369. 開拓村での活動開始

 ガレット伯爵家の屋敷に一晩泊まり、翌朝開拓村へと出発する。

 キブリンキ・サルタスたちは、街の警備予定の子たちも含めて全員での移動だ。

 村の場所の確認とコニエリット様の護衛らしい。

 早速気合いが入ってるな。


 街を出て街道を少し道なりに進むと、山間に向かってやけにきれいな道ができている。

 そちらがコニエ村に向かう道らしい。

 コニエ村へ向かう途中で道が分かれているらしいので、途中まではこの道を使う。

 それにしても、本当にきれいに整備されているな。

 これが地ならし用の魔道車の力か。


 その後、道が分かれて開拓村の方へ進むわけだけど、こっちは道が整備されていなくてがたがただ。

 草もまだ覆い茂っているし、分かれ道のところに看板が立っていなければ本当にこちらに来ていいのかわからなかったな。

 いや、本当に道がないんだ。


「……さすがに作りたての開拓村で道を求めるのは困難か」


「申し訳ありません、ヴァードモイ侯爵様」


「いや、気にするな」


 ヴァードモイ侯爵様も魔道車の中で揺られて結構腰にきたみたいだ。

 開拓村の建設現場についた途端、魔道車から降りて体を伸ばしている。

 確かに、私の魔道車でも結構揺れたからね。


「リリィ、お前は大丈夫なのか?」


「はい。私の魔道車は荒れ地も走れるように設計されてますから」


「そうか。お前の魔道車はルミテ社の物だったな。帰ったらなにかいいものがないか調べさせよう」


 おお、いい宣伝になった。

 私には直接関係ないけど。


「それで、キブリンキ・サルタスはどうやって畑を耕すのだ?」


「私もみたことがありません。どうやるの?」


『見てもらえば早い。その前にこの村の責任者にあいさつしてどこからどこまでを耕していいかを聞かねば』


 確かにそれはそうだ。

 本当に律儀だし道理をわきまえているな、この蜘蛛。


 村の責任者だけど、まだ村の土台を建築中ということで人の手の入った畑は作ってなかった。

 代わりにキブリンキ・サルタスが管理してもいい土地の範囲を教えてもらったから、そこで畑作りだね。

 一体どうやるんだろう?


『では始めるぞ。皆、準備せよ』


 まとめ役のキブリンキ・サルタスの合図でキブリンキ・サルタスたちが10匹1列、前後で2列に並んだ。

 さて、ここからどうやって行くんだろう?


『では、始め!』


 号令をかけると、キブリンキ・サルタスたちは一斉に前脚で土を掘り返し始めた。

 そのまま少しずつ後ろへ進んでいき、指定された範囲まで行くと前後の列を入れ替えて折り返してくる。

 それを何回も繰り返しているうちに土がどんどん耕されていった。

 いや、驚いたな。


『うむ。ここの土はこれくらいでいいだろう』


「ねえ、キブリンキ・サルタスたちっていつもこうやって畑を作っているの?」


『そうだが、なにか問題でもあったか?』


「いや、ないけど、すごいなって」


『畑作りは我々の特技だからな。さて、残りの部分もやってしまおう』


 この調子でキブリンキ・サルタスたちは、許可された範囲を半日かからずに全部耕してしまった。

 人力だと10日以上はかかる仕事をこれだけの短期間に終わらせるなんて本当にできるな、この蜘蛛たちは。

 もうひとつの村にも全員で行って畑を耕し、そちらの村で畑を管理するメンバーとひとつ目の村で畑を管理するメンバーに分かれて行動を始めた。

 うん、無駄がないな。

 この蜘蛛たちに任せておけば食糧の増産とか余裕じゃないだろうかね?

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