314. ガレット伯爵領の今後
ガレット伯爵領から戻って1週間ほどが過ぎた。
シャロン様からのガレット伯爵家モドワール様に対する賠償金も支払われ、モドワール様は廃嫡されたが自由の身……にはならなかった。
領運営の実権を握ったコニエリット様が、今回の一件の責任を問う形でモドワール様を処刑したのだ。
あと、ついでにモドワール様の母親も処刑された。
こちらは領の運営資金を持ち逃げしたという理由だね。
貴族って怖い。
それ以外の捕虜は犯罪奴隷として売られていった。
その売上は私の手元に来たんだけど、あまり縁起のいいお金でもないのでコニエリット様に渡してある。
ヴァードモイ侯爵様からは「お人好しだな」と言われたけど、こちらは一般市民、他人を売ったお金を持ち続けるほど器が大きくはないのです。
アリゼさん経由の情報によれば、ガレット伯爵領に向けて街道工事用の魔道車両も向かっているようだし、その後は概ね順調である。
ただひとつ、ガレット伯爵家がマクファーレン公王家の寄子からヴァードモイ侯爵家の寄子になったこと以外は。
「よかったんですか、コニエリット様。寄親を移すだなんて」
「問題ありませんよ、リリィさん。マクファーレン公王陛下からのお許しは得てあります」
今日はコニエリット様が新鮮なコニエを持って遊びに来ている。
領運営は大丈夫なのか聞いたが、少しくらいは息抜きもしたいそうだ。
それにお母様の後押しもあったらしい。
「お母様ってばリリィさんとの縁は大切にしろってうるさいんです。そんなこと言われなくてもわかっているのに」
「あはは、それはありがとうございます」
「あ、これは本心ですよ? ヴァードモイ侯爵様とリリィさんがいなければ、ガレット伯爵家はまだまだやっていけませんから」
そういえば、コニエの収穫や運搬に関する費用は、全部ヴァードモイ侯爵様と私持ちだっけ。
あまり大きな額とは言えないけれど、領にお金が入ってくることはいいことのようだ。
なにせ、ヴァードモイ侯爵家に賠償金を支払ったら領運営のお金がほとんどなくなったそうだから。
「処分できる範囲の貴重品はすべて売り払いましたが、貴族には体面というものも必要です。それは大きな身分になればそれ相応に大きくなるもの、伯爵家から降爵してもらいたいほどです」
うーん、やっぱりコニエリット様は考え方が大人びているというか、子供っぽくないというか。
いろいろと大変だったんだろうなぁ。
「それに、私も2年後には上級学校に通わなければなりません。その費用もいまから稼がなければならないんですよ」
へぇ、上級学校か。
そういえば、コウ様も去年まで通っていたんだっけ。
どんな場所なんだろう?
「上級学校ですか? お母様からは勉学よりもコネ作りの場だと聞いています。私の場合、領運営の知識も身につけなければいけませんし、コネというか婚約相手も探さねばなりません。楽ではないです」
ああ、婚約相手もか。
入学前から決まっていれば気が楽なんだろうけど、コニエリット様の場合は違うからね。
なにかと大変そうだ。
野心の小さい入り婿を探さなければいけないわけだし。
コニエの木にまつわる騒動はこれで落着したわけだけど、コニエリット様はこの先も大変だね。
私もコニエが食べられなくなったら困るからできる範囲で支援してあげよう。
それにしても、生コニエは美味しいなぁ。
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