いばらのほうき星

藤泉都理

第1話 がんばれ




「お願いしますね。お願いしますよ」

「わ、わかってるってばもう」


 小学校六年生、十二才のおかっぱ頭の少女、加賀美琳かがみりんは目の前で手を合わせて頼んでくる、着物を着ている幽霊でポニーテールの女性、燐歌りんかを恨めしそうに見つめながらも、教室の中をゆっくりと歩き続けた。

 小学校六年生、十二才の三つ編みの少年、顔も言動も噂も怖い師走翔太しわすしょうたに向かって。


 友達になりませんか。

 そう言うために。


(が、がんばれ自分!!!)


 平穏な小学校生活だった。

 友達にも先生にも恵まれて、とても心穏やかな小学校生活を送れていた。

 のに。

 絶対にお近づきにならないだろう人に話しかけるなんてビックイベントが、小学校最後の一年で訪れるなんて。


(がんばれがんばれ自分!!!)




 手伝いたいって思ったんだ。

 あいしてるって。

 とても大切な想いを伝える手伝いを。

 自分で決めたんだ。

 だから。




「し、師走さん。あの、あの!私と友達になってくれましぇん、でしょうか?」

「ああん?」


 ごめんなさいやっぱり何でもないです。

 そうして逃げ去りたい身体を必死に抑えて、琳は翔太を見続けた。











(2023.5.23)



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