第12話 冒険者ギルド
「スグル、着いたぞ」
ドナートさんとおしゃべりしながらしばらく歩いていると、目の前には大きな建物があらわれた。看板には『冒険者ギルド』と書かれている。異世界小説では定番のものだ。
ドナートさんは冒険者ギルドの扉をあけて中に入っていったので、私も遅れないように付いていく。中に入ると、正面に広めのスペースがあり、その奥にカウンターがあった。受付の人が何人か立っていて、そのうちの1つに向かってドナートさんは歩いていった。
「買い取りを頼む」
そう伝えると、私の生肉を台の上に置くように言った。
「ドナートが来るのは珍しいな。その坊主は誰だ?」
買い取りの受付にいたのは、昔、冒険者でもしていたのだろうか、がたいのいいおっちゃんだった。
「こいつはスグル。じいさんと二人で暮らしていたらしいが、最近亡くなって、一人で街にやってきたんだってさ」
「はじめまして、スグルです。こちらがラビットの生肉です」
「言葉づかいが丁寧なこった」
そう言って、おっちゃんは生肉を受け取った。しばらく吟味したあと、代金を受付台の上へとおいた。
「ほらよ。状態がいいから大銅貨1枚に銅貨1枚おまけしといてやる」
「悪いな、助かるよ」
どうやらおまけをしてくれたようだ。おっちゃんからお金を受け取ると、今度は隣の受付につれていかれた。
「ミレイ、金は俺が立て替えるから、スグルの冒険者登録を頼む。」
「またそうやって面倒事を抱え込んできて〜。そういうのはほどほどにしときなさいよ!えっと、スグルくん?でいいのかな。この用紙に必要事項を記入してね」
そう言いながら、ミレイさんは用紙を取り出し、受付台の上へと置いた。用紙の記入欄は、名前、年齢、職業の3項目のみだった。職業というと、転職制度でもあるのだろうか?・・・気になる。
「すみません、職業には何を書けばいいのでしょうか?」
「あぁこれ?なんでもいいわよ。パーティー組むときに参考にするぐらいかな」
自己申告制で特に制限はないようだ。あまり目立ちたくはないので、剣士にでもしておくか。サクサク書き上げて、紙をミレイさんに渡した。
「登録料は大銅貨5枚。今回はドナートが支払うけど、ちゃんと返すのよ。プレートが出来るまでに、冒険者について簡単に説明するね。」
いろいろと話があったが、要約すると、こういうことらしい。
・ランクは低い方からF、E、D、C、B、A、S、SS、SSSの順に高くなる。
・依頼を受けるには、壁の掲示板に貼ってある依頼票を受付まで持っていくこと。常設依頼の場合は不要。基本は自分のランク以下の依頼しか受けられない。
・依頼が終われば受付で精算、買い取りするものがあれば、買い取りの受付に提出する。
・受付の横の通路を進んで、最初の部屋は資料室になっているので、情報収集するときに活用すること。
「はい、これで説明はおしまいね。プレートも出来たからお渡しします。再発行するにはまたお金がかかるから無くさないようにね」
そう言ってミレイさんからプレートを受け取る。金属のプレートに先ほど紙に書いた情報が印字されている。ランクはFで、1番下からのスタートのようだ。
「これで身分証が出来たな。お金はおいおい返してくれればいいからな。依頼を受け取るときは、まずは死なないように慎重に行動しろよ」
ドナートさんは門兵なので、身分証のない人によく出会うそうだ。その時は事情を聞いて、場合によっては今回のような対応をよくするという、実にいい人だ。
「スグルはこれからどうするんだ?」
「そうですね、寝泊まりするお金もないので、ひとまず以前の家に帰ろうと思います。そして素材とかこちらに売りにきて、ドナートさんに早くお金をお返しできればと思います」
「そうか、まぁ頑張れよ。じゃあ俺はこれから非番だからここまでな。何かあればミレイに聞けよ」
「ちょっ、ちょっと!またそうやってこっちも巻き込むんだから!」
その後、ドナートさんと別れ、冒険者ギルドを後にした。お金がないので、ひとまず森の家に帰るとしよう。辺りはすでに暗くなってきていたので、門から出ようとすると門兵に止められたが、プレートを見せ、事情を説明して街の外へと出してもらった。周囲に人影がいないことを確認してから《テレポート》を使用した。
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