137. 運転免許教習

 ルミテグランドウィングを購入した翌日から運転免許教習所に通うことになったんだけど、講習を受ける人たちの平均年齢はかなり高いようだ。

 前世の世界では運転免許が取れるようになった頃にすぐ取る人が多かったと聞いたけど、この世界では魔道車は高級品、運転免許を必要とする人も総じて高所得者だ。

 つまり、高年齢層が多くなる。

 なにが言いたいかというと……私たちはすごく浮いていた。

 アリゼさんの取りなしで教習所の職員からは丁寧に応対されるけど、受講生からは変な目で見られている。

 こればかりはどうしようもないかな。


「それでは今日の講習を担当させていただきますヨーレイです」


「はい。よろしくお願いします」


 学科教習はすんなり通れた。

 前世でもこんな簡単に通れたのかな?

 でも、実技試験はなかなか難しい。

 みんなは次々先に進んで行くのに私はまだ序盤の方だ。

 自動運転車しか乗らないとしても、これは全員が同じ教習を受けるので仕方のないことらしい。

 ……実技辛い。


「リリィさんは実技試験の評価が伸び悩んでいますね。大丈夫ですか?」


「えっと、最悪の場合、家の者に任せますので大丈夫です」


「それとて確実ではないので自力で運転できるようになっていただきたいのですが……まあ、いいでしょう。今日の実技試験を始めます」


 今日の実技試験は曲がり角でのコーナーリング講習。

 私は大型車ということで実際に乗るのと同じ三段連結車を用いて実技試験を行う。

 ただ、この車両がルミテグランドウィングと違うのは二両目に動力がついていないということ。

 つまり、曲がり角で引き返そうとすると二両目が明後日の方向を向いてしまう可能性があるのだ。

 曲がり角は一回で決めなければいけない。

 それがきつい。


「さて、それでは今日の教習です。あちらの角を曲がってください」


「はい」


 曲がり角は一見なにもない普通の曲がり角。

 でも、大型車の場合、内輪差も考えて曲がらなければいけない。

 それを考えて曲がると……これくらい?


「……だめですね。縁石に乗り上げてしまいました」


「これでもだめですか……」


「曲がるときは急ハンドルを切らず、ゆったりとした角度で曲がりましょう。それから途中でハンドルを戻すのも悪いとはいいません。歩行者と対向車を巻き込まなければいいのですから」


「はい。もう一度やってみます」


 そのあとも何回か試したけど上手くいかない。

 うーん、曲がるだけなのに難しい。

 こうなったら奥の手を試すしかないよね!


 私は曲がる前に魔力を放出して自分の周りの地形を把握した。

 こうすれば上手く曲がれるはず!


「リリィさん、いま魔力探知を行いましたね?」


「はい! これなら周囲の地形や人などを把握できる……」


「馬などは魔力を当てられたことで驚き走り出す可能性があります。その方法は禁じ手です」


「はい……」


 私が思いついた方法はだめだった。

 その日、1日かけてなんとか曲がり角も曲がれるようになったけど本当に疲れたよ。

 運転免許を取るって本当に大変かも。

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