閑話 ミレイの日常2

「ドナート!ちょっとあの子どういうことなの?」


冒険者ギルドの仕事を終え、ドナートの行きつけの食事屋さんへと向かった。ドナートは1人で食事をしていた。もちろんお酒付きだ。


「あ、A定食1つください」


「いきなりどうした?意味がわからないからちゃんと説明してくれ」


私はドナートに昨日と今日のスグルの話を伝えた。冒険者登録してからまだ数日というのに、素材納品数が75体と異常に多いのだ。門兵のドナートなら、スグルの街への出入り状況もわかるはずと思い、話をしにきたのだ。


「昨日は昼過ぎぐらいに門のところにきて、冒険者登録の金を返してくれたな。その後は森に行って、1時間しないうちに革袋を満杯にして帰ってきたときには、マジで将来有望だと思ったな」


1時間もしないうちに革袋満杯って・・・行き帰りの時間もあるし、狩るスピード早すぎでしょ。


「スグルくんって、もしかして強い?」


「どうだろうな。ただまぁ普通のランクFじゃないのは確かだろう」


スグルくんのことについてドナートといろいろ話していると、後ろから声をかけてきた。


「ドナートさん、ミレイさん、こんばんは。ちょっと聞こえてきたんですけど、そのスグル?って子、何かあったんですか?」


以前ドナートが助けた子で現在ランクDのアルトが声をかけてきた。真面目な性格で依頼成功率も高く、評判のいい子だ。年は18歳になる。


「最近ドナートが人助けした子がいて、その子の素材納品速度が異常なのよ」


「へー、ということはすでに上のランクの実力があるってことですか?」


「まだわからないが、その可能性は高いな。前まで森でじいさんと二人暮らししていたらしいから、そのじいさんに鍛えられたんじゃないのか?」


アルトを交えてスグルについていろいろと話してみて、気になる内容をまとめてみた。


・身寄りがないけど生活は大丈夫?

・13歳という若さで上のランクの実力持ち?

・おじいさんは何者?

・マジックバッグを持っている?


「ここで考えても仕方がないわね。ひとまず身寄りのない子だから、温かい目で見守ってあげなくちゃね」


「そうだな、じいさんが死んで独り身になったんだ。俺らでフォローしていこう」


「俺もドナートさんに助けられた先輩として気にかけておきますね。ランクアップ試験があれば、俺、試験官しますから声かけてくださいね」


それから食事をすませ、しばらくして解散した。





数日後、冒険者ギルドで受付の仕事をしていると、スグルくんがやってきた。


「すみません、ランクアップ試験受けれたりしますか?」


「あらスグルくん。確かこの前説明しなかったかしら?あれからまだ数日しかたってないじゃない。依頼10件クリアしてからしか受けれないわよ」


「ランクFの依頼、10件達成しましたよ」


「えっうそ・・・ギルドカード貸して!」


スグルくんからギルドカードを受け取り、受付にある魔道具に差し込んだ。目の前の画面に登録情報が出てきた。


『名前:スグル

 年齢:13

 職業:剣士

 冒険者ランク:F

 依頼達成数:通常:ランクF 10

       常設依頼:ランクF 183

 素材納品数:魔物ランクG 183』


「すごい、本当に達成できてる。この前登録したばかりなのに」


(しかも数日で素材納品数がおかしなことになっている。うん、考えることをやめよう。独り身になっても一生懸命頑張る少年、温かく見守るって決めたんだった)


「それじゃあ約束なのでランクEへのランクアップ試験について改めて説明するね」


スグルくんへの説明を終え、筆記試験を受ける場所へと移動した。

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