謎の少年

授業…終わったか?

僕、ずっと寝てたの…?

どうして誰も呼んでくれないんだろう…せめて先生が。

チクタク…

チクタク…チクタク…チクタク…

壁の時計は、明晰な音で時を刻んでいる。

おかしいな…

みんなはどこにいったのだろう…

いつも賑やかな教室が、今はただ空っぽ。

クラスメイトも、教師も、机さえも、あらゆるものが、まるでその存在を何かに消し去られたかのように、完全に消えてしまっていた。

チクタク…

チクタク…チクタク…チクタク…

いったい、何が起きたの…?


「カラララ......パッ!」

教室の引き戸が誰かに一方押して、幽玄のキャンパスにけたたましい音を響いた。

ほのかな月の光に照らされ、暗い奥の方からある少年の姿が見えた。

小柄で、ターコイズブルーのポニーテールを首の片側に一本流し、黒い司祭用のチュールチュニックを体の半分まで着て、金色のドグマシールを無秩序に詰めた奇妙な構造のアンダーシャツが、少年の魅惑的な体を完璧に縁取り、そして何よりも目を引くのは、夜の闇の中でも際立つ胸元の緑の宝石。

その宝石、どこかで見たことがあるような気がするのだが…


「コホン」

緑髪の少年は白い手袋をさりげなく引っ張り、壁の時計を指差しながら、中性的で少し気怠いアクセントで僕に挨拶した。

「えっと、聞こえますか?君がここからなくなるまで…えっと、あと5分」

…え?

「…君がここからなくなるまで、あと5分…?どういうこと?」

少年は答えず、ただ軽く微笑んだ。

「神の名において」

…?

顔に何か擦り抜けたような…

シュッ…カチッ。

薬莢が地面にぶつかる音が、静寂の夜で大きく響いた。

熱風が吹き抜け、一瞬にして焦げ臭いにおいが発散する。左耳が一瞬にして聞こえなくなり、頭をブルブルと振るわせる音波だけが残る。

これは国に禁じられるものの一つ、魔法!


教科書によれば、太古の昔、すべての人間は魔法が使える。しかし、人間は野心の祟りで、魔法を洗いざらいに使い、よって、自然のバランスが崩れ、世界の破壊まで招いた。

神は人間たちに罰するため、40間の大雨を降らせ、二度と自然の法則を破らないようにと警告として与えた。これは「しずくのなく頃」と呼ばれている。

そして、魔法の静止因子を持つ一部の人間だけが、事前に神の指示を受け、ノアに助けを求め、十分な食料を集めて、アークで動物たちと一緒に天災から生き延びた。

その後、人間たちは再び神々を怒らせないよう、体内に存在する魔力の源である「エーテル」を永遠に封印してしまったという。


この少年はなんで魔法がつかえ…

考えはまだ中途半端なところ、少年は左手を銃のように仕草をして、挑発的に吹き、また意味深な視線を私に向けて。

「やれやれ、外れちゃった」


細長く暗い廊下で、追いかける二人の姿が霞んだ月明かりの中にかすかに見える。

一人はネズミのように東へ西へと飛び跳ね、もう一人は狩りをしている猫のように、静かに見とれている。

シュッーー!

カチン......パ!

廊下の窓が蜘蛛の巣のように砕け散った。

物陰に隠れていても、銃弾はまるで獲物を狙う鷹の目のようで、まっすぐに打ってくる。

クソ!一体どうなっているんだ?!

ちょっと授業で寝ただけなのに、どうしてこんなこと?!

あああ、もう!なんでこの廊下はこんなに長いんだよ?! 隠れるそうなところもないじゃない!


ドン......

ダ......

ドン......

ダ......


少年の靴の踵が床に当たる振動の響きが、今まさに死亡へのカウントダウン。

迫ってくる少年は、まるでいつの間にか体に巻き付いていた蛇。抜け出すことも反撃することもできず、ただ命の最後の一滴まで食い尽くされるのを待つしかない。


「太陽は朝の光であり、万物に生命を与える」

「月は沈む光であり、万物に死に場所を与える」

「星は軌跡であり、万物に叡智の始まりを与える」

「混沌は揺りかごであり、万物の新たな運命を紡ぎ出す」


暗い廊下の奥から、聞いたことのない不気味な童謡が響いてきた。それは明らかでありながらぼんやりで、遠くでありながらすぐそばにある。

まるで地獄の使者からのつぶやきのように、きれいでありながら、死に満ちている。


ドン......

ダ......

ドン......

ダ......

……

……

……


音が......遠くなった......?

好奇心のせいで、僕は後ろを振り向いた。

目の前あるのは、終わりの見えない暗い地獄へ行くような道。

いったい何が…あの少年は……

脳の視覚反応が起きる前、少年の小柄な姿が一瞬にして目の前に現れ、そのエメラルド色の蛇のような瞳が深淵ほど深く、人を奈落の底に吸い込むような恐怖を感じさせられる。

いつの間にか、少年の手に握られた銃はまるで毒蛇が獲物を掴んだのように私の胸に食い込んで。


「さよなら」


バンッ...!


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