第16話-神の子
教団の10隊は、2グループに別れている。神谷グループと小林グループの2つであり、神谷グループを『天津G』、小林グループを『国津G』と呼ぶ。
天津Gは、1番隊の神谷隊長をリーダーとした1番隊から5番隊、そして国津Gは、6番隊長の小林をリーダーとした6番隊から10番隊である。
小林も神谷と同様に、副教団長を兼ねており、教団活動においては、冷静沈着な神谷、大胆剛直な小林が大神の右腕、左腕といった存在である。
各隊長はもとより全ての隊員も、大神同様に古き神々を先祖にもつ神聖な家柄の者達である。
大神をはじめ100名の教団員のすべてが、古の神々の子孫であり、教団活動を末端で支援する『使徒』たちもまた、神々と何らかの関係を持つ者たちである。
ただ独り、神介を除いて・・・・・
神介は、ただ独り教団代表の直属の『親衛隊員』として、1番隊の神谷と6番隊の小林を除く、各隊の隊長と同じレベルの扱いを受けている。
神介の家系譜には、神の名は無い。先祖代々、普通の人々が、ごく普通の一生を淡々と送っている。
なぜ神介は神々の子孫が集う教団に入団しているのか?なぜ代表の親衛隊員なのか?
大神家に代々伝わる古文書により、『暗闇に、光輝く子現れ、その者の偉大な力により神々を助け、人外のものを滅ぼす』と書き伝えられている。
大神家の家系に記されるすべての神々の子孫たちが総力を挙げて、時間を、空間を超えて様々な調査を行った。
古文書には、さらに記されていた。『その者、身体に光の御印を持ち、全てを照らす』
神介の背中の中心部には、生まれ落ちたその時から、円形で9つの突起をもつ2㎝四方の赤色の痣があった。まるで光が輝くような・・・・・
神の子の生誕も古文書に記されていたため、教団は無限に分岐するパラレルな世界に手分けして出現し探索した。
無限に広がる時空間の中で、光の御印を有する神の子を探し出すのは、不可能に近い。
夜空で輝く全ての星の中から、ほんの小さな特徴をもつ、ひとつの星を探し出すようものである。
ひとつの世界で、神の子の親になるべき男女が神の子出産以前に、病死や事故死をしても、その後に無数に分岐する全ての世界において、神の子の誕生はあり得ない。
その祖父母にしても同様である。
また神の子の祖先になるべき男女が、巡り逢う一瞬を違えば、その後の世界においては、神の子は誕生しない。
不可能な無限の組合せの中に生まれる奇跡。それが神の子である。
大神一族の者は、神の血をひく者であるがゆえに、時空間の移動は容易ではある。
しかし、無限世界の中から、神の子が存在する世界を見つけ出すこと自体が不可能に近いのだ。
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