第6話 ドッゴンドッゴン
「燐歌さん」
「はい」
琳の家。
二階の琳の自室にて。
フローリングの床に正座になった琳は、同じく正座になった向かい合わせの燐歌を少しだけ見上げて言った。
多分私、師走さんに品定めされている。と。
「品定め、ですか」
「うん。私も気づいたんだけど、友達も気づいていてたんだ。師走さんがずっと私を睨んでいるって。で、友達には師走さんと友達になりたいって申し込んだことも、師走さんにおとといきやがれって言われたことも言ってたんだ」
「はい」
「友達が言ったんだ。おとといきやがれ。つまり、二度と顔を見せるなって凄んだわりには、師走さんはずっと私を睨んでる。見ている。本当に興味がないなら、もしくは嫌いなら視界に入れたくないはず。だから友達になれるかどうか品定め中じゃないかって言ったんだ」
「では。師走さんも少しは琳と友達になりたいと思っているのですね?」
琳は小さく頷いて、手をもじもじさせながら言葉を紡いだ。
「多分。そうじゃないかって。だから。明日からは、挨拶だけじゃなくて、十分休みとか昼休みとかも。話してみようかなーって。放課後は師走さん、すぐに教室を飛び出して行っちゃうから挨拶だけで」
「琳。頑張りすぎはだめですよ」
「うん。わかってる。ちょっとずつ、ちょっとずつ。あーでも何を話そう?」
「まずは、好きなこととか嫌いなこととか、ですかね。何の授業が一番好きですか。とか?」
「あー。そうだね。うん。まずはそれにしよう。うん。そこから話が広がるよね?」
「はいそうですよ」
あははうふふ。
琳と燐歌は笑い合いあった。
おとといきやがれ。
翔太に凄まれてから、十日が過ぎていた。
翌日の小学校の昼休みにて。
ドッゴンドッゴン。
心臓のあり得ない音を聞きながら、翔太の元へ行こうとする中、琳の目に入ったのは渋い配色で漢字だらけの本だった。
好きな授業じゃなくて何の本なのかにしようかな。
質問を変更しようかどうしようか、迷った。
迷って、何の本を読んでいるのかを質問しようとして、また迷った。
読書の邪魔をしていいものかどうか。
(すごく集中しているし。うん。邪魔しちゃだめだよね。また明日にしよう)
くるり。
琳は方向転換して自分の席に戻った。
友達はクラスメイトとドッジボールしているので入れてもらおうとも思ったが、自分も続きが気になる本があったので読むことにしたのだ。
(あーもう。すごいドキドキするー)
(2023.5.24)
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