Bright melancholic gentle afternoon.
白野椿己
Bright melancholic gentle afternoon.
淡水魚が眠った、永遠に。パステルカラーがふわふわと浮いて心は底まで沈みきる。今日の星座占いは最下位で5月なのに雪が降っている、ベランダに出していたライラックは白く凍えていた。
気になっていた人とのデートは今朝ドタキャンされて、見忘れていた映画DVDの返却期限は昨日だったらしい。冷蔵庫の中はほとんど空っぽで生憎カップ麺も切らしている。
マンション1階のコンビニにお昼ご飯を買いに行ったら顔見知りの先輩と再会、今からデートなのかと茶化された。
あぁ、何もかもうまくいかない。
気合を入れて新調した鮮やかでポップなネイルの指がスイスイとスマホの画面上を泳いでいく。そう、まるで、淡水魚みたいに。
ちょっとだけ鼻をすすってジュースを取りに行った。気になっていた人から貰ったお土産のジェリービーンズも一緒に。マシュマロ素材のクッションをぎゅっと抱きかかえてDVDを再生した。
カラフルでファンタジーな映画は現実逃避にちょうどいい、お菓子で出来た花束は可愛くて、ヒロインの涙は流れ星だ。ファニーなマスコットキャラの不思議なダンスが自然と笑いを誘う。
ヒーローは顔が格好良くてお茶目で優しい、デートのドタキャンなんて絶対しないだろうな。あぁまたメランコリックになってきた。
DVDを返しに家を出る頃には雪は小雨に変わっていた。お気に入りの傘と少し子供っぽいレインブーツを履いて街中を歩いていく。
傘をたたんでスマホを見るとメッセージが1件。
「明日の夜って、いつも急だなぁ」
でも、この人の事はやっぱりちょっぴり好きだ。
(明るくて憂鬱な優しい午後)
Bright melancholic gentle afternoon. 白野椿己 @Tsubaki_kuran0
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます