Magical Reve ~A Cruel Promise~
柏木桜
第1話 始まり
私は、今でもあの時の事を強く後悔している…。
あの選択で良かったのだろうか…?
あの選択をしなければ、今頃どうなっていたのだろうか…?
臭くゴミだらけの路地裏で、いつ死ぬか分からない苦痛と絶望に押し潰されながら、私はずっと過去を振り返りながらそう思うのだろう…。
遡る事数年前。
…と書いてはいるが、冴島結衣の一件から十年以上経った「魔法使いと人間が平穏に暮らしている世界」の物語。
この世界は長い間ギルドが存在せず、ボランティアなどで何とか食い繋いでいた旅人の「このままでは安定して収入を得られない」などと言う声が多く上がっていた。
そう言った声を聞いた各地域の村や町、王国のトップが数十年も協議を重ね、長い歴史のあるこの世界で初の全国統一ルールの制度「ギルド制度」が施行された。
そして、とある町の掲示板の前で人混みに揉みくちゃにされている茶髪でロン毛の少女がいた。
「あの…見せて……!」
私の名前は「エイミー」。
最近魔法学校を卒業し、一人前の魔法使いになる為に数日前から旅に出ている。
私は人見知りが激しく、背も小さい。なので、ギルド内容が書かれている掲示板の前に行くと毎回こうだ。
小さな声で「見せて」と言いながらぴょんぴょん跳ねる。しかもこの町の掲示板は大通りにある為、こうでもしないと気づいて貰えないのだ。
「すみません…!すみません…!」
私は小声でそう言いながら人の間を縫うように進んでいき、掲示板が見える場所まで来れた。
これだけの人数がいるからギルド内容は魔王を倒す…や、ゴブリン退治と言った凄いものがあるか…と言われればそう言ったのはあまり無く、大半はペットの捜索か良くて鉱物の採取などと言った感じだ。
「あー、またペット捜索とかかよ…」
隣に立つ旅人から愚痴がポロっと溢れる。
なんの事だろうと思って見てみると、内容は「いなくなった猫探し。報酬50ペル(およそ50円)」といったものだ。
仕事内容の割に報酬が安すぎる。
ギルド制度が出来てから数ヶ月しか経っていないので、そういった所が少しガバガバなのだ。
たまに、貴族の護衛やらで高額報酬があるらしいが恐らく隣の旅人はそれを狙っていたのだろう。
本音を言えば、私もそっちの方がいいがまだ実力の無い私が受けたところで足手纏いなだけだ。比較的受けやすそうなものを探そう。
「えーっと……?何これ…?」
何かないかと掲示板を眺めていると、複数の依頼書の下にボロボロの依頼書が二枚貼り出されていた。
ペラっと被さっている依頼書をめくり、ボロボロの依頼書の内容を読んでみる。
「人…探し……?」
内容は「人探し。数年前から師匠が行方不明で探しています。報酬「あなたの希望するもの」」と探している人物の容姿などが記載されている。
見るからに怪しい依頼書だ。
おそらく私と同じ考えで誰も手に取らずにボロボロになったのだろう。
だが、ランクは「F」。A~Fで表されてる中の最低ランク、いわゆる初心者向けという事だ。
そして、その裏にあるもう一枚の依頼書には「吸血鬼駆除。報酬590万ペル」とだけ書かれている。
「590万…っ!?」
私はこの依頼書を見て驚いたが、どうして誰も取らないのかがなんとなく理解できた。
ランクを見ると「A」と記載されており、報酬金額を考えるに普通の仕事じゃないからだ。
だが、私は何を思ったのかこの二枚の依頼書を見て惹きつけられる感覚がし、掲示板からビリっと引っ張るとギルド受付所へと持っていった。
「あの…、この二つ受けたいです…!」
「あー…はぁーい…」
受付に依頼書を二枚渡すと、受理はあっさりと終わった。
先程も言った通り、出来てから数ヶ月しか経っていない制度なのでルール作りもこれからと言った感じであり、認定証と言ったものは存在しない。
なので、依頼書を受付に出してしまえばランク、能力関係なしに受ける事が可能なのだ。
それ故に、死のうがどうなろうが依頼を受けた本人に全ての責任がいく。ギルド側は一切保証しないし責任も負わない。ランクが高い依頼を受けるのもかなり高いリスクが伴うのだ。
(なんとなくこの二つにしちゃったけど…よかったのかな…?)
エイミーは不安な気持ちのまま、町を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます