壁。

Rotten flower

第1話

アパート、たった一枚の壁を挟んで男女が住んでいた。ただの男女ならまだしも両方とも同じ職業、そして互いにある印象を持っているため普通とは言えないだろう。


「明日も早いからなぁ。」

男が独り言でそう語る。髪は青色で染められていて、部屋も全体的に青色になっている。

「こんな深夜まで起きてていいかな。」

自分の中では、(いいわけないだろう。)と決心はついているものの、自分を甘やかしている自分がイライラして仕方ない。

「もうそろそろ寝たいかも。あ、」

男のスマホに通知が来る。SNSアプリの通知だった。男は一部の通知を断ち切っている、それではなんの通知だったのだろうか。

「今日もお仕事お疲れ様。明後日からツアー公演、もうそろそろ寝ないとな。」

ツイートにはそう書かれていた。

「ツアー公演、見に行きたいな。」

男は裏垢でそうつぶやくと同時に、現実で、

「行けたらいいのにな。」

と微かに呟いていた。男はアカウントを表垢に変えると、

「健康のためにも寝ないとな。」

とつぶやく、一瞬で1000のいいねが付く。


「あ、ツイッター更新されてる。」

女のスマホにも通知が来ていた。女も一部の通知は切っていたがアカウントの更新通知だけは切っていなかった。

「早くねなよ。」

そう、リプライを送る。


今日も明日もこの男女はネットでは会話をするのに現実世界では挨拶しかしないのだろう。

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