中が広くて…うん暖かい。
だけど…ミウの事を知ったら、もうこんな優しくしてくれないかも知れない。
「それじゃ、これから行くから」
「それじゃ、先に行って伝えて置きますね」
そう言うと子供冒険者は走って行っちゃった。
知られたくない…ううん、知られるのが怖いんじゃない。
この優しい人を傷つけるのがミウは怖い。
◆◆◆
しかし、随分と軽いな…
そう言えば俺、ミウに自己紹介をしていなかった。
ミウの事も名前しか知らないや。
「そう言えばまだ自己紹介をしていなかったね?俺の名前は黒木理人、宜しくね!」
「理人様! もしかして異世界人ですか?」
「まぁね」
「異世界人って凄い…」
「凄く無いよ、その中の落ちこぼれみたいなものだからね!お互いの事は後でまた自己紹介しようか? 取り敢えず今はギルドに行こう」
「うん…」
「どうした?!元気無いけど?もしかしてまだ辛い?」
「ミウはね理人様に言わなくちゃいけない事があるんだよ…」
なんだか随分真剣な、今にも泣きそうな顔だ。
「言いたいなら聞くけど?!辛いなら言わなくても良いよ」
顔が焼かれていた位だから、監禁されて拷問でもされていたのか?
それとも誰かに追われていたのか?
訳ありな事は解っていた。
今更だよな…
「あのね…ミウは犯罪者なんだよ…」
「犯罪者なんだ…」
まぁ、そういう事もあるよな。
「そう?!詳しい事はこの後で聞くよ!」
冒険者ギルドに着いた。
「うん…」
悲しそうな目。
過去は過去…俺はそう思っている…だから過去は気にならない。
◆◆◆
「この間は一刻を争う事態だったので、最低限の説明のみで急いで奴隷契約をしてしまいましたので、本日はその説明をさせて頂きます」
「確かに俺が急かしたようなものだから、悪かったね」
「いえ、まずその子は犯罪者なので『終身奴隷』の扱いになります。逆にそれ以外に契約のしようがありません」
「なにか普通の奴隷とは違うのですか?」
まぁ呼び名からして大体想像はつくけどね。
「一般的な奴隷契約であればお金を溜めて自分を買い戻す事も出来ますし、両者合意の上での解除は出来ますが『終身奴隷』にはその権利はございません…死ぬまで主に仕え、そして主が死ねば死ぬ。それが終身奴隷です」
「ちょっと待って! それじゃ俺が死んだらミウは?」
「死にます…他にも理人様を殺そうとしても死にますし、リヒト様が命令すればその瞬間に自害します」
「ミウ…なんだかゴメン、こんな事になるなんて」
「ミウは全然悪いと思ってないよ?気にしないで良いから…」
なんで悲しそうなんだ。
まぁこんな計画嫌だよな。
「これは、そのミウさんにとっては悪い事じゃありません!たぶん、その子は理人様の奴隷にならなければ、すぐに殺される運命ですから、盗賊団、殺戮の狼の『腹裂きのミウ』何人も人を殺した賞金首です。あの時怪我していたのも討伐隊の兵士による怪我ですよね!違いますか?」
「違いません…」
「まぁ、ともあれ、ミウさんは『終身奴隷』になった事で生涯を掛けて罪を償う事になります…その為、もう賞金首じゃありません」
今一奴隷になると罪を償った事になるという意味が解らない。
「なぜ、終身奴隷になると罪を償った事になるのか解らないのですが…」
「犯罪者を終身奴隷にする事は親類や友人には出来ません『赤の他人にしか出来ないのです』赤の他人、誰か解らない人物の物になり、何をされても逆らえなくなる充分な罰だと思いますが…尤もその代り『終身奴隷』の主はその奴隷が何かしたら責任を取らなくてはならない、そう言う責も負わなくちゃなりません…人1人自由に出来る代わり責任も持たされるのです」
「成程…」
「以上が、本来あの時に説明しなくてはいけない事でした…あとミウさんは『腹裂きのミウ』何人も人を殺した生死問わずの賞金首です…宜しいのですか? もし手に余るなら『死』を…」
「理人様…やっぱりミウ…」
「過去は過去で気にしないよ!別に俺の友達や知り合いが殺された訳じゃないから…それにこれからどちらかが死ぬまで一緒にいるんだから…仲良くして欲しいな」
「えっ…良いの? ミウは犯罪者で人殺しなのに、仲良くしてくれるの?」
「過去は過去…これからはこれからで良いんじゃないかな?」
「その…ミウは髪なんて緑だし目もブラウンでブサイクなのに…」
何を言っているのか解らない。
どう見ても可愛いのに…
「え~と普通に可愛いと思うけど?」
殆どアニメのキャラにしか見えない。
アニメのロリキャラの…その3年後です。
そう言われてもそうですか…そう思える容姿だ。
前の世界も含んで彼女より可愛い子は芸能人も含んで見た事が無い?
「はぁ?! 緑髪にブラウンアイですよ? 気味悪くないんですか?」
「いや、似合っていて凄く可愛いいと思うけど? 美少女にしか見えないけど」
「え~とミウが可愛いい…の?」
「そうだけど!」
「やっぱり異世界人って変わっていますね…まぁお話は以上です! それじゃ、もう用事は終わりましたので…お帰り下さい」
「解りました…それじゃミウ帰ろうか?」
「うん!」
気のせいかミウが少し明るくなった気がする。
良い事だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます