第4話 甘い団欒

 高い相続税が原因なのか農地がどんどん減少している。その跡地に次々に新たな住宅が建ち上がっていく。


 夜ともなると、広い農地に明かりを灯す住宅が点在しているが、ほとんどの空間を闇が包んでいる。大きな幹線道路から、脇道に200mほど入った農地の中に建つ、一軒家から灯りがこぼれている。


 明るい照明、10畳はある広いリビングに、家族の笑い声が響いている。もう土曜日の深夜1時を過ぎているが、父も母も明日が休みせいか、まだ誰も寝ようとしない。


 テレビでは、賑やかなアニメーションが流れていた。21時に遅い夕食を済ませ、義雄、雪子、美紀、そして神介の順番で風呂に入った。


 「神介、いつまで入ってるの?ふやけちゃうわよ」


 からかう美紀の声がかかった。


 風呂から出ると、義雄はすっかり寛いだ感じで、真っ白いソファーでビールグラスを傾けていた。雪子も隣に座り、テレビを見ながらビールを飲んでいる。


 風呂上がりのせいか、酔いのせいか、頬が桜色に色づいている。美紀と神介には冷えたコーラが2つテーブルに並んでいた。


 姉の美紀は、まるで絹のように輝く素肌に白のタンクトップ、白の下着姿で、絨毯の上で寛いでいる。


 神介より2つ上の18歳、同じ高校のもう3年生である。美しい顔に均整のとれた身体。優しくて優秀で、評判の美少女である。


 弟の神介でさえ胸がドキドキときめく、自慢の姉である。美紀の横に冷えたコーラを持って寝転がった。


 「神介・・・・・」


 「何だよ」


 「コーラちょうだい」


 「自分のがあるだろ」


 「ふふ、いいの。取りにいくのめんどくさいもん」


 美紀が抱きついてくる。美紀は、小さいときから強くてやさしい神介が大好きだった。


 「ばか、抱きつくなよ」


 「ふふ、神介大好き」


 「もう、母さん助けてよ」


 「まったくもう、変な姉弟」


 「お前たち、姉弟じゃなきゃ結婚してるな」


 義雄が笑いながら、からかう。小さいときから、まるで恋人同士みたいに仲が良い二人だった。


 母の雪子も美しく38歳になるが、まるで美紀と姉妹である。昔モデルをやっていたころ、カメラマンであった義雄が一目惚れしたと聞いている。


 義雄は40歳、身長は180㎝ある。日本人離れした容姿であり、まさしく美男美女の夫婦である。義雄も出会う女性を、必ず振り向かせる男であった。

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