308. コニエ村奪還戦 前編
とりあえず、ひとつ目の目標である商業ギルドの奪還は成功した。
さて、次はコニエの木があるっていうコニエ村かな。
でも、こいつらどうしようか。
「ギャンさん、捕虜はどうしますか?」
「商業ギルドとも話し合ったが、裏庭の方にまとめておいてほしいそうだ。タラトの糸は切れないんだろう?」
「普通の方法では切れないですね。炎で溶かそうとしても無駄ですし。あ、プラムさん。ルーンソードで切れますか?」
「試してみたがだめじゃった。タラチュナトスとは本当に災害じゃの」
プラムさんはカラカラ笑うけど、それって本当に危険なやつなんじゃないかな?
タラトが暴れ出したらどうしようもないって聞こえるよ。
実際、どうしようもないのかもしれないけど。
「とりあえず、捕虜の処遇はわかりました。あと、私たちは『コニエ村』ですね」
「そうなるな。村までは馬車を用意してくれるそうだ。歩きだと一日かかるそうだからな」
結構遠かったんだな。
だけど、馬車だと途中で見つからないかが心配だ。
キブリンキ・サルタスに道中の見張りを頼もう。
『我々を見張っているやつを見つけた』
『あそこにもいる』
『数が多いぞ』
うん、要警戒対象になっているのは知ってた。
キブリンキ・サルタスたちには『コニエ村』に向かう連中だけ捕まえてもらおう。
それでも、結構な数になりそうなんだけど。
「……やはり、キブリンキ・サルタスたちは容赦がないな」
「ギャンさんも知っているんですか?」
「何度か手合わせをお願いしたことがある。こちらの思考を読み、すべての攻撃をかわしつつ糸を放って行動不能にする。敵に回すと非常に恐ろしいモンスターだ」
あー、やっぱりそういう評価なんだ。
知ってた。
「仲間であるうちは頼もしいことこの上ないな。願わくば、この先も仲間であり続けてもらいたい」
「そうですね。そうしたいです」
私の返事にギャンさんが頬尻を上げる。
私にできる最大限の返事だろう。
ヴァードモイ侯爵様が私の敵になるとは思えないけど、どうなるかはわからないしね。
「隊長、村が見えてきました!」
「よし、馬車を止めろ!」
本当に半日馬車に揺られ、夕暮れ時にたどり着いたのが『コニエ村』のようだ。
だけど、村にはまったく人の気配がない。
この時間なら炊事の煙が上がっていてもおかしくないのにそれすらも見当たらないのだ。
さすがにちょっとおかしくないかな?
「さて、状況が状況だけに村民の安全を第一かつ速やかに制圧したいが……」
「どうしますか? また、私が一働きしますか?」
「いや、なんでもかんでも部外者の君に頼んでいては軍の名が廃る。とりあえず偵察だけでも任せてもらいたい。さすがに、制圧は状況的に考えて君に任せることになってしまうからな」
「わかりました。お気をつけて、ギャンさん」
ギャンさんは部下に指示を出し村の様子を探り始める。
プラムさんの見立てでは、今回一緒に来た兵士の半分ほどは偵察を主に行う兵士だそうだ。
来たときはフルプレートに身を包んでいたけど、いまは動きやすい軽装になっている。
無事に帰ってきてくれるといいな。
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