368. コニエリット様と打ち合わせ
領主の屋敷に着いたらコニエリット様と面談だけど、こちらもすんなりと終わった。
まあ、元からキブリンキ・サルタスたちがうろついている領地だからね。
いまさら互いに確認し合うこともないか。
「それにしても、よかったのですか、リリィ様。キブリンキ・サルタスたちの貸し出しをこのような安値で行っていただいて」
「いいんですよ。その分、この子たちにしっかり食事を与えてくれれば」
「それはお約束いたしますが……ヴァードモイ侯爵様?」
「リリィがいいと言っているのだからいいのだろう。その金額なら私としても口を挟むほどではない」
キブリンキ・サルタスたちを貸し出すにあたり、貸出料はかなり安めに設定させてもらった。
もちろん、ガレット伯爵領だけを特別扱いするわけにはいかないから、ほかの領地でも同じように安くする予定だ。
その代わり、キブリンキ・サルタスたちが不当に扱われていると感じたならいつでもヴァードモイに帰ってよいことになっている。
貸し出しは安いけど、待遇が悪くなったらすぐいなくなるから注意してねってやつである。
「それで、新しい開拓地ってどこにする予定なんですか?」
「ええ。コニエ村に行く途中から道を分岐させてふたつほど村を作る予定です。最初はひとつでしたが、キブリンキ・サルタスたちが多くなったので、ふたつに変更しました」
えっと、そんな急に計画を変更しても大丈夫なのかな?
心配になったけど。コニエリット様は「大丈夫」と言っている。
本当に大丈夫?
「心配いりませんよ。開拓民も集まっております。道の整備はまだですが、すでに村の設営ははじめています。キブリンキ・サルタスたちには明日からでも行ってもらって大丈夫ですよ」
「なるほど。それじゃあ、私も様子を見に行っていいですか?」
「ええ、歓迎します。ヴァードモイ侯爵様はどうなさいますか?」
「私も様子を確認しに行こう。キブリンキ・サルタスがどのように畑を作るのかも見てみたい」
「かしこまりました。それでは、一緒に様子を見にいきましょう。いつ出発なさいますか?」
「申し訳ないが私も時間に余裕があるわけではない。明日でも構わないか?」
「では、明日に。なにもない屋敷ですが、今日はゆっくりとお休みくださいませ」
明日の予定が決まってヴァードモイ侯爵様とコウ様が部屋を出ていった。
残った私とアリゼさん、コニエリット様は商談タイムである。
「リリィ様、アリゼ様。いつもコニエを買ってくださり、ありがとうございます」
「いえ、こっちも利益があってのことですから。ね、アリゼさん」
「そうですね。コニエはリリィ様が独占販売していることもあり、大きな利益を生んでいます。夏の果物と聞いていましたが、まだ食べられますか?」
「冷凍倉庫の中はいままで出荷した分の半分程度が残っています。まだ食べられることを確認しながらの出荷ですが、このペースだと冬が始まる頃には売り切れですね」
「わかりました。帰ったらそれも伝えておきましょう。ところで、新しい作物は見つかりましたでしょうか?」
私もそれは気になっているんだよね。
キブリンキ・サルタスは今年分の収穫はなかったって言ってたけど、本当になにもなかったのかな?
「残念ながら、本当に新しい作物は見つかっておりません。種ならいくつか手に入りましたが、それらも育て方を調べながらですので事業化するには数年かかるでしょう」
「なるほど。それではその時を待ちましょうか」
「ええ。お待ちくださいませ」
うーん、新しい物は数年先か。
その前にキブリンキ・サルタスたちが野生の果物とかを見つけてきそうだな。
そっちに期待しよう。
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